「原宿」に誕生した話題の「映える」うどん専門店

開店前から話題となっていた
原宿エリアの新名所

麺散
© 2018 Shinji Tanaka

「ザ・ノース・フェイス」や「アークテリクス」、「パタゴニア」「グレゴリー」など、有名アウトドアブランドの旗艦店が立ち並ぶエリアと、様々な流行の発信地として知られる通称「キャットストリート」の間の路地に、先日、あるお店がオープンしました。

その名も「麺散(めんちらし)」。

ファッション、音楽、アートなど、つねに様々なカルチャーを牽引し続けてきたこの場所で、オープン前から話題となっていたこのお店が扱うのは、香川県を発祥とする讃岐うどん。

「原宿の超一等地に開店した、おしゃれでおいしい、讃岐うどんのお店」──。

そんな“映(ば)え”そうなトピックが満載のニュースポットをご紹介します。

麺散
© 2018 Shinji Tanaka

下町の洋食屋さんとアメリカンなダイナー、そして高級割烹がひとつになったような不思議な空間「麺散」が、神宮前6丁目に誕生したのは、今年の9月。

この場所で約5年間にわたって愛されてきたカフェがクローズし、施工がはじまると、外壁に施される特殊な装飾やメタルと木を組み合わせた内装などが、近隣のアパレル関係者や原宿フリークの間で話題となりました。

そんな流行発信地に新たな誕生した「麺散」を手がけたのは、テレビや雑誌をはじめとする様々なメディアで取り上げられた“あの”お店の仕掛け人・岡田茂さん。

「SNSで流行が“作れちゃう”時代だからこそ、地に足をつけた店を作りたかった」という岡田さんに、お店のコンセプトやこだわり、おすすめのメニューから飲食業界の今後について聞きました。

テレビや雑誌で話題となった
「あのお店」の仕掛け人にインタビュー

麺散
© 2018 Shinji Tanaka

──まずは「麺散」のコンセプトやテーマから教えてください。

 

原宿にエッジの効いたマス向けのコンテンツを作りたいと思ってオープンしたのが「麺散」です。

僕は今、「エンワントーキョー」っていう会社に所属してるんですが、そこは原宿にギャラリースペースをもってたり、アーティストを抱えてたりっていう、いわゆるクリエイティブエージェンシーなんですけど、原宿で何かイベントとか企画をやりたいってなったら、まず最初に名前が挙がるような会社なんです。

「そんな会社がうどん屋やってたらウケるよね」っていうのがあって。

 

──岡田さんは、2016年に中目黒にオープンしたフィッシュバーガーの人気店「デリファシャス」の仕掛け人として多くのメディアに登場していましたね。

 

アレはアレですごくキャッチーだし響いたと思うんですけど、「デリファシャス」を1年間経験させてもらったからこそ、あらためて「僕はこっちがいいな」って思ったんです。

毎日行列ができて、毎日違う人たちがきて......確かにそれってすごいことなんだけど、去年の12月に店を辞めて今の会社に入って、飲食事業を立ち上げてもらって「お前、何やんの?」ってなったときに、1週間に3回でも4回でも、ヘタすりゃ「1日に2回これる」みたいなお店を作りたいなって。

 

──以前に手掛けられたお店のスタイルを思うと「ヒップなうどん専門店」みたいなノリを想像していたんですが......。

 

意外とそうじゃなくて、地に足つけてます(笑)

原宿ってなると、家賃は高いし、保証金も高い。そうなると、当然、料理の値段も高くなる。でも、幸せなことに、うちの会社は原宿にスペースをもってて、自由が効く。「神宮前6丁目っていう一等地で飲食をやれる」って考えたときに、僕は一杯450円のかけうどんをガチで作りたいって思った。

プロモーション次第で簡単に話題作りができちゃう時代だからこそ「原宿の真ん中に、毎日通える、安くておいしいご飯屋さんを作る」っていうことが、すごく意味のある、重要なことだと思ったんです。

和と洋が入り混じる
店内とキッチンカーを停めたワケ

麺散
© 2018 Shinji Tanaka

──店名の「麺散」の意味は?

 

漢字が違うんですけど、「面散」って日本の伝統的な刺青のデザインのひとつなんです。意味というより、インスピレーションと音の響きで決めました。

それから、たとえばGoogleで「めんちらし」って検索すると刺青の画像がバーって出てくるんですけど、何年か店を続けていたら、刺青の画像のなかに「うどん」の画像が混ざってくるわけじゃないですか。それを想像したら......「ウケるな」と思って(笑)

ちなみに、壁に飾ってある「五つのお面」の絵。この絵はメニューの表紙にも印刷してるんですが、これも刺青の絵柄として定番の「天下御免」っていう意味をもつ縁起のいいデザインです。

麺散
© 2018 Shinji Tanaka

──外壁や内装に施されている陶磁器の装飾は?

