大分・日田温泉の、もう一泊したくなる夜の罠。

夜、日田温泉街の路地裏で、光輝くたくさんのネオンを眺めて歩きながら、日田はのんべえの街だなあと思いました。平日の夜から飲み屋さんは賑わっていて、しかも観光客というよりは地元のみなさんで盛り上がっている感じのお店が多いのです。

 

日田の街には昔から「頼母子講(たのもしこう)」という文化があって、これは「無尽」とか、沖縄の「模合」などと似たようなもの。いわゆるお金の相互援助をすることを言うんですが、その仲間が集まる飲み会が開かれるので、夜飲み歩くことにあまりネガティブなイメージがないんだそうです。

 

楽しい飲み屋さんもたくさんあるし、夜遅くまでやっていて、ツイツイ長居してしまう日帰り温泉(露天)も見つけました。お酒で会話が弾んだり、自然に囲まれながら温泉に浸かっていると、浮かんでくるのはきっとこんなこと。

 

「もう一泊しちゃおっかな……」

 

延泊を決意させてしまう、そんなおそるべき日田温泉の、夜の誘惑3選をどうぞ。

アンティークランプの灯の下で…
日帰り露天は夜がイイ

「琴ひら温泉 ゆめ山水」

©2019 ETSU MORIYAMA

日田温泉の旅館が立ち並ぶエリアから、車で5〜10分ほど行ったところにある日帰り温泉・ゆめ山水がおすすめと聞いて行って来ました。

露天風呂は、女湯が2つ、男湯はなんと4つもあって、ややとろみのあるお湯は、塩化物・炭酸水素塩泉で、美肌、美白、火傷、筋肉痛、疲労回復などの効能があるとのこと。加水も加温もしておらず、源泉掛け流しの温泉です。

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何よりも、すぐ脇を流れる筑後川の源流・高瀬川を見ながら、そのせせらぎをBGMに入る露天風呂は、は〜、最の高。お湯に浸かりながら、見えるものや聞こえる音によって気分も変わってくることを考えると、露天風呂の場合はそういったものも効能の一つなのかもしれないなあと思ったりもします。

©2019 ETSU MORIYAMA

子どもの頃、父親が「小川のせせらぎ」というカセットテープをよく聞いていたのを思い出しました。当時は一体何が面白いんだろうと不思議に思っていましたが、ゆめ山水の露天風呂を経験した今なら、二人でせせらぎ談義ができるかもしれないな、とも思ったりして。

©2019 ETSU MORIYAMA

そんな、昼のゆめ山水もグッドなのですが、今回あえておすすめしたいのは、この露天風呂に夜入りにくること。景色は昼間のようには見えないけれど、川のせせらぎを聞きつつ、暗闇の中に光るアンティークランプの灯りも優しくてほっこり。目からの情報が少ないという状況も、むしろ癒されます。

©2019 ETSU MORIYAMA

タイミングがよければ少人数か、貸切状態なんてことも。しかも22時まで入れるので、のんびり長湯が最高です(最終受付は21時半)。

 

本当の貸切がいいなら、敷地内には家族風呂(こちらは内湯)もあるので、そちらでのんびりするのもいいかも。川や山の石を使った岩風呂や、ヒノキ風呂など趣の違うお風呂が16室もあって、お湯は都度入れ替えるコイン式なので、いつも新鮮な温泉が味わえるところもポイント高しです。

©2019 ETSU MORIYAMA

ちなみにゆめ山水の露天風呂、女湯はちゃんと目隠しがあるので、安心してくつろぎつつ、目隠しのヨシズの隙間から景色を楽しみます。

©2019 ETSU MORIYAMA
©2019 ETSU MORIYAMA

こんな感じでね。

©2019 ETSU MORIYAMA

露天風呂のすぐ脇にはお食事処もあって、お蕎麦やぜんざいが美味しそうでした。お風呂の前後にここでごはん食べたり、お茶したりしても良さそうです(お風呂の割引もあり)。

 

