マレーシア最強の「ヒジャブを被るプロレスラー」

Nor Dianaさん(リングネーム:Phoenix)は、マレーシア出身のヒジャブを被るプロレスラー。2019年7月6日には、男子プロレスラーも参加する同国最大のプロレス大会「Wrestlecon Champion」で優勝している。つまり、彼女こそがマレーシア最強ということだ。

想像に難くないが、No.1の称号を手にするまでの道のりはかなり険しいものだった。

男女におけるフィジカル(筋力)の差は決して小さくない。さらに、マレーシアのプロレス界は、いまだ男性優位主義が根付いている。加えて、Nor Dianaさんはムスリムだ。たくさんの否定的な意見にさらされながらも、諦めることなく鍛錬を積み、2015年にプロレスラーとしてデビュー。

当初はファンの目線を気にして、ヒジャブを隠すようにマスクを被っていた。心ない声を聞きすぎるあまり、自身のアイデンティティーがトラウマになっていたのかもしれない。

転機は2018年12月におこなわれた試合で訪れる。Phoenixに伝えられたのは“負けたらマスクを外す”というシナリオ。そして、試合に破れたため、彼女はリング上でマスクの下に被っていたヒジャブをあらわにした。

バッシングを受けるかもしれないと考えていたとのことだが、ファンは予想と違う反応を見せ、称賛の声と拍手を送ったそうだ。彼女は嬉しさのあまりに、リング上で涙を流した。

「これは終わりではなく始まりです」とInstagramの投稿でも語っているように、Phoenixはヒジャブを被っていることを誇りに持ちながら戦うようになった。

現在も彼女......いやマレーシア最強のプロレスラー・Phoenixは、性別を超え、ムスリムの希望として国民たちから熱烈な声援を受けてリングに立っている。

Top image: © @nordianapw
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。