「ボタンダウンシャツ」の襟に「ボタン」がついている理由

様々なブランドからじつに多くのモデルがリリースされている定番のファッションアイテム「ボタンダウンシャツ」

その特徴は襟元に施された小さなボタンですが、なぜあんなところにボタンが配されるようになったのでしょうか?

そこには、ファッション黎明期ならではの自由な発想とアレンジの妙が隠されていたのです──。

特徴的なディテールをもつボタンダウンシャツが誕生したのは1900年のこと。

アメリカのトラッドファッションを語るに欠かすことのできないブランド「ブルックス ブラザーズ」の創業者一族であるジョン・ブルックスがイギリス旅行の際にポロ競技を観戦していたところ、選手たちが着ているユニフォームに、襟のバタつきを抑えるためのボタンがついていることに着目。

「これは便利だ!」と感動した彼は、帰国後、歴史や伝統よりも合理性を求めるアメリカ人ならではの発想で、それまでのドレスシャツにはなかった“襟をボタンで固定”するシャツを制作し、「ポロカラーシャツ」として「ブルックス ブラザーズ」から販売します。

このシャツがアメリカで大ヒットを記録し、その仕様からやがて「ボタンダウン(ボタンで留める)シャツ」と呼ばれるようになり、今では「ブルックス ブラザーズ」が「世界でもっとも模倣されたシャツ」と謳うほどに普及したのでした。

なお、ボタンダウンシャツをこよなく愛し、デイリーウエアの定番アイテムという地位にまで押し上げたのは、1950年代のアメリカの大学生……それも「アイビーリーグ」と呼ばれる偏差値の高い大学に通う学生たちだといわれています。

日夜、勉学やスポーツに励み、その多くが寮生活をしているアイビーリーガーたちにとって、衣類の洗濯やアイロンがけは非常に面倒な作業だったわけですが、ボタンダウンシャツに使われることの多いオックスフォード素材はラフに洗って干しても型が崩れることが少なく、襟元のボタンを留めるだけでキチンと見えることから高い支持を集めたのでした。

蛇足ですが、アメリカは身につけているものや洋服の着こなしで、その人の来歴や所属を推し測る傾向が強い国です。もともとが裕福な家庭に育った大学生に好まれたボタンダウンシャツのイメージは──「いいところのお坊ちゃん」

そんなイメージを嫌ってか、米国第35代大統領であるジョン・F・ケネディは、アイビーリーグ出身でありながらボタンダウンシャツを着ることはありませんでした。「裕福なアイビーリーガー」という自らのレッテルを剥がし、アメリカ国民に心から寄り添う、真のリーダーを目指す彼なりの姿勢の表れだったのかもしれませんね。

※上記、諸説あり。

Top image: © 2019 TABI LABO
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。