敷地内のあちこちで見かける様々な人形やオブジェにもご注目くださいね。アンティーク好きの社長さんが集めたものだそうで、家族連れのお客さんが遊びにきた時に、子どもたちに喜んでもらえるようにと置いたんだそうですよ。鉄人28号に思わぬお出迎えを受けて、大人もちょっと、はしゃぎました。

©2019 ETSU MORIYAMA

琴ひら温泉 ゆめ山水
住所:大分県日田市高瀬1571-1
TEL:0973-23-8827
営業時間:平日12:00〜22:00、土日祝11:00〜22:00
定休日:なし
料金:大人600円、小学生300円*小学生未満は無料
公式HP:http://www.kotohira-onsen.com/

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職人たちの溜まり場にいるのは
日田の街のお兄ちゃん

「stepscolor」

©2019 ETSU MORIYAMA

中が見えないお店が苦手です。だから普段はあまりBARに行ったりもしないのですが、旅先ではあまり躊躇せずにふらっと入れるからこれ不思議。日田温泉の、旅館街近くで入ったstepscolorというBARでの夜は、「女子に一番人気のあるカクテルをください」という青臭いオーダーで始まりました。

©2019 ETSU MORIYAMA

青臭いオーダーでしたが、出てきたのは赤いお酒、スプモーニ。カンパリ、グレープフルーツジュース、トニックウォーターで作るお酒です。BARにはあまり行かないし、カクテルも飲み慣れないけれど、スプモーニくらいは知っていますよ。爽やかに甘くて、ほんのり苦くて、オトナの女性って感じです。

 

でも実は、オーナーの古後さんが一番よく注文を受けるというのは、ウイスキー。カウンター奥の棚にもたくさんの銘柄がズラリ、お客さんの好みを聞きながら集めていたらどんどん増えていったそうです。じゃあ、せっかくだから2杯目はウイスキーを……と思っていたけれど、左隣のお姉さんが、綺麗なブルーのカクテルを飲んでいるのを見たら羨ましくなってしまい、結局同じものを頼んでしまいました(流されやすい)。

©2019 ETSU MORIYAMA

チャイナブルー。癒しの青でした。スプモーニを飲んでいる時にも思ったんですが、グレープフルーツジュースの入ったstepscolorのカクテルは、果肉まで入っていてちょっと贅沢な気分になります。

そういえば、旅に出ると青いお酒が飲みたくなることが多いなあ、特に南の方への旅では……なんてことをぼんやり考えながらいただきました。

©2019 ETSU MORIYAMA

このお店は長居の予感がする、そんなふうに感じたのは、カウンター席のちょうどひじを置く部分にもたれかかった瞬間。クッション仕様になっていて、大変心地が良いのです。

カウンターテーブルは、中側に向かって少しだけ(気づかないぐらい)傾斜。これは、お酒をこぼしてもお客さんにかからないようにと配慮された、オーセンティックバーの仕様なのだそうですよ。いろいろと勉強になります。

 

古後さんとのおしゃべりも、長居をしてしまう理由の一つ。BAR特有の緊張感はほとんどなく、親戚のお兄ちゃんと飲みに来た時のような空気感に包まれます。世の中の全てのBARのカウンターに古後さんがいたら、私ももっとBAR通いするかもしれないですね。

©2019 ETSU MORIYAMA

日田市内外からアーティストを呼んで、三隈川に浮かぶ屋形船の上で音楽イベントを主催しているという話も、おもしろかったです。夕日と雲の具合がちょうどいい綺麗な時間帯があって、その時にサンセット屋形船という名前でイベントをやったこともあるそうですよ。想像しただけで感動。将来的には、通年で開催できるイベントになればなあと夢も語ってくれました。

 

日田の旅の参考にしようと思って、「日田でする一番好きなこと」も聞いてみたんですが、古後さんの答えは、三隈川の周りを散歩すること。仕事にせよ、遊びにせよ、どんな時も川はやっぱいいですね、とニコニコしながら。日田の人はやっぱりみんな、三隈川が好きなんだなあ、と3杯目のジントニックを飲みながらしみじみ思いました。

 

ちなみに二番目に好きなことはなんですか、との意地悪な質問には、笑いながらこう答えてくれましたよ。

 

「二日酔いの朝に食べる、駅前のプノンペンラーメンですね」

 

