東京でしか味わえない「ニッチな富士山」の楽しみかた【前編】

東京に“花の名所”があるように、富士山を見るのに絶好のスポットも多数存在します。高層タワーの展望デッキ、開けた橋の上、というのは誰もが思いつくはず。でも、それがすべてじゃありません。

ここで紹介するのは、ちょっとオツで都会ならではの富士山の楽しみ方。「富士見坂」を代表する「坂の上の富士」たち。

絵葉書のような裾野までくっきり見える雄姿はない代わりに、ビルや高層マンションが乱立する都市部でしか味わえない、富士山とのコラボが潜んでいます。思わず「ニヤリ」とするような。

空気が乾燥する冬場は、遠く富士山を臨むのにもっともいい季節。さあ、散歩やランの途中に、その坂の上まで足を伸ばしてみませんか?

01:岡本3丁目の坂
(世田谷区岡本)

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国分寺崖線上に位置する世田谷区岡本3丁目。名もなきこの坂の傾斜角は20度を超え、歩いて上り下りするだけで息が切れるほど。

でもこの坂道、空気が澄んだ今の時期、丹沢・箱根連山の向こうに雄大な富士を眺めることができる、都内有数の絶景スポットなんです。

もうちょっと写真に寄ってみましょう。

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ね、遮るものなく裾野までくっきり。撮影したのは午前中ですが、この坂から富士山がもっとも美しく見えるオススメの時間帯は、日の入りどき。稜線の向こうに沈む夕日に富士のシルエットがくっきり映えます。運がよければダイヤモンド富士も。

坂上には「国土交通省」が指定する「関東の富士見100景」のプレートが。ちなみに世田谷区が独自に選定する「せたがや百景」にも選ばれています。

富士山を愛でたあとは…

坂を下り仙川にかかる橋を渡ると、右手に「大蔵氷川神社」が見えてきます。または坂上の道を左手に15分ほどいけば、緑豊かな自然が残る「岡本静嘉堂緑地」。昔ながらの世田谷の原風景が楽しめますよ。

02:相生坂
(大田区西馬込)

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大田区随一の絶景「富士見坂」といえば、西馬込2丁目の「相生坂(あいおいざか)」でしょう。

ここも富士山を隠す高い建物はほぼなく、目線の先に富士を捉えることができる絶景スポット。真下に走る東海道新幹線と富士山の写真を狙う、鉄道ファンにも人気の場所です。

晴れている日には、都心のなかでも富士山との距離を近く感じるはず。

富士山を愛でたあとは…

付近には大田区文化財の「日蓮聖人坐像」がご本尊の「長慶寺」や、足を伸ばせば「池上本門寺」も。お散歩がてらの初詣の帰りには「池上池田屋」の久寿餅(くずもち)がオススメ。

03:駒沢オリンピック公園の坂
(目黒区東が丘)

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写真は目黒区との区界に位置する「駒沢オリンピック公園」にかかる橋の上から撮影したもの。下を走る駒沢通りが、ちょうどすり鉢の底にあたるのがこの橋付近。つまり、坂からも(ほぼ)同じ目線で富士山を臨ことができるというわけです。

どこに見えるかって? ほら、写真中央にうっすら見えてきませんか。

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富士山を愛でたあとは…

やっぱり気持ちいいのは公園内の散策でしょう。スロージョギングやゆったりサイクリングで園内を巡ったあとは、駒沢通りを少し戻って「ONIBUS COFFEE YAKUMO」でドリップコーヒーを楽しむ、なんていいかも。

04:東京ゴルフ専門学校裏手の坂
(杉並区高井戸東)

写真は京王井の頭線浜田山駅から高井戸駅へと向かう線路際。「東京ゴルフ専門学校」の裏手に、車もすれ違うのがやっとの細い坂があります。富士山が見える唯一のチャンスは、坂がカーブへと差し掛かる手前のこのポイント。

わかります?

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民家の屋根の向こうに……ほらね。

「これだけ?」なんて期待外れに思わないで。季節によっては、山頂だけのこの構図に夕日が重なり、ダイヤモンド富士が出現することだってあるんですから。

富士山を愛でたあとは…

少し足を伸ばせば杉並の名所「大宮八幡宮」もありますが、おすすめは京王井の頭線に沿って流れる神田川沿い遊歩道の散策です。吉祥寺方面にも、渋谷方面にも川沿いを気持ちよく歩いてみてはいかがでしょう。

都心から富士を見つける愉しみ

東京23区内には、名前のついた坂だけでも800以上あるそうです。「富士見坂」を検索してみると17、18ヵ所ほど。なかには渋谷駅のすぐ近くの宮益坂のように、名前を変えた旧・富士見坂も。現在も「富士山が見える」となると、その数はぐんと減り、西日暮里や目黒などごくわずか。

けれど、高台から一気に下る坂道のてっぺんで、崖線上の生活道路の先に、ビルやマンションの隙間から、わずかに富士の頂が顔をのぞかせていることに気がつきます。

ここで取り上げた坂のほかにも、まだまだたくさんの富士見坂が都心に存在します。東京ならではの「富士見坂」を坂道に探したり、「路上富士」や「スキマ富士」にカメラを構えてみるのもオツですよ。

本当ならば、間近に迫る大迫力のパノラマを感じたい。でも、そうもいかないのがこの年末年始。

ならば、都会の片隅から、ちょっとだけ富士山に元気をもらいましょう。住宅に隣接する坂もあります。そこは、大人のマナーで楽しみましょう。

Top image: © 2020 NEW STANDARD
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。