「EDC」の総帥・パスカーレ、緊急来日インタビュー!

過去2回の開催で16万人を動員したダンスミュージックの祭典「EDC(Electric Daisy Carnival)」。世界7カ国で開催されるこのビッグパーティを運営する「INSOMNIAC(インソムニアック)」から、創設者であるパスカーレ・ロッテラ氏が緊急来日! 5月11日(土)、12日(日)に開催される「EDC Japan 2019」のトピックや、ダンスミュージックシーンに起きた変化、そして「カルチャーの在り方」についてインタビュー。

Pasquale Rotella/パスカーレ・ロッテラ

2017年、2018年と日本でも開催されて話題となった世界的なダンスミュージックの祭典「EDC」こと「Electric Daisy Carnival」をはじめ、数々のビッグパーティを手がけるイベントオーガナイズグループ「INSOMNIAC(インソムニアック)」の創設者にして現・CEO。

「EDC」の成功の理由は
「energy」と「staying true」

©2018 TABI LABO

──まずは「世界三大フェス」のひとつにも数えられ、2017年にはじめて日本で開催された「Electric Daisy Carnival(以下 EDC)」について教えてください。

 

「EDC」のテーマは“自然とテクノロジーの融合”であり、「インソムニアック」がやっているすべてのパーティの集大成といえるかもしれないね。

僕がはじめてプロデュースした“アンダーグラウンドではない”パーティー「Nocturnal Wonderland(ノクターナル・ワンダーランド)」、その姉妹イベントでデイタイムなバイブスの「Beyond Wonderland(ビヨンド・ワンダーランド)」、アンダーグラウンドなテクノイベント「Factory 93(ファクトリー93)」、トランスミュージックにフォーカスした「Dreamstate(ドリームステート)」、アメリカで最大級のハロウィンイベント「Escape(エスケープ)」......僕たち「インソムニアック」のパーティーはいろいろあるけど、「EDC」はそれらのコンビネーションなんだ。

© Insomniac Events
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──「EDC」がラスベガスやニューヨーク、オーランドといったアメリカ本土だけでなく、プエルトリコやメキシコ、ブラジル、インドなどでも開催される世界的なビッグフェスに成長した理由はなんだと思いますか?

 

理由は、大きく三つ。

まず、僕たちやDJ、アーティスト、そしてゲスト……僕たちは「ヘッドライナー/主役」と呼ぶんだけど、それぞれすべてのenergy(エナジー)が集まったこと。energyが集まったことで「EDC」は巨大なculture movement(カルチャームーブメント)になったんだ。

二つ目は、つねにクオリティを追求してきたこと。

1997年にスタートしてから2018年までの21年間、「EDC」は来場者にエキサイトしてもらうことだけを考えてきた。それが今の成功につながっていると考えているよ。

そして三つ目は、「staying true」……つまり、カルチャーに対して「誠実」であり続けたこと。

僕は、これこそが「EDC」が成長できた、もっとも大きな理由だと考えている。

世界中のいろいろな国や場所でたくさんのフェスが開催されているが、その多くは失敗に終わっている。失敗した理由?それは「商業的」になったから。

「EDC」はダンスミュージックというカルチャーのルーツに誠実であり続けた。最先端のカルチャーを発信しながらも、「EDC」のバイブスはすごくオールドスクールなんだ。

これからも、カルチャーにもファンにも「EDC」は「staying true」であり続けることを誓うよ。

「自らがエンターテイメントの
一部になること」こそが重要

© Insomniac Events
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──東アジアエリアでの「EDC」の最初の開催国として日本を選んだ理由はなんですか?

 

日本にはダンスミュージックの歴史があって、素晴らしいロケーションがあって、最高のパートナー(GMO Culture Incubation)がいたから。

「EDC」の魅力を世界に広めるには、日本での開催が絶対に必要だったんだ。

 

──「EDC Japan 2017」には、2日間で8万人を超える来場者……ヘッドライナーが訪れましたね。

 

I love it!(最高だったよ!)とくに、日本のみんなのショーへの接し方は最高だった。

ダンスミュージックのフェスティバルがヒップホップやロックのフェスと大きく違うのは、主役がアーティストではなく「フロアにいるみんな」だということ。

参加者一人一人が主役となり、自ら進んでエンターテイメントの一部になるということが、ダンスミュージックのフェスティバルではもっとも重要なんだ。「今日のDJは、どうやって私を楽しませてくれるの?」とか「この曲ではこう手を上げればいいでしょ?」とか、そんなふうに思ってほしくないし、思わせたくない。

コンサートではなくパーティーにくる感覚――フェスティバルがどんなに大きく成長しても、僕はこの感覚をどうしてもprotect(守る)したいんだ。

ヒップホップはマイクパフォーマンを聴くのが楽しい。

ロックは楽器を弾いている姿を観るのが楽しい。

ダンスミュージックは......踊るのが楽しい音楽なんだ。

日本のみんなはそれをすごく理解していたし、「EDC Japan 2018」はコンサートではなく、間違いなくパーティーだった。

ネットやSNSで激変した
ダンスミュージックの世界

© Insomniac Events

──「EDC Las Vegas 2018」は「Red Bull TV」でリアルタイムでストリーミング放送されて話題になりましたが、インターネットやSNSがダンスミュージックやフェスに与えた影響は?