中華さと、というお店の名物ラーメンで、トマトやセロリが織りなす程よく絶妙なエスニック加減が美味しいのだそうです。素敵な情報をありがとうございます。これで、stepscolorで長居して飲み過ぎても大丈夫ですね!

stepscolor
住所:大分県日田市隈2-1-16
TEL:090-8419-3392 
営業時間:20:00〜25:00
定休日:月
公式HP:https://stepscolor.com/

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三隈川ビューのカウンター席で
なんちゃって東京カレンダー

「スナック ばぁ〜ば」

©2019 ETSU MORIYAMA

スナックといえば、おじさんたちの癒しスポットと思われがちですが、実際はそうでもなくて、お店によってだいぶ雰囲気が違うものです。ママの性格や都会と田舎などでの違いもあったり。行く人によって、目的もちょっとずつ違ったりします。のんべえの街・日田では、若い女子が普通の飲み屋さんと同じ感覚で、スナックに行ったりすることもよくあるそうですよ。

 

私のスナックでの一番の楽しみは、ママとのおしゃべりです。

©2019 ETSU MORIYAMA

「手抜きよ」と言いながら、ばぁ〜ばのママ・しのぶさんは、綺麗にカットしたフルーツを出してくれました。お店は、日田温泉の旅館街近く、三隈川沿いにあります。今では穏やかな時間が流れているこの一帯、昔は休日の原宿・竹下通りのように人でごった返していたんだとか。

 

お店のすぐ脇を流れる三隈川も、屋形船の上で芸者さんが踊りったりして賑やかだったそうです。芋焼酎をロックでちびちび飲みながら、窓の外の景色に当時の華やかな光景を思い浮かべたりするのも、なかなかオツなもの。今でも屋形船の出る季節は、ずっと見ていられるくらい良い眺めになるんですって。

意識してませんよ、東京カレンダー。

©2019 ETSU MORIYAMA

だんだんとそういう賑やかな光景も減ってきたけど、また盛り上がって欲しいなあと思って、お店の川側の窓にイルミネーションを付けてみたり、周りの人たちに協力を呼びかけてみたりもしたけれど、なかなかうまくはいかないわねえ、と話すママは、ちょっぴり寂しそうでした。

 

でも、日田には「コツコツ節」という素敵な端唄があるというのも教えてもらいましたよ。

波も静かな  屋形の船で サンヤリ 
(ハー コツコツ) 

 

主のかしら字 水面にかけば 
にくや小鮎が 袖ぬらす 
(ハー コツコツ)

 

“コツコツ”というちょっと変わった合いの手は、三隈川の名物である鵜飼で、鵜匠さんの竿が船のへりに当たる音を表しているんだとか。以前、お店でのコツコツ節の演奏会を考えていたというから、実現したら是非聴きに来たいと思いました。

©2019 ETSU MORIYAMA

そういえば、お手洗いに行った帰りに、こんな素敵なものも発見しましたよ。じゃん。

©2019 ETSU MORIYAMA

「つけおしり」です。

なぜか結構ボロボロで、年季が入っていました。大人気ですね、とママに言うと、お客さんが破いちゃったりして、縫い合わせながら使い続けているとのこと。これで遊ぶお客さんが、壊しかけるほど大盛り上がりする光景を想像したら、なんだかおかしくて笑ってしまいました。ちなみに「つけおっぱい」もあります。そういう楽しみもないとね、ふふふと言ってママは笑いました。

 

結局この夜は、焼酎を二杯飲んで、他愛もないおしゃべりをして終わったんですが、ふとしたタイミングで窓の外を見ると、変わらず三隈川は流れていて、穏やかな気持ちに。ばぁ〜ばでは、ママとのおしゃべりも楽しいですが、こうして静かに三隈川を眺めてまったりするのもめちゃくちゃオススメです。でも、眠くなったらちゃんと宿に帰りましょうね。

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スナック ばぁ〜ば
住所:大分県日田市隈1-3-22
TEL:0973-23-1014
営業時間:19:00〜24:00
定休日:なし

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Top image: © 2019 ETSU MORIYAMA
取材協力:日田旅館組合