専門家が「とんでもない作品」と言い切る「ドキュメンタリー映画」

2019年はどんな年だったのか?
きたる2020年は、どんな年になっていくのか?

“記録映画”ともいわれるドキュメンタリー映画に、時代を見ていくのはどうでしょう。2019年に公開され「なんらかの爪あとを残した」ドキュメンタリー作品を5つ、アップリンク(渋谷・吉祥寺)の石井雅之さんにピックアップしていただきました。

最後は、 “ドキュメンタリーのおもしろさ” を教えてくれる作品。ひとりの人間に向かってカメラを回しつづけていく中で、撮る方も撮られる方も、ときとして予想だにしない展開に進んでいってしまうことがあるらしい。「それ」がしっかり映ってしまっているこの作品。ドキュメンタリーにハマるための1本として紹介します。

石井 雅之(いしい まさゆき)

アップリンク渋谷・吉祥寺にて、劇場企画・構成を担当。上映作品ラインナップをセレクトするにあたってもっとも意識しているのは「多様性」があるか。遊園地のアトラクションのようにいろんな作品を上映して、お客さんと映画の “思いがけない出会い” の機会をつくっている。
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『虚空門 GATE』

©虚空門 GATE

「“ドキュメンタリーのおもしろさ” が映っている作品を選びました。

生身の人間に向けてカメラを回しつづけていくと、ときに被写体が “変化” を起こすことがあるんです。その変化が、撮り手も観客も予想だにしない事態であればあるほどおもしろいんですよ。たとえばインタビューをとる、という行為自体も被写体に変化をもたらせる行為のひとつだと思うんですけど。

この『虚空門 GATE』は簡単にいうと“UFOが存在するのか?しないのか?”というテーマのドキュメンタリー。これを撮った監督がとてもUFOに興味がある人で、UFOの写真が撮れるという男性に出会い、彼に密着していくことで、決定的瞬間を撮れるのか?というところから最初は始まります。

でも、途中からまったく違う展開になるんです」

©虚空門 GATE

「あの展開は、撮っている方も撮られる方も予想していなかったと思うんですよ。被写体に密着していって、ある瞬間から被写体が大きな変化を見せはじめて、最終的になぜか愛についてのドキュメンタリーに変わります。“UFOはいるのか?いないのか?”って言っていたはずなのに。

自分はUFOの写真が撮れると言う被写体と、それを支えるパートナーがいて。彼らにカメラを回すことによって、彼ら自身がものすごい変化をしていくんですよ。何を言っているのかわからないかもしれないのですが、これは観ないとわかりません。とんでもない作品なんですよ。自分も観ながら、あれっ?俺今なに観てるんだろ!?という感覚になったので(笑)」

この作品には「それ」が映っている

「数年前に公開した森達也監督の『FAKE』(2016年)という作品も、ゴーストライター騒動で話題になった佐村河内守さんの“耳は聞こえているのか?聞こえていないのか?”を追求する、というスタート地点から始まっているのに、最終的には愛のドキュメンタリーになっているという例があります。

あの作品も、カメラを回していったことによっていろんな変化が起きていったんです。被写体に映画が介入していくことで、彼らにものすごい変化をもたらす。ドキュメンタリーならではのアクションというんですかね。ひとりの人間の変わっていく姿が、まざまざとカメラに焼き付いていく。するともちろん、映画自体が変化していく。映される側も、映した作品も、大きく変わっていってしまう。それが本当にドキュメンタリーのおもしろいところで。

2019年に公開された作品の中だと、この『虚空門 GATE』にはそれが映っているなと思っています」

©虚空門GATE

「ドキュメンタリーって、社会に変化を与える場合もあれば、被写体に変化を与える映画もある。これを観て、ドキュメンタリーのおもしろさを感じてほしいですね。

大前提として作品がUFO愛に溢れているんですよ。そこも推したいポイントで。どんなかたちであれ、ひとつのことに真剣に向き合っている人って愛すべき存在だなと思いました」

 

『虚空門 GATE』、アップリンクで観られます!

「見逃した映画特集 2019」概要
2019年の話題作90作品をまとめて上映!

期間:2019年12月27日〜2020年1月23日
会場:アップリンク渋谷・アップリンク吉祥寺
各作品の上映スケジュール、上映会場は下記をご確認ください。 https://www.uplink.co.jp/news/2019/53372

Top image: © 虚空門GATE
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。