フロとメシ、どっちが先かなんて野暮。長崎の「雲仙温泉街」は両方エンドレスで楽しい

長崎の雲仙温泉街で、15時くらいに遅めのランチを食べていたんです。老夫婦が営んでいる喫茶店でした。そしたらおもむろにマスターが店の奥からひょこひょこ出てきて、そのまま出かけて行ったんです。

「またお風呂でも行ったんでしょ」

と、カウンターからお母さん。どうやら、歩いて2〜3分のところにある「湯の里温泉共同浴場」に向かったようです。

……なんて素敵なライフスタイルなんだ!!

 

きっとハマる、雲仙のグルメと湯めぐりスポットを紹介していきたいと思います。

雲仙の朝に食べたいパン
「雲仙ばくだん」

「かせやカフェ」

「朝食はホテルで食べるからなぁ〜」という人に、ごはんのおかわりを我慢してでも立ち寄ってほしいのがイートインベーカリーの「かせやカフェ」。

名物「雲仙ばくだん」の焼きたてを食べないかぎり、雲仙の朝食はコンプリートできません。

カレーパン系の香ばしい生地のなかには、雲仙地獄で蒸した卵が丸々1つ、ゴロンと入っています。おそらく想像の通りだとは思いますが、けっこうお腹にたまります。

パンの中身は、ご覧の通り! できるだけ熱々の状態でケチャップをつけながら食べるのがオススメです。

パンを買うと+100円でコーヒーがおかわり自由なので、カフェとしてゆっくり過ごすこともできます。

この「かせやcafe」、もとは「かせや旅館」として宿経営をされていたものの、建物の老朽化などもあり、約10年前にカフェに転身したそうです。

それでもしばらくは貸切風呂がついているカフェとして運営していましたが、今ではその温泉も止まってしまったためカフェのみ営業。

残念ながらお湯にありつけなかったので、もうひとつの名物、ポテトサラダ入りの「ちくわパン」を片手にかせやcafeを後にしました。

「かせやカフェ」

住所:長崎県雲仙市小浜町雲仙315
TEL:0957-73-3321
営業時間:7:00~16:00(商品売り切れの場合は早期閉店あり)
定休日:水曜日

→雲仙に泊まってみたい!

「熱め、白め、濁りめ」が気持ちいい
小地獄温泉

朝食も食べて少しお散歩したら、気分はすっかり「温泉に浸かりたいモード」。

雲仙にはいくつも共同浴場がありますが、向かったのは雲仙地獄からクルマで5分ほどのところにある「小地獄温泉館」。お肌がツルツルの地元のお母さんに勧められました。

「熱いのは平気? 泉質はこのあたりでも人気だし、小地獄しか行かないっていう地元の人も多いよ」

なんて聞いたら行かないワケにはいきません。ちなみに、熱いのは大好きです。地獄温泉に対しての “小地獄” というネーミングにも興味を惹かれます。

そこまで温泉に詳しいわけではないですが、小地獄の白濁湯はこれまでの人生で一番気持ち良かったかもしれません! 

すぐ裏手に70〜90℃ほどの源泉があり、浴泉温度も40〜45℃と熱め。白濁したにごり湯で、嘉永6年(1853年)には、吉田松陰も湯治に来たそうな。

こちらが温泉館の裏手から撮った写真です。外湯として小地獄温泉館を管理している「国民宿舎 青雲荘」の方に特別に源泉を見せていただきました。

一見、気持ち良さそうな露天風呂に見えるかもしれませんが、ここでの「押すなよ!」はマジです。

ちなみに、この白濁の状態で湯が湧き出ているように思うかもしれませんが、最初は無色透明なものが、空気に触れて酸化することでこの白さになるそうです。

広めの休憩所もあるので喉を潤したり、ゆっくり涼んでから次のスポットに向かいましょう。

「小地獄温泉館」

住所:長崎県雲仙市小浜町雲仙462
TEL:0957-73-3273(青雲荘)
営業時間:9:00~21:00
定休日:不定休
料金:大人420円、子ども210円

→雲仙に泊まるならコチラ

余裕でスープを飲み干した
「絹笠食堂」の海鮮ちゃんぽん

「某チェーン店のちゃんぽんのレベルが高すぎて、本場の長崎で食べてもさほど驚かない」なんてウワサがまことしやかに囁かれていますが、あれはウソだったのか?

