「サウナイキタイ」から「サウナタテタイ」へ。「The Sauna」支配人が目指す未来【vol.2】

一過性のブームではなく、サウナをカルチャーとして根付かせる。

そのためには、担い手が必要。まずは、サウナで働く自分たち自身がカッコよくある。そして、憧れを抱いてもらう──。

“覚悟のBarbour”を教えてもらった前回。今回は多くのサウナーに愛され続けている「大垣サウナ(岐阜県)」で気付かされた“大切なこと”について。

視線の先にある未来は……サウナタテタイ!?

©2021 NEW STANDARD

──それにしてもスゴいですね、サウナブーム。「The Sauna」を作ってから、一気に人生が変わったんじゃないですか?

 

めちゃくちゃ流行ってますね。「The Sauna」のオープンは2019年2月ですから、2年でかなり変わりましたよ。

 

──2018年の頭にはオープンに向けて動き出していたわけですもんね。そろそろサウナブームが始まるかなという時期。建てたい!経営したい!と動く人はほとんどいなかった。

 

仕事でかなり悩んでいた時期に、「サウナイキタイ」に出会ったのが大きかったです。「サウナってこんなふうに検索できる時代なのか。クリエイターがわざわざ検索サイトを作るほどサウナってキテるんだ!」と衝撃を受けました。それからはもう、検索してサウナに通いまくりましたね。

で、いろいろ調べていくと、どうやらサウナはどんどん盛り上がっていくんじゃないかと。どうせなら自分でやりたいなと思って、会社に「ゼッタイ流行りますから!めちゃくちゃ気持ちいいんです!」って根拠のない自信とともに話したら、「そんなに言うなら自己責任でやって。1円も出したくない」と言われてしまって(笑)。

 

──まあ、そう言われちゃいますよね(笑)。

 

今考えるとそうですよね(笑)。でも、なんとか「The Sauna」をオープンさせてからは、ドラマ『サ道』が始まったりと、すごく追い風。東京のサウナ事情を聞いていると、サウナ室の前に並んだり、そもそも入館待ちが発生している状況なんですよね。ついにここまできたか、と。

でも、流行ってはいますが、ウチも含めて10年後や20年後に残っていられるかはまた別の話。これだけ良いサウナが増えてくると、競争も熾烈。

 

──有名施設では当たり前のように“待ち”が発生しています。

 

東京はもう、サウナの数が圧倒的に足りていないと思います。「じゃあ作ればいいじゃん?」ってなるんですが、当然、作るにはかなりのハードルがある。

そもそも僕には「全国にアウトドアサウナを作る」という夢があるんです。でも、「ume sauna,(奈良県)」を作ったときに気が付いた。僕ひとりが建て続けてもそれは実現できない。僕のように「アウトドアサウナを運営したい!」と思う人を一人でも多く増やさなきゃって。

 

──啓蒙も重要な役割の一つなんですね。

 

「サウナで働くっていいんだぞ!」ってことを、「The Sauna」を通してもっともっと表現していきたい。ウチから出ていった人や湊ご兄弟(サウナの梅湯・十條湯)のところから出ていった人が、それぞれの施設の良さを引き継いだうえで、新しいサウナをオープンさせる。そういう流れを作っていきたい。目指すべきは、「サウナタテタイ」の時代です。

今って、北海道のサウナシーンがすごく盛り上がってますよね。ああいう動きを見て「じゃあうちの街でもやりたいな」って思う人が増えたら、東京だけじゃなくもっと地方にも広がっていくんじゃないかと思います。

 

──そうですね。でも、これから地方で新しくサウナの経営を始めるには、相当な覚悟がいるんじゃないかと。

 

間違いないです。だからこそ、僕が力になれるのであれば、地方でサウナ施設の経営を始める人のマインド作りにも貢献したい。施設側がやるべきことって、じつはかなり地味でパワーが必要なんですよ。

ここで見習うべきが「大垣サウナ」だと思うんです。

 

──というと?

 

「大垣サウナ」は今年で創業55年。先日、社長とお話する機会がありました。

「なぜ、55年前にサウナを始めたんですか?」と聞いたら、先代の社長が「これからサウナブームがくる!」とどこかで聞いたみたいで、それで始めたんだと。

でも、もちろん世の中の人はサウナなんて知らない。ましてや、東京でもなく大垣という地方都市。じゃあどうしたか?一人ひとりに「こうやって入るとイイですよ」って、コツコツ教えていったそうなんです。それを聞いて「やっていることって一緒なんだ!」と気付かされました。

 

──あの「大垣サウナ」でも、地道な努力をされていたんですね。

 

名前の通り、銭湯ではなくサウナ施設。今は「サウナ」という言葉自体は認知されているので恵まれてますよね。55年前なんて、ほとんど無の状態。大垣という街で、地元の人に対して地道に教えていったという話を聞いて、心底思いました。

大事なのは、担い手がどれだけ愛を持って、粘り強くやれるか。その粘りが結果的に10年、20年とつながっていく。「大垣サウナ」はそれを実践しているからこそ、55年も続いているんだなと本当に尊敬します。

「サウナをやりたい!」と思ってウチに来てくれたヘルパーは、毎回あそこに連れていくんです。「大垣サウナ」にはすべてが詰まっている。それくらい教科書のような施設だと思います。

 

──愛を持って、粘り強く。大変なことですが、やりがいも大きい。

 

自分自身もそうありたいし、弟子にもそれを感じてもらいたくて。「The Saunaを心から愛せているか?The Saunaにできることは何か?」と、みんなで常に考えています。

以前に、あるお客様がウチの魅力についてこんなことを言ってくれました。

「薪サウナとか、湖とかいろいろあるんだけど、やっぱりスタッフが温かくてイイんだよね」

そうか、自分たちがやっているのはサービス業なんだとあらためて気付かされました。自分はサウナ、ほかのメンバーは宿やレストラン、アウトドアスクール。みんながうまく掛け算されて、ウチならではの魅力につながっている。

まだまだ実現できていないことがたくさんある一方、みんなでそれらをやりたい、実現したいと思っているので、今がすごく楽しい。多くの人が「サウナタテタイ」と思うようになる未来を目指して、コツコツと頑張っていきますよ。

インタビュー記事は全3話♨️ 次回は5月22日公開

Top image: © 2021 NEW STANDARD
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。