あえて、若い世代におすすめしたい漢方があります——鎌倉の薬局三代目・杉本格朗

「若い」といえど、私たちはみんな多かれ少なかれ、「不調」を抱えながら生きているはず。それが、病名がつかないくらいのなんとなくであればあるほど、ほったらかしになったり、相談しても誰もベストな解決法をくれなかったり。

ミレニアルズのそのお悩み、もしかしたら「漢方」が救えるかもしれません。体の不調だけでなく、うっすら気づいているのに知らんふりしている「心」の不調だって、もしかしたら……。

第八回目は、「若い世代にこそおすすめしておきたい漢方」。

アドバイザーは、世代を越え、漢方を広めている神奈川県鎌倉市大船の「杉本薬局」三代目、杉本格朗さん。

でも、誰かに効いた漢方が、万人に効くとは言えません。大前提として、人によって「どんな漢方が合うか」は違うから、まずは漢方薬局などで相談するのがベター。その前提の上で、「こんな解決策の一例もあるよ」といったような形で紹介したいと思います。

あえて「若い世代」に
おすすめしておきたい漢方は?

ダイエット、美肌、生理痛、なんとなく調子が悪い、などなど。シリーズ第1〜7回の悩み以外にも、若者が抱えがちな不調はいろいろ。あえて若い世代におすすめの漢方や、漢方を生活の中にどのように取り入れてほしいかなどを教えてください。

杉本さんが20代の頃などに、「こんな場面で、この漢方が助けてくれた」というエピソードがあれば、そちらも是非。

漢方で、朝の目覚めが急激に
良くなったことがあります

【杉本さんのおすすめ】

僕が漢方薬を本格的に飲み始めたのは、子どもの頃、両親から与えられていた時期を除くと、20代半ばからになります。当時はとにかく睡眠時間が短く、疲れがなかなか取れなかったので、疲労回復のために「補中益気湯」をよく飲んでいました。

また、漢方薬を飲んで、今までで一番びっくりしたのは、朝の目覚めが急激に良くなったことです。僕の場合は、「朝鮮人参」と「牛黄」の入った漢方薬だったのですが、一度、瞬きをしただけのような睡眠だった夜がありました。一度瞬きしただけと思っていたのに、しっかり時間は経過していて、心身ともにスッキリしていました。「え!?」となり、しばらく事態を把握できませんでしたが、夢を覚えていないほど深い睡眠ができたのだと思います。あまり大げさな話はしないようにしていますが、これを飲めば大丈夫というかんじで、翌朝が心配な日は寝る前に漢方薬やサプリメントを飲むようにしています。

それと、よくお世話になっているのはお酒を飲む時の漢方薬です。結局、僕の場合は睡眠と同じで、翌日のコンディションをいつも整えておきたいということです。おかげでついお酒の量が増えてしまうのですが、重宝しています(※コチラでご紹介しています)。

店頭では、若い方からのご相談も多岐に渡り、月経痛などの婦人家系疾患、腰痛や肩こりなどの痛み、花粉症などのアレルギー疾患、ストレス性の下痢などもあります。また、美容やダイエットの相談もあります。

特に若い女性の方からは、月経痛や月経不順のご相談は多いです。おそらく家族や友人など、周りにもいらっしゃるのではないでしょうか。最近では、月経痛で悩み、鎮痛剤やピルを使用しているということがあたりまえになっていたりもしますが、痛みがあることがあたりまえではありません。

もちろん、激痛で苦しい時に、鎮痛剤を服用するのは良いのですが、痛みが出たり、周期が乱れることがないように体を整えることが大事です。そこに漢方薬が役立ちます。多くの方が何か不調になると病院へ行かれると思いますが、選択肢の一つとして、漢方薬局もありますし、病名ではなく、なんとなく不調を感じる段階で漢方を使ってみることもおすすめします。

美容に関しては、プラセンタは「紫河車」といって漢方の生薬としても使われていました。プラセンタは前述の「鹿茸」のように、精や腎のエネルギーを補うので、アンチエイジングや妊娠を希望される方にもよく飲まれています。

また、ダイエットは、漢方薬だけでなく、食事や運動を取り入れながら進めていくことになりますが、体温を上げて代謝をあげる、老廃物を排出する、ストレスから暴飲暴食をしてしまうのを和らげるなど、サポート的に使っていくのがいいと思います。

先日、漢方メーカーさんと話していたら、近頃むくみの漢方薬の発注が多いと言っていました。おそらく、日頃の水分摂取量が排出量を上回り、むくみやすい方が多いのだと思います。または、ダイエット効果を狙って、水分代謝を良くする漢方薬を飲んでいるのかもしれません。たしかに、水太りというか、体にたまっている余計な水分が出れば、その分の体重は減ります。それをダイエットと言うかはわかりませんが、普段から体が重だるかったり、むくみやすい方、雨の日や梅雨時期など、湿気によって具合が悪くなる方には、水の代謝を促す漢方薬が有効です。
 

漢方に触れることは、自分の体のことを考えるきっかけになり、暦や季節、気候に合わせて体調を整えたり、現代社会での生活のバランスを整えるのに役立ちます。これから、漢方の知恵がもっと日常的なものになり、日本、中国をはじめとするアジアの文化として次世代に繋がっていくといいなと思っています。

杉本薬局で作っている和漢の商品に加えて、昨年、出版した「鎌倉・大船の老舗薬局が教える こころ漢方」、定期的に開催するトークイベントやワークショップは、そのような想いから、賛同してくれる方々と行っている活動の一つです。ぜひ、薬局にもイベントにも一度足を運んでいただき、皆さんにとって漢方の世界が難しいものではなく、身近なものになっていくと嬉しいです。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。