長野・渋温泉で、温泉ざんまいにスイーツざんまい

最後にお風呂でのぼせたのは、25歳(十数年前)くらいの時だったと思います。久々に、長野県の渋温泉で一気に外湯めぐりをして、のぼせました。しかも、長湯をして、ではなくて、数をこなしてのぼせるという新しいパターンです。

©2018 ETSU MORIYAMA

渋温泉には街のみなさんが管理する外湯(共同浴場)が9つあるのですが、この全てを巡って、専用の手ぬぐいに各湯の入り口に置いてあるスタンプを押して回るという遊びがあります。それぞれ源泉も効能も違うので、せっかくならば制覇したいところ。一気に九湯巡ってもいいのですが、多分普通の人ならのぼせます(私のように)。ということで、合間に休憩がてら食べられる渋温泉のイチオシスイーツ、その名も「渋スイーツ」をおすすめしておきますね。

 

つまりそれは、温泉、スイーツ、温泉、スイーツ……。

最高かよ。

熱湯に入って
自分に自信がつきました

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まず知っておかなければならないのは、渋温泉のお湯は全体的に温度が高めだということ。100%源泉掛け流しで、源泉の温度は80〜90℃くらいあります。そのままでは熱くてとても入れないので、都度水を足して適温にする「うめ湯」をするのですが、タイミングによってはかなりうめ湯を頑張らないと入れないかも(でもうめすぎには注意)。

どんなタイミングで入るのがベストかといえば、それは誰かが適温にして入ってくれた後(笑)。つまり、一番風呂の可能性が高い午前中は、どこも激アツの可能性大です。これはもう運次第。午後でも熱い時はありますからね。

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ただ、熱い熱いと言いながらも、見ず知らずの旅行客や地元の方などと協力してうめ湯をし、足元からかけ湯をしてゆっくりゆっくり体を慣らし、最初は絶対に無理だと思っていた熱湯に入れた時の喜びったら。なんだか渋温泉に認められたような気にもなるし、「自分、今ならなんでもできるかもしんない……」みたいな謎の自信も湧いてきます。

何事も、まずはチャレンジあるのみ。

外湯めぐりに合わせるべき
渋スイーツはこれ

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各温泉の効能を説明する前に、スイーツの紹介をすることにします。実は渋温泉には、九湯めぐりにあやかって、「九糖めぐり」なるものがあるのです。おみやげ屋さんやお菓子屋さんで売られている「いとをかし箱」という専用の箱を買い、その9つに仕切られた箱の中に、好きなスイーツ(糖)を詰めてオリジナルのおみやげを完成させるというものですが、今回はちょっと変化球。そこに詰めるべきものも、九湯めぐりの合間に食べてしまう〜。

おすすめ1、若葉屋の無限ジェラート

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まずは、おみやげ屋さんを営んでいる若葉屋の奥で売られているジェラートが、無限に食べられるほど美味しいのでご紹介します。これは、店主の息子の関 亮太さんが、各地の色々なアイスを食べ歩いたのち、地元・渋温泉周辺の美味しい食材を使って開発したもの。美味しさの理由を伺うと、母・朋代さんと声を合わせて「生産者さんが美味しいものを作ってくれているおかげ。山ノ内町の農家さんが作る果物や、奥志賀高原牧場の濃厚な朝採れ牛乳などを、シンプルに使って作っているだけです」とのこと。

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とはいえこんなに美味しくなるには、お二人が何らかの魔法をかけているとしか思えません。秋は巨峰やシャインマスカット、黄桃が出ることも。冬にはりんご、春はいちご、夏は白桃なども登場するとか。全部捨てがたいのですが、あえて一つをおすすめするならば、まるで生キャラメルのような濃厚な風味のする「ミルク」でしょうか。おかわりせずにはいられないほど美味しいです。

若葉屋

住所:長野県下高井郡山ノ内町大字平穏2184
TEL:0269-33-3305
営業時間:8:00〜21:30
定休日:なし
公式SNS :Facebook

おすすめ2、渋温泉 四大温泉まんじゅう

続いては渋温泉の4大温泉まんじゅうをご紹介します。温泉地に来て、温泉まんじゅうを食べないわけにはいきませんよね?

<羽田甘精堂>

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羽田甘精堂の温泉まんじゅうは、たまご蒸しパンのように食べるとほっこりする感じ。ふわっとした生地に甘さ控えめなこしあんがたっぷりです。

生地に使う粉をブレンドしたり、お砂糖もこだわったものを選んでいて、生地に加える水の量も、季節や気温などの微妙な変化に合わせて丁寧に調整しているんだそうですよ。美味しい。

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お店では、看板猫のギーが迎えてくれるかも?

