足ツボ、卓球、瓶ビールでととのった! 長野・渋温泉で、昼そぞろ

原宿竹下通りや渋谷センター街のような華やかさとは違うけれど、長野県渋温泉の温泉街には、 なんともクセになる、ここならではの空気感があります。

 

外湯めぐりをしてもよし、無料で入れる足湯を楽しんだり、卓球場で遊んでもよし。昼から一杯飲めるお店もあります。日常の仕事や雑務のことは一旦忘れて、渋温泉で昼のそぞろ歩きに繰り出しましょう。

 

“そぞろ歩き”とは、元々あてもなくぶらぶらと歩き回ることを言いますが、温泉街のお散歩を意味して使われたりもする言葉。宿で浴衣と下駄を借りてするそぞろ歩きもおすすめです。いざ、渋温泉の昼そぞろ。

足湯でツボ押しのあと
逆さまなサルを参拝

おすすめその1:「信玄足湯と温泉寺」

©2018 ETSU MORIYAMA

渋温泉には、誰でも入れる足湯が2つあるのですが、今回は街の東奥にある「信玄足湯」をおすすめしたいと思います。まずは、温度の違う4つに区切られた足湯を堪能。のちに、その周りを囲むツボ押しの足湯を2周ほど回ってみてください。大きさの違う石が敷き詰められていてその上を歩くだけなのですが、大体の人がヒーヒー言いながら回ります。でも、終わってみてビックリ。足がとても軽くなるので、色々とお疲れの方は特に立ち寄ってチャレンジしてほしいスポットです(もちろん効果に個人差あり、そもそも痛すぎて歩けない人もあり)。

©2018 ETSU MORIYAMA

足湯 足休処信玄

住所:長野県下高井郡山ノ内町大字平穏2094
営業時間:8:00~22:00

足ツボで体をととのえたら、足湯の右側を上って「温泉寺」にも行ってみてください。ここは弘治元年(1555年)に開山された曹洞宗のお寺で、武田信玄ゆかりの場所とも言われています。川中島の戦いで負傷した武田勢兵士の傷を癒したとされる隠れ湯、信玄釜風呂も残っています(老朽化により無期限閉鎖中)。

©2018 ETSU MORIYAMA

さらにここには、素通りせずにはいられないものが。それはこの「見るさる・言うさる・聞くさる」の石像です。

©2018 ETSU MORIYAMA

対面には、正解バージョンも。

©2018 ETSU MORIYAMA

なぜ温泉寺では、栃木県日光東照宮で有名な「見ざる・言わざる・聞かざる」と全く反対の像を作ったのでしょうか? 気になるその答えは、「これを作った先代の住職が、ダジャレ好きだったから」。ギャフン! 予想外の答えでしたが、深い意味はないとはいえ、せっかく渋温泉に来たら一見の価値ありです。

横湯山 温泉寺

住所:長野県下高井郡山ノ内町大字平穏2032
TEL:0269-33-2220
営業時間:特にありませんが、明るいうちがおすすめです

街の卓球場で
渋の昔にタイムスリップ!

おすすめその2:「歌恋会館」

©2018 ETSU MORIYAMA

温泉といえば卓球、そんな人も多いと思います。渋温泉では、街の中に誰でも無料でできる卓球場があります。台も、ラケットも、だいぶ年季が入ってはいますが、ラバーの痛み具合を見ていると、たくさんの人がここを訪れては通り過ぎて行ったことが感じられて、なんだかノスタルジックな気分になります。

©2018 ETSU MORIYAMA

ノスタルジックといえば壁に貼ってある写真たち。昔から行われてきたお祭りの様子や、変わりゆく街の様子が記録され、ギャラリーのように飾られています。

©2018 ETSU MORIYAMA

写真を眺めているうちに、一つ遊びを思いついたのでご紹介しますね。

©2018 ETSU MORIYAMA
©2018 ETSU MORIYAMA

昔の写真と同じ場所から写真を撮ってみる、という遊びです。

©2018 ETSU MORIYAMA
©2018 ETSU MORIYAMA

比べてみると、ここには昔は壁がなかったんだな、とか、道の幅が少し変わったな、とか、街をより丁寧に切り取って見ることができたりも。そもそもあれ? あまり変わっていないかも……そんなことに気がつくものまた面白いと思います。