やっぱり本場のちゃんぽんはうまい!

白濁湯の温泉にも入ってさっぱりしたところで立ち寄ったのが、雲仙で愛されて半世紀(50周年!)の「絹笠食堂」。雲仙地獄を背に、原生沼のほうに3分ほど歩いていくと見えてきます。

ちゃんぽんだけではなく、定食やカレーなどたくさんのメニューがあるので「あんまり特徴がないお店なのかな?」と思いきや、そこには理由がありました。

「夜は、ホテルの従業員さんたちが仕事終わりにお腹すかせて来るんですよね。同じメニューだけだと飽きちゃうでしょ? 少しずつリクエストに答えてたらいつの間にか増えちゃったよね。でもメインは昼なんですよ(笑)」

と、店主の関さん。雲仙生まれ雲仙育ちだそうです。

とんこつと鶏ガラをベースにしたスープは、野菜や海鮮のうまみも加わっていて、ついレンゲの動きがとまりません。クセもなく、とても飲みやすい。

なんだか今日は、白濁に縁があるな……。

そんなただでさえ「飲み干したくなるスープ」に、地元の赤いゆず胡椒(このあたりでは「ゆずごしょう」と言っていた)を入れると、一瞬でどんぶりの底が見えるレベル。

「地元の人が国見のほうで作ってるやつなんだけど、おいしいでしょ? 市販のやつはだいたい常温保存できるように塩辛くしてるんだけど、これは風味を重視してるから香りがいいですよ」

確かに。

あっというまの、完食。雲仙のちゃんぽん、ハマりそうです。

「雲仙は島原半島のど真ん中にあるから、仕入れに行くにしてもいろんなところに30分もあれば行けるのがいいんですよ。海の幸も山の幸も、棚田米も、全部が集まってくる。ハブみたいな場所なんです」

と、関さん。

店内には、明治〜大正時代の写真も飾られていて、当時の街の様子を眺めるのも食休みにちょうどいい。

「外国人の避暑客が多かったみたいですね」

ひと夏を過ごす東アジアのリゾート地として、完全洋式のホテルができたり、日本初のパブリックゴルフ場や、プール、テニスコート、娯楽館などができたのもこの時代。

「今でも外国人のお客さん多いですよ。うちもメニューは英語、韓国語、中国語、フランス語、で揃えてます」

日本の各地で “インバウンド受け入れ” が叫ばれているけど、こういう写真を見ると、いかに雲仙がハイカラな街だったかが見えてきます。

愛すべき、ちゃんぽん(まぜこぜ)カルチャー。

ごちそうさまでした。

「絹笠食堂」

住所:長崎県雲仙市小浜町雲仙376
TEL:0957-73-3491
営業時間:10:30~24:00
定休日:不定休

→雲仙に泊まるならコチラ

ハイカラの象徴
隠れ家でいただく「雲仙ハヤシ」

前のお店でスープまで飲み干しておきながら大変恐縮ですが、ハイカラ時代の話を聞いていたらどうしても洋食が食べたくなってきました。

当時、外国人の観光客に人気だったのが「洋風丼」と呼ばれる、カツ丼の上にデミグラスソースをのせたメニューだったそうです。それを現代風にアレンジして新たな名物になっているのが「雲仙ハヤシ」。

