トランプ大統領が使っている3つのテクニック――ベンのトピックス

トランプ大統領が使っている
3つのテクニック
ベンのトピックス

日本人にはドナルド・トランプの魅力が理解しがたいという話を何人かの友人から聞きました(信じてほしいのですが、イギリス人だって同じです)。

彼の派手で荒々しい政治のやり方、国民の味方であるという主張と共に行われる富の見せびらかし、公の場での暴言とライバルへの中傷。こういったことは日本やイギリスでは見られません。なぜ多くのアメリカ人は夢中になるのか、たしかに理解に苦しみます。

どのようにトランプがこれだけの支持を得てきたのか?

僕はこの記事で、トランプ人気の裏に潜む心理的テクニック、そしてなぜ私がトランプのスピーチはクイーンの『We will rock you』に関連していると考えているのかを説明してみようと思います。

© Naomi Nemoto

第一のテクニック
「ドッグホイッスル・ポリティックス」

トランプが使う第一のテクニックはドッグホイッスル・ポリティックス(逐語訳:犬笛政治)です。

人間の耳には聞こえないのに犬にとってはけたたましく甲高いホイッスルのように、ある一部の層の聴衆にだけ訴えかけることができるテクニックです。

ひとつの例は、彼が“リアル・アメリカンズ”といったフレーズを使っているときです。

一般的にほとんどの支持者は、愛国心の強いアメリカ人のことを指していると思うでしょう。しかし人種差別主義者と移民反対派の支持者たちは、トランプは白人のアメリカ人のことを言っているのだと連想します。トランプはこれによって、主流派と極右の有権者、両方の支持を得ることができるのです。

僕は日本の政治について十分に知っているわけではありませんが、ほとんどの国でなんらかの形でドッグホイッスル・ポリティックスは使われていると思います。しかしトランプはその最も巧みな使い手のひとりだと思うのです。

このことについては、町山智浩さんもツイートしています(そう、僕は彼のファンです)。

第二のテクニック
「ニックネーム」

トランプが使うもうひとつのテクニックは、典型的ないじめです。

共和党運営内部では、トランプが予備選挙を勝ち抜いて党の候補になった理由をテッド・クルーズ上院議員に対する嫌悪とみていました。

しかし、僕はそれだけではないと思います。

トランプはクルーズに対して、シンプルですが侮辱的なニックネームをつける、というテクニックを使いました。

彼はクルーズの信用を落とすために、嘘つき、異常者、ペテン師、よそ者と呼んだのです。そして、最終的につけた呼び名は「嘘つきテッド」でした。この呼び名が定着するまで、事あるごとに「嘘つきテッド」を連呼しました。

クルーズに対してだけではありません。マルコ・ルビオには「ちっぽけな」というふうに、常にシンプルで侮辱的な呼び名をトランプはつけます。この戦術はかなり単純ですが、高い効果があると思います。

このことにより、政治に詳しくない人やトランプを支持していない人でさえも、「嘘つき」「ちっぽけな」などを聞いたとき無意識のうちにイメージを人に当てはめてしまいます。

クルーズとルビオの排除に成功した後、トランプは次のターゲットにも同じテクニックを使いました。「心の曲がった」ヒラリー・クリントンです。

第三のテクニック
「ウィ・ウィル・ロック・ユー効果」

トランプがとても効果的に使った最後のテクニックは、タイトルにもある通り、僕が「ウィ・ウィル・ロック・ユー効果」と呼んでいるものです。

クイーンの『We will rock you』と、ドン・ドン・チャ、もしくは1,2-3!という象徴的なリズムは誰もが知ってるでしょう。

足を2回叩いて手を叩くという動作は、どんな人でも簡単に繰り返すことができるリズムで、世界中の競技場で使われています。イギリスの小学校でも、先生がよくこの曲に合わせて私たちに手を叩かせていたのを覚えています。多くの人の気持ちを盛り上げるのに『We will rock you』ほど効果的な曲はないという心理学者もいるぐらいです。

トランプも『We will rock you』のドン・ドン・チャのリズムに基づいたメッセージをよく唱えます。リズムに乗せた、シンプルな単語は、人々に一緒に唱えさせることが簡単にできるからです。

いくつかの例があります。

まずはもっとも単純なものから。

Trump! - Trump! - Trump! 
 
トランプ!トランプ!トランプ!

これも有名ですね。

Build! - That! - Wall! 
 
壁! を! 建てろ!

そして、ヒラリーの評判を落とすために彼が作ったのがこれです。

Lock! - Her! - Up!
 
彼女! を! 投獄せよ!

日本で人気なのはこれでしょうか。

© Naomi Nemoto

U!    S!    A!

 

僕はトランプが好きではありません。だからこそ、彼のような人物が世界の超大国のトップとなった経緯と理由を理解したいと思っています。
 
イギリスと日本の政治に関して言えば、安倍首相やメイ首相が「彼女を投獄せよ!」などと叫んでいる姿はまったく想像できません。これはおそらく良いことでしょう。
 
アメリカは強いリーダーシップに惹かれているようです。僕の母国イギリスのリーダーシップは弱く、僕たちをどこに導いているのかリーダーさえ分かってさえいないようです。日本はどうでしょう?

 

Top image: © Naomi Nemoto

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