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羽田甘精堂

住所:長野県下高井郡山ノ内町平穏2316
TEL:0269-33-2324
営業時間:8:00〜19:30
定休日:不定休
公式ホームページ:https://hatakanseido.com

 

<西山製菓>

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西山製菓の温泉まんじゅうは、58年間ずっと変わらぬ直伝の味。フカっとした生地に、ほどよい甘さのこしあん入りです。温泉まんじゅうって、基本的にこしあんなのだと気がつきました。美味しい。

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西山製菓

住所:長野県下高井郡山ノ内町平穏2186
TEL:0269-33-3824
営業時間:8:00〜12:00、15:30〜18:00、19:30〜21:00
定休日:不定休

 

<松本製菓>

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松本製菓の温泉まんじゅうも、昔から変わらないスタイル。もともと和菓子職人だったご主人は、あんこ練りには相当のこだわりがあるとのこと。生地に対してあんこの割合は多いんだけど、甘さは控えめの一品です。美味しい。

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松本製菓

住所:長野県下高井郡山ノ内町平穏2185-2
TEL:0269-33-2342
営業時間:8:00〜21:00
定休日:不定休

 

<小古井菓子店>

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小古井菓子店の温泉まんじゅうは、しっとり薄めの生地に、すっきりとした甘さのこしあん。こちらも、昔から変わらぬスタイルです。美味しい。

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ちなみに小古井菓子店は「うずまきパン」もおすすめ。発売から50年以上味もパッケージも変わらないという渋っ子のソウルフード、購入すると温めてくれますので是非お願いしてください。中のバターが溶けて染み込み、危険な美味しさの食べ物になります。

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小古井菓子店

住所:長野県下高井郡山ノ内町大字平穏2114
TEL:0269-33-3288
営業時間:8:00〜20:00
定休日:第三水曜日

 

「温泉まんじゅうは繊細だ」。

初めてこんなにたくさんの温泉まんじゅうを食べ歩いて気がついたことがこれです。シンプルな材料と作り方でできているからこその儚さ。あと、蒸したてや少し置いてからなど、食べるタイミングによって、もちもちやふわふわの感覚も違ったりして。だから、本当は食べた感覚をあまりつべこべいうのもナンセンスかもしれません。好みも人それぞれ。とにかく、実食あるのみ、です。

これを知らないと
渋温泉は入れません

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さて、今回紹介した外湯めぐりを楽しむためには、渋温泉の宿に宿泊する必要があります。宿泊者限定で、全ての外湯が開けられる鍵を借りることができ、説明を聞けばあとは好きなタイミングと順番で入ることができるというシステムになっています(手ぬぐいは、各旅館かおみやげ屋さんで購入)。

 

それから、日本人なら当然知っているだろうと思いきや、意外と知らない人も多かったりする温泉マナー。渋温泉の外湯を楽しむ時も、以下の4つを忘れてはいけません。

一、かけ湯をする

……湯船に入る前に、桶にお湯をすくって体にかけます。汚れを洗い流すのと、お湯に体を慣らす意味合いも。渋温泉、かけ湯をして体をお湯に慣らさないと、熱くてとても入れません(汗)。

 

二、適温になったらうめ湯(水)は止める

……温泉成分を保つため、それから、次に入る人がぬる湯にならないように。

 

三、脱衣所へ上がる時は体のつゆをとってから

……脱衣所がビショビショになってすべって転ぶ人続出です。

 

四、水分補給を忘れない

……脱水は、コワイですよ!

もし他にも何かわからないことがあったら、怖がらないで街の人やお風呂で居合わせた人に聞いてみればいいと思います。きっとみんな親切に教えてくれるはずです。

九湯の効能と雰囲気は
こんな感じ

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最後に、渋温泉の外湯九湯を効能と合わせて紹介します。全部回ったのち、一番最後に渋高薬師というところでスタンプを押して祈願すれば、満願成就。九(苦)労を流し、厄除け、安産育児、不老長寿のご利益があると言われていますよ。

「一番湯・初湯(はつゆ)」

胃腸によく効く、別名・胃腸の湯とも言われています。

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「二番湯・笹の湯」

湿疹などに効き、病気の回復時に効果があり、仕上げの湯とも言われています。

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「三番湯・綿の湯(わたのゆ)」

切り傷や皮膚病などによく効くと言われ、白い湯花が生じます。文字通り綿(わた)を連想させる湯です。

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「四番湯・竹の湯」

慢性痛風に効くと言われ、ゆっくり入浴して患部を温めるのがおすすめだそうです。

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「五番湯・松の湯」

神経痛や病気の回復時によく効くと言われており、湯の中で体を動かすと痛みが軽くなると言います。

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「七番湯・七操の湯」

外傷性の障害や、病気の回復期によく効くと言われ、7回入れば全快するということから“ななくり”の湯と言われています。(黒い湯花が生じます)

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「八番湯・神明滝の湯(しんめいだきのゆ)」

婦人病によく効き、子宝に恵まれる湯とも言われています。

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「九番湯・大湯」

万病に効くと言われる大湯は九湯めぐりの総仕上げ。脱衣所の中に檜の蒸し風呂(サウナ)もあります。

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気がついた人もいるかもしれませんが、実は今回、残念ながら六番湯が改装工事中で入れませんでした。六番湯は「目洗いの湯」と言われ、昔から大勢の人が目の病を癒したといいます。美人の湯でもあるとのことで、楽しみにしていたのですが……残念(涙)。というわけで渋温泉巡浴祈願は満願成就しなかったけれど、また次回、渋温泉に来る時の楽しみにとっておくことにします。

 

温泉に入りまくって、スイーツを食べまくる。そんな、甘くて贅沢な一日のご提案でした。いかがでしょう〜?

Top image: © 2018 ETSU MORIYAMA
取材協力:渋温泉旅館組合