ちなみに、雲仙温泉街をそぞろ歩きしていると、ちゃんぽんや皿うどんはもちろん、トルコライスやオムライスが次々に目に入ってきて、正直どれを食べようかとても悩みます。

悩んだ挙句、結局どっちも食べてしまったのが今回の経緯でございます。恐縮です。

やってきたのは、「古湯」と呼ばれる雲仙温泉街の中心街から少し離れた「新湯」エリアにある、モダンな宿「雲仙福田屋」。

この別邸の3Fに、宿泊者じゃなくても使える「山カフェ 力」というカフェレストランがあります。

もちろん頼んだのは、料理長の草野さんが手がけた「雲仙ハイカラオムハヤシ」。それを目指してきたわけですから。でもね、ランチ限定で諫早市高来町の郷土料理「どろろそば」も出していて、こっちはこっちでとても魅力だったんです。恐縮です。

そばの粘りで「どろっ」とさせていて、風味も栄養もたっぷりの一杯。出汁は、かつおと干ししいたけを黄金比率で調合しているそうです。

 

すいません脱線しましたが、さっそく「雲仙ハイカラオムハヤシ」の「オム」に失礼します。

もう、正解です。大正解。おいしいに決まってます。

ペロリと平らげてしまいました。

夜には、バーにもなるそうです。

マイナス2.2度の生ビール「エクストラ・コールド」があるので、温泉に入ったあと、テラスで天国気分を味わってみてください。

「山カフェ 力 民芸モダンの宿 雲仙福田屋」

住所:長崎県雲仙市小浜町雲仙380-2
TEL:0957-73-2151
営業時間:11:00〜14:30(ランチ)
定休日:不定休

→雲仙に泊まってみたい!

居酒屋「祐ちゃん」で
地元の人とワイワイ

ホテルにチェックインして、内湯でくつろいで夕食までいただいたものの、軽く一杯を目指して夜の雲仙温泉街へとくり出すと、すぐに見つかりました。雰囲気のいいお店。

1本入った路地にある「鉄板居酒屋 祐ちゃん」は、地元の人やホテルの従業員の方たちが仕事終わりに一杯やるお店としても人気。

こういうときは、カウンターに滑りこむのが正解。

正面にあるホワイトボードを見ると

「本日のおすすめ。

ふぐ湯引、なまこ、あさりバター焼、貝柱塩焼、酢がき」

 

オールスターかよ……。

全員ホームラン打ちそうなので、お刺身の盛り合わせと一緒に適当にお願いしちゃいます。

とはいえ「祐ちゃん」のメインは、鉄板焼。

お母さんに頼んで「特製祐ちゃん焼き」をお願いすることにしました。共同浴場から帰ってきたお孫さんがかわいすぎる……。

入っている具材は

「イカ、エビ、豚、タコ、チーズ」

 

こっちもオールスターかよ……。

おいしいおつまみと麦焼酎でゴキゲンになってきたあたりで、地元の人との楽しいお話が始まるのがカウンターの醍醐味。

 

「東京から来たんですか? はるばる大変ですね」
「どうですか? 雲仙は」
「温泉入りました? いいでしょ!」
「スナックがね〜、1軒だけあったんだけど去年閉めちゃったんだよ〜」
「マリーっていうスナックだったんだけどね」
「いや〜やっぱりスナックはいいよね」
「温泉街なのにスナックが1軒もないのは寂しいよね〜」

 

酔いもいい感じにまわります。

人口が減っていて、地元の小学校がもうすぐ閉校になってしまうこと。
ホテルの人たちがお客さんを連れて飲みに来てくれる機会も減っていること。
噴火のときの風評被害がとても大きかったこと。
硫黄が強すぎてテレビや冷蔵庫がすぐに壊れてしまうこと。

「テレビ買うために働いてるようなもんすよ、あははー!」

 

雲仙ハムをパクつきながらそんな話を聞いていると、いいことばかりではない、生の雲仙が見えてきます。

それでも、豊富な観光資源を生かして「もう一回、雲仙を盛り上げたい」と、さまざまな息吹はあるそうです。

あとはホテルに帰ってバタンキュー! 明日の朝風呂が楽しみです。

「祐ちゃん」
住所:長崎県雲仙市小浜町雲仙327
TEL:0957-73-3575
営業時間:19:00〜24:00
定休日:不定休

→雲仙温泉の宿はコチラから