少々マニアックかもしれませんが、そぞろ歩きのついでにこんな遊びを入れるのも、案外楽しいかもしれません。

歌恋会館

住所:長野県下高井郡山ノ内町大字平穏2189
営業時間:9:00〜22:00
定休日:なし

おやきと馬刺しでお昼から…

おすすめその3:「そば処 やり屋」

©2018 ETSU MORIYAMA

おそらく、いや間違いなく昼そぞろをしていると、明るいうちからちょっと一杯……なんて気分になると思います。その時はここ、やり屋さんがおすすめです。

“やり屋”というちょっと不思議な店名の由来は、先代が長野県飯山市で、槍の研ぎ師をしていたから(まさに、槍屋さん)。絶対に頼んでほしい二品はこちら。そば粉を使った特製のおやきと、馬刺しです。

©2018 ETSU MORIYAMA

馬刺しは長野や熊本産のものから、自分たちが食べて美味しいと思ったものを毎回仕入れて出しているんだそう。美味しかったので取材のあとにゆっくりいただこうと思っていたら、ちょっと目を離した隙に、カメラマンにほとんど食べられてしまいました(涙)。

おやきは切り干し大根、野沢菜、にんじん、油揚げ、生姜、ねぎなどたくさんの具が入っていて、うまみの響宴が素晴らしく、ボリュームも満点です(直径10センチくらいありますがこれで一個150円!)。日によってはあんこやかぼちゃ、りんごチョコのおやきを出すこともあるそうですが、どれも想像しただけで美味しそうです。

©2018 ETSU MORIYAMA

サービスで、巨峰とりんごも出していただきました。季節の美味しいものがあると、こうして出してくださるというのも嬉しいです。

 

お店の中には、お座敷とテーブル席があるのですが、ペットを連れたお客さんも、テーブル席ならOKとのこと。どんな人でも来られるお店にしたい、来られない人をなくしたいという、女将・一栄さんのこだわりです。メニューも、渋温泉に多く来る海外からのお客さんにもわかりやすいよう、英語での説明が。娘さんが作ってくれているそうなのですが、おやきの紹介は、実際に食べた外国人のお客さんがわかりやすく書き足してくれたんだとか。

 

おやきは信州の郷土料理。腹持ちがよく、中におかずも入っていて栄養満点なので、元々は農家さんが農作業に行く時に作って持って行ったものなんだそう。今回はお酒のアテにいただきましたが、それもまたよし。

©2018 ETSU MORIYAMA

ところで、お店のいたるところに置いてある置物やグッズにも、触れないわけにはいきません。昔みやげ物屋を営んでいた先代が置物好きで、招き猫や民芸品を店にたくさん置いたんだそうです。ゲームキャラクターのグッズは、数年前に渋温泉で行われたイベントの時、ゲーム会社の人に置いてほしいと言われて置き出したら、その後に来るお客さんまで置いて帰り出したのだとか。どんどん増えるけど、お店のものを持って行かなければなんでもいいです、とのこと。そんなおおらかな対応も、やり屋さんらしさ。

 

50年前はこの辺にも、ダンスホールやストリップ、パチンコ、観覧車もあったのよ、なんて街の歴史も聴きながら、昼からおやきと馬刺しで一杯やって、シメにご主人・博昭さん自慢のおそばをいただく。たぬきそばが人気だそうですが、ここはあえての山菜そば。信州の山の恵みがモリモリで、650円! 嗚呼、大人って最高だなぁ。

©2018 ETSU MORIYAMA

そば処 やり屋

住所:長野県下高井郡山ノ内町大字平穏2165-2
TEL:0269-33-2619
営業時間:11:00〜16:00頃、18:00〜23:00
定休日:なし

他にもたくさんのおすすめがありますが、今回はこの辺で。

楽しい渋温泉の旅になりますように。

Top image: © 2018 ETSU MORIYAMA
取材協力:渋温泉旅館組合