 

「波佐見焼」という長崎の波佐見町の伝統的な焼き物です。そこに「マルヒロ」さんっていう窯元があるんですけど、僕、もともとそこの社長と仲がよくて。

でも、じつは当初はこれを使う予定はなくて、僕はタイル貼りを考えていたんだけど、施工業者からきた見積もりの額が「ちょっと待って」みたいなエグい額だったんですよ。それで「マルヒロ」さんに相談したら「売ることのできないB級品があるから、それを使ってみたらどうだ」って話をもらったんで、それに甘えて、みたいな。言い方わるいですけど、「波佐見焼」にした理由はコストダウン(笑)

とはいえ、出来映えには満足してるし、お互いのフレンドシップの象徴にもなるし、すごく気に入ってます。

あと、まぁ......安くもできたしね(笑)

麺散
© 2018 Shinji Tanaka

──壁に飾られたネオンサインは、漢字のように見えるんですが......。

 

「仏迦袈」と書いて、読みは「ぶっかけ」。当て字です。

これも以前から付き合いのある、「sacai(サカイ)」とか「ビームス」のショップの什器なんかを作ってる「GELCHOP」さんっていうクルーにお願いしました。

僕はイグサの匂いとか質感が好きで、和の雰囲気がうどんともマッチすると思ったから「壁に飾る、畳を使ったオブジェを作ってほしいんだよね」って相談したら「畳だったら“やっぱ”ネオンだろ」みたいな(笑) センスよくハマったんでよかったですけど、今考えても「やっぱ」の理由はよくわかってません(笑)

麺散
© 2018 Shinji Tanaka

──ちなみに、店先に停めてある黄色のバンは?

 

これは飾りとか看板代わりってわけじゃなくて、別の店舗になります。

 

──別の店舗とは?

 

「ONE」っていう店名の「麺散」とは別のお店です。原宿だし、フィンガーフードみたいな食べ歩きできるものを出したいなって思って、このバンでは出汁巻玉子ドッグを売ってます。あとは、簡単なドリンクとか。

うちの会社はいろんなイベントの制作に携わってるっていうのもあるし、キッチンカーが一台あったらおもしろいコンテンツになるよねっていう。今後はイベントへの出展なんかもしていくつもりです。

麺への強いこだわりと
オススメの3品をご紹介!

麺散
© 2018 Shinji Tanaka

──では「麺散」の料理について教えてください。

 

料理を担当しているのは、新宿の「うどん 慎(しん)」っていう、朝から晩まで行列ができてるようなお店からきてもらった職人です。

じつは僕、中目黒で「デリファシャス」をはじめるまえに2カ月だけ「うどん 慎」でバイトしてたんですよ。「煮穴子の天ぷらドッグ」をやりたいなと思ってて、でも「天ぷら? 知らねぇな」みたいな(笑) 「天ぷらのこと勉強するんなら、うどん屋かそば屋じゃね?」って(笑) そのときからお世話になってる職人さんです。

 

──うどんへのこだわりなどは?

 

讃岐うどんの定義って難しいんですけど、関西の人は「出汁、出汁」いうし、四国の人は「歯ごたえと喉越し」っていうし、いろいろ試してみた結果、「それってニコイチがいちばん旨いんじゃないの?」って......うちではイイトコ取りのニコイチにしてます(笑) 僕自身は職人じゃないんで、ハンバーガーもそうなんだけど「ルールとかよくわかんないし、合わせちゃえばいいじゃん」みたいな(笑)

麺散 うどん
© 2018 Shinji Tanaka

──なるほど。ほかには?

 

麺には超神経を使ってます。

ある程度熱を通しておいて、オーダーが入ったら湯煎して出すことを「茹で置き」っていうんですけど、うちでは一切「茹で置き」をしません。ラーメンなんかは小さいテボ(柄のついたザル)で小分けにして茹でることができるんですけど、うどんは大釜にある程度の量をぶち込まなきゃいけなくて、オーダー数によっては確実にロスが出る。

でも、釜から揚げたての麺と「茹で置き」をした麺は明らかに味が違うので、無駄が出ちゃうのは苦しいんだけど、茹でたてを提供してます。

麺散 うどん
© 2018 Shinji Tanaka

──それでは、オススメのメニューをいくつか紹介してもらえますか?

 

まずは「ざるうどん」(550円)。シンプルにうどんの風味と出汁を楽しんでもらえる一品です。お皿にもこだわっていて、香川系のうどんを出すお店では砥部焼(とべやき)を使っているところがほとんどなんですけど、うちでは現代的なデザインの島根の出西(しゅっさい)を使ってます。

麺散 うどん
© 2018 Shinji Tanaka

うどんに加賀丸芋、納豆、紅花卵、モロヘイヤ、のり、かつお節、九条ねぎを乗せた「ネバトロ」(800円)も人気ですね。金沢から取り寄せている加賀丸芋は粘りが強いので、うどんと絡みやすいように長芋も混ぜ込んでいます。

このメニューも器にこだわっていて、砥部焼のなかでもちょっとデザイン性が異質な感じの「ヨシュア工房」の作品を使っています。

麺散 うどん
© 2018 Shinji Tanaka

「肉ごぼう」(950円)には、薄味で煮込んだ牛肉とごぼう天をトッピングしています。関東の人にはあんまり馴染みがないかもしれませんが、ザクザクとカットしたごぼう天は西日本、とくに九州エリアではうどんの定番のトッピングなんです。

目指すはグローバル展開?
うどん文化を世界へ

麺散 うどん
© 2018 Shinji Tanaka

──では最後に「麺散」の今後の展開などがあれば教えてください。

 

ラーメンの文化が世界的にここまで定着してて、今、世界中のいろんなところで「日本食が人気」ともいわれてますよね。

僕、ラーメンはラーメンで大好きなんだけど、「和食が人気っていうんなら、やっぱうどんでしょ」って思ってて。大手チェーンはもう行ってますけど、うちのうどんも、アジアとか北米でも全然通用すると思うんです。

だから、このお店が原宿の人たちに愛されて、「めんちらし」って検索かけたら刺青の画像に混ざってうどんの写真が出るようになったら(笑)、海外での展開とかフランチャイズとか、次の展開なんかもいろいろ考えていきたいと思います。

「麺散」

住所/東京都渋谷区神宮前6-13-7 グランドオム 1階

電話/03-6427-9898

営業時間/11:00〜23:30

定休日/不定休

Top image: © 2018 Shinji Tanaka
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