埼玉のオーガニックタウン・小川町にできた、週末限定のコーヒー屋さん

噂には聞いていたし、気にはなっていたんです。世界有数のオーガニックタウン、小川町(おがわまち)。

埼玉県の比企郡にあるこの町では、野菜はもちろん、ワインや一部の日本酒なども無農薬・無化学肥料での生産が広がっていて、年々盛り上がりを見せている「小川オーガニックフェス」も開催されています。

そんな小川町に、最近新たにオーガニックコーヒーが飲めるカフェも加わったということで、行ってきました「BLISSCLE COFFEE ROASTERS(ブリスクル コーヒー ロースターズ)」。

あっつい小川町で
とりあえずアイスコーヒーを!

©2018 TABI LABO

東武東上線とJR八高線が交わる「小川町駅」に到着してまず思ったこと。

あっつい!!(叫)

猛暑で有名な、かの「熊谷市」と隣接したこの町は、秩父連山に囲まれた盆地。風も吹いてないし、この蒸した炎天下では10分歩くのだってキツイ。遠かったらどうしよう……と思ったら、小川町駅から徒歩3分でした。ありがとうございます。

ちなみにカフェのオープンは土日だけですが、そういう限定感も好きです。

©2018 TABI LABO

オーナーの水谷伸二さんが、「暑かったですよね」と出してくださったのは、エクアドルとウガンダの豆をそれぞれフレンチロースト、フルシティローストしてブレンドした、水出しアイスコーヒー。

「後味が甘くなるように焙煎しているので、そのまま何も入れずに召し上がってみてください」

普段はミルクも砂糖も入れる派の私ですが、まずはひとくち。おぉ、口のなかに残る苦味がなくて、たしかに甘い。酸味もキツくないし、本当にゴクゴクいける! 夏の日にぴったり。

小川町が求めていた「至福」

©2018 TABI LABO

ちなみに店名の「BLISSCLE(ブリスクル)」ですが、聞いたことない言葉だなーと思っていたら、BLISSは「至福」、CLEは日本語の「来る」に由来していて、至福が訪れるという意味を込めた造語なんだそうです。

以前から、オンラインショップでのオーガニックコーヒー豆販売をベースにしていたそうですが、小川町にのんびりとコーヒーを飲める場所がなく、ちょっと休憩したいときに立ち寄れるスポットとしてオープン。

町のみなさんからしても、まさに求めていた「至福の場所」だったのですね。

罠師さんの
コミュニティスペースを間借り

©2018 TABI LABO

実はこの場所、元々は趣味で鹿やイノシシを狩る罠師さんたちがつくったコミュニティスペースだそうです。確かに店頭には「wanna see FACTORY(わなし ファクトリー)」の看板がありました。

店内の本棚にある『狩猟の教科書』『世界屠畜紀行』『パーマカルチャーしよう!』などを見て、なるほど納得。

罠師であるこちらのオーナーも、自給自足に興味がある人たちの交流、時にはイベントスペースとして使えそうなこのスペースで「コーヒーも飲めたらいいのに」と思っていたところ、コーヒーロースターの水谷さんと出会ったそうです。

人生で一番ハマったこと
それが「自家焙煎」

©2018 TABI LABO

「20代の頃は、普通にインスタントコーヒーを飲んでましたよ(笑)。とくに興味があったわけじゃないんですけどね、30代半ばのときに行きつけていたカフェバーで飲んだ自家焙煎のコーヒーがすごくおいしくて。そこからです」

と、水谷さん。独学で焙煎を試すようになったら、焙煎の仕方で酸味や風味が変わっていくのが楽しくて、一気に夢中になったそうです。

小川町との関係が深くなったのは、冒頭でも触れた小川オーガニックフェスに行ったときの感動や、町内のコミュニティスペース「たまりんど」でコーヒーの淹れ方講座を開催したのがきっかけ。

「おもしろい人たちがたくさんいるなぁ、というのが印象的でした。交流を深めていくうちに、自分もこの街に移住して、コーヒー文化を盛り上げていきたいなと思ったんです」

同じ小川町で、普段は有機野菜を作っている農家が、金土日の週末だけ営業している隠れ家的存在「農家のカフェバー トランジット」や、有機野菜を使ったランチが人気の「有機野菜食堂わらしべ」にもコーヒー豆を卸しているそう(※わらしべは2018年9月より移転するそうです)。

また、小川町では知る人ぞ知るお肉屋さん「デリカテッセン アーチャン」の店主が作る絶品パウンドケーキ(!?)もカフェで提供していたりと、日々、街のなかでの横のつながりを強く感じるという水谷さん。

「都内だと、池尻大橋にある『定食屋うちごはん』さんにも卸しているんですよ」

まさかの、TABI LABOオフィスのご近所でした(笑)。横のつながりっておもしろいですね。

オーガニック=おいしい、のか

©2018 TABI LABO

有機栽培・自然栽培で育てられた豆だけを扱うのは、環境に負荷をかけて作られたものを扱いたくない、という思いがあったから。

「オーガニックだと、どう味が変わるんですか?」と聞いてみたところ、少し間をあけてこんな言葉が。

「味は素材であるコーヒー生豆や焙煎によって良くも悪くも変わるので、オーガニック=おいしい、ということではないんです。正直に言うと、おいしくないオーガニックコーヒーもありますよ。でも、そうしたコーヒーは出しませんね」

いただいた水出しコーヒーも、スッキリしていてすごく飲みやすかったけれど、人によっては薄味とも感じられるそうです。うーん、そうか。大事なのは、背景にあるストーリーや思いを知ったうえで、“なにを選ぶか” なのかもしれません。

それから水谷さんは、こう続けます。

「おいしいコーヒーを知ってもらいたいですね。焙煎したて、挽きたて、淹れたてのコーヒーは格別です。おいしいコーヒーを味わうひとときを大切にしていただければ、日々の疲れも癒されます」

世界的にも注目されているのに
ゆる〜いのが小川町の特徴?

小川町は、海外からの視察も多く、世界的に見ても研究対象になるような場所なのに、地元の人たちは思った以上に普通で気取ってない。「でも、今後も有機農業を広げながら、さらに世界に誇れるオーガニックタウンになったら嬉しいですね」と、水谷さんとのお話もとても楽しめました。

「1年間農業体験ができる取り組みもしているし、有機農業を目的に移住してくる人も多いから、みなさんすごくあたたかく迎え入れてくれますよ。いい意味でキャラクターの強さもありますけどね(笑)」

と突然、ガラガラと来客の音。「どうも、茄子おやじです」と笑顔の男性。……なんてタイムリーな個性のある人の登場でしょう(笑)。

実はこの方、下北沢で20年以上も愛されているカレー屋「茄子おやじ」の元オーナー。すでに引退してお店の権利も譲渡し、小川町に越してきたそうです。また個性のあるカレー屋さんが新しく小川町にできるのかな〜と、つい期待しちゃいますよね。

 


※2019年3月22日より、小川農産物直売所の敷地内のプレハブ小屋に移転。テイクアウト専門のコーヒースタンドとして、淹れたてコーヒーや水出しアイスコーヒー、焼き菓子等を販売。

下記の情報も、公開時より加筆・修正しております。

「ブリスクル珈琲」

住所:埼玉県比企郡小川町下横田676-1 小川農産物直売所敷地内
TEL:050-3578-0330
定休日:火曜日
営業時間:平日11:00~16:00、土日祝日10:00~16:00
公式HP:https://shop.blisscle.com/

Top image: © TABI LABO
企画協力:埼玉県
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。