日本の「巨峰」がオーストラリアで「ワイン」になっていた!

秋の味覚のひとつ、巨峰。おいしいですよね。

季節感もない導入で恐縮ですが、このネタ、秋まで寝かせておくなんてできません!ということで、このタイミングでのご紹介。そうです、主役は巨峰。

その昔、日本原産の巨峰が海を渡ってワインになったというお話。ソムリエの吉川大智さんに詳しく教えてもらいましょう!

吉川大智(よしかわだいち)
世界40ヵ国200都市の酒場とワイナリーを旅した元バーテンダー。JSA認定ソムリエ。現在は多数のメディアにてコラムやエッセイを執筆するライターとして活動中。

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少量生産で質の高さにこだわるブティックワイナリーが点在する、オーストラリア西部スワンバレー。市街地のパースから車でおよそ30分という距離もあって、近年人気のワイン産地だ。

今回ピックアップしたのは、スワンバレーの「ベラ・リッジ・エステート」。じつは、日本ではおなじみのアノ「巨峰」から造ったワイン。もちろん、オーストラリアでもここだけ。

日本でも珍しい巨峰から造るワインを、なぜオーストラリアで?

ベラ・リッジ・エステート 巨峰
©2021 NEW STANDARD

ベラ・リッジ・エステート 巨峰

【生産地】オーストラリア/スワンバレー
【タイプ】赤ワイン
【味わい】ミディアムボディ
【アルコール度数】14%
【価格】4000円前後

日本原産の「巨峰」が
ワインになって帰ってきた!

1980年代、ひとりの日本人男性がスワンバレーに巨峰の種を持ち込み、この地に植えた。当時はまだ種子の海外への持ち出しが許されていた時代だ。

ワイン用ブドウ品種としても認められていなかった巨峰は、こうして誰にも知られることなく、スワンバレーの地でひっそりと育まれていった。

やがて、年齢を重ねた男性から地元の夫妻が巨峰が実る土地を譲り受けたのが2003年のこと。彼らこそベラ・リッジ・エステートのオーナーだ。初めて目にする巨峰を夫妻は、たった一年でワインに仕上げてしまう。

こうして、日本原産の生食用ブドウが南半球の地でワインに変わり、オーストラリアワインとして日本に帰ってきた。

渋味と甘味のバランスが秀逸

ところで、生食用の巨峰といえば日本では長野県や山梨県が主な生産地。じつは、日本にも巨峰を使ったワインがないわけではない。色調が淡くてやや甘口なのが特徴。

いっぽう、ベラ・リッジのブドウは、果皮由来のタンニンがしっかりと感じられ、色合いも程よくついている。オーストラリアの日差しをたっぷり浴びて肥沃な土壌で造られる巨峰ワインは、芳醇な甘さとさわやかなアロマが印象的だ。

アタック(口に含んだときの第一印象)の心地よい渋み、飲み込んだときのキャンディのような巨峰本来の甘いアロマが鼻から抜けていく。渋みと甘味のバランス絶妙。秀逸な一本だ。

「和」の要素に共鳴するペアリングを

この逆輸入ワインに合わせる料理は、ズバリ「和の要素」がおすすめ。

この時期ならしゃぶしゃぶや水炊き、鴨鍋なんかと相性がいい。ワイン自体の主張が強すぎないため、シンプルに照焼きチキンや豚の角煮といった味にも寄り添ってくれる。

暦の上では春でも、まだまだ寒さが厳しい季節。醤油やみりんベースのコクのある甘さと、ベラ・リッジ・エステートの余韻の長いアロマをじっくり合わせながら、おうち時間を楽しんでみてはいかがだろう。

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