僕らが考えている今と未来① 〜伊勢谷友介、瀬戸勝之、久志尚太郎〜

「人類が地球に生き残るために」を理念に掲げ、人間がこれまでもたらした環境や社会への影響を見つめなおし、未来における生活を新たなビジネスを通して提案する株式会社「リバースプロジェクト」を主宰する伊勢谷友介。


360度の立体的なサウンドシステムの考案と同時に、超音波研究にもとりくみ、音の可能性を追求するサウンドクリエイター、瀬戸勝之。


TABI LABO代表取締役であり、メディアやコンテンツを通して人々の「覚醒」を目指すという久志尚太郎。


職業も生き方もまったく異なるけれど、「今と未来を真剣に考えている」という3人の男を集め、とにかく片っ端から気になることを話してもらおうという今回の企画。ちょっと長くなったので3回に分けて掲載します。


vol.1は、それぞれの仕事や活動についてです。

「TABI LABOを作ったのは、ヒッピーカルチャーの影響が大きい」(久志)

 

久志尚太郎(以下、久志) まず、おふたりの出会いについて訊いてもいいですか。


伊勢谷友介(以下、伊勢谷)
 あるプロジェクトをきっかけに集まった場で、たまたま出会ったんだよね。


瀬戸勝之(以下、瀬戸)
 そうだね。僕が伊勢谷友介という人間に興味を持ったのは、新しい枠を作っていくこととその見え方を考えることを、しっかり同時進行でやっているなあと思ったのがきっかけで。


伊勢谷
 リバースプロジェクトのこと?


瀬戸
 そう。その同時進行って結構体力いるじゃない?もちろんその前から役者としても知っていたけど、興味が湧いたのはそこからですね。この人、どういう考え方をしているんだろう?って。


伊勢谷
 僕は結構リアリスティックな人間だけど、その場の空気的にはそうじゃない人の会話がメインだったよね。だから僕は「へえ〜」って聞いてるだけだった(笑)。宇宙の話とかしてたっけ? 超音波の。


久志
 超音波?


瀬戸
 発端はリゾート地に蚊を入れないようにする方法を話していたんだよね。ブラジルかどこかの国では、ある周波数にラジオをチューニングして虫除けの音を出しているらしくって。そこからヒントを得て、農薬や薬品を使わない自然の力で蚊が入らないようにできないかと。


伊勢谷
 要は聞こえない、感じられないかもしれないけど、実際にエフェクトできる音に近い超音波を使って、空間のコントロールをしているっていうふうな話だよね。


久志
 もしかして、それって製品化してた?


瀬戸
 してるしてる。ベビーカーに取り付けて、赤ちゃんを蚊から守れるっていう製品。それをもっと大きなエリアでできないかという話をした。でも、メンバー的に現実的な話には入っていかなかった(笑)。わりと不思議な人が集まっていた感じだったな〜。


久志
 超音波の話って非現実的だと思っている人も多いけれど、僕は勝さんがプロデュースしている3Dサウンドとその超音波の体験って、とてもリアルなものだと思ってる。

その根底には、僕がヒッピー文化にとても影響されているっていうのがあるかも。15歳からアメリカで暮らしていたこともあって、60年代のヒッピー文化をリスペクトしていて、TABI LABOをやっているのも結局それで……なんというか、インターネットってヒッピーが広めたようなもんじゃないですか。


伊勢谷
 へーそうなんだ。


久志
 あの時代はLSDなんかがあって。僕は例え話で60年代のドラッグの話をよくするんだけど(笑)、当時のドラッグって言語を超えて意識や感覚みたいなものを共有しようとしていた側面もある