 

何もかも、だよ。

昔は、アンダーグラウンドなパーティに連れていってくれる友だちがいなければ、ダンスミュージックやダンスカルチャーに触れるのが難しかった。しかも、世の中の多くの人はダンスミュージックの可能性について何も感じていなかったし、DJはロックスターの人気の波に飲まれていた。

歌詞のない音楽は「特徴がない」と思われていたんだ。

でも、ネットやSNSが普及して、多くの人が自分の好きな音楽をpromote(表現)できるようになったとき、ダンスミュージックの人気は一気に爆発した。

僕のパーティーも、最初は自分の部屋に知り合いだけを集めて楽しんでいたのが、使われていない倉庫を借りてやるようになって、今では巨大なスタジアムに何万人も集めて、花火をあげるまでに成長した。

ただ、どんなに規模が変わっても、コアバリューだけはまったく変わらない。

いい音楽を、自分らしく楽しむ――。

その気持ちだけは、僕らも、ダンスミュージックのファンも、アパートの小さな部屋を改造して、中古のライトやストロボを自腹で買って、ちゃんとフラッシュしたことに大喜びしていたあのころと、何も変わっていないよ。

 

──そのほか、ここ数年でシーンに起きた変化などは?

 

ポップアーティストとヒップホップのアーティストがダンスミュージックとコラボレーションするようになったのは、大きな変化のひとつといえるね。

ポップ、ヒップホップ、ダンスミュージックがcross over art(ジャンルを超えたアート)になったことで、多くの人が楽しめるようになった。

だけど、絶対に忘れてはいけないのが、ダンスミュージックがアンダーグラウンドな時代からシーンを支えて守ってきた、プロデューサーやスタッフ、アーティスト、ファンの存在だね。彼らは、どんな状況でもダンスミュージックの可能性を信じて、絶対に諦めることはなかった。そして、energyを放ち続けた。

そういう意味では、ダンスミュージックはパンクロックよりもパンクなんじゃないかな。

15年も20年も抵抗し続けて、今のダンスミュージックの人気を獲得したんだから。

戦うことを恐れていては
「カルチャー」は誕生しない

──日本のダンスミュージックシーンやクラブを体験したことはありますか? また、その感想は?

 

I just love japan. 「EDC」を開催するまではきたことがなかったんだけど、日本の都会の雰囲気は、僕のenergyをブーストしてくれる。ファッションもいいし(amazing)、ミュージックシーンも最高だよ(awesome)。

そして、日本のダンスミュージックシーンはもっと大きくなっていくべきだと思うし、そのために「EDC」と僕たち「インソムニアック」は日本にきたんだ。

 

──日本では2010年あたりからクラブやダンスに関する規制が厳しくなりました(※1)。そんなダンスミュージックというカルチャーを規制する動きをどう思いますか?

 

都心部では、そうした変化の波はやってくるものだよね。国によっては、イベントをホストしたら20年間も刑務所に入らなくてはいけないルールなんかもある。

理不尽だけど、それが現実なんだ。

でも、僕たちは、そんな恐怖にも立ち向かって、前に進んできた。

「僕たちは、何もわるいことなんかしていない。むしろ、多くの人にとって、いいことをしているんだ。Don’t be afraid(怖がるな)」って、自分に言い聞かせながらね。

※1/2016年6月に規制が緩和され、一定の条件を満たすことで24時間のクラブ営業が可能になった。

「EDC」の「総帥」から
日本のファンにメッセージ

©2018 TABI LABO

──2017年、2018年と大成功を収めた「EDC Japan」ですが、5月11日、12日に開催される「EDC Japan 2019」はどんな展開を考えていますか?

 

もっとローカルなカルチャーに寄り添ったパーティーにしようと考えているよ。

まだすべてを話すことはできないけど、ひとつ例を挙げると、「インソムニアック」ではヒップホップとエレクトロミュージックをミックスした「HARD SUMMER MUSIC FESTIVAL(ハードサマーミュージックフェスティバル)」というパーティーを開催しているんだけど、そのパーティーのクルーによる“ビーチステージ”を日本に持ち込むよ。

日本のカルチャーにはビーチステージのようなlow energy(落ち着いたエネルギー)がマッチすると思うんだ。

ほかにもいろいろと考えているから、「EDC Japan 2019」はかなり変化に富んでいてhandsome(すごい)なものになるよ。

 

──それでは最後に「EDC Japan 2019」の開催を心待ちにしているファン.....いや、ヘッドライナーにメッセージをお願いします。

 

今、僕たち「インソムニアック」、そして日本のパートナーたちでアイデアを出し合って、これまでのダンスミュージックのフェスティバルからは想像もできないものを作ろうとしているんだ。

音楽だけじゃなく、インスタレーション、グラフィック、アート、ペインティングなども盛り込んだ、ムーブメントであり、experience(経験)であり、アートショーでもある、新しいスタイルのパーティーをね。

「EDC」では、ヘッドライナーたちに「既視感」を感じてほしくない。いつも新鮮な気持ちで楽しんで欲しいんだ。

世界最高峰の音楽が楽しめる場所。自分が自分らしくいられる場所。最高の仲間と出会える場所。

──それが「EDC」なんだ。

EDC Japan 2019

日程:5月11日(土)、12日(日)

会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張海浜公園 EDC特設会場

Top image: © 2018 TABI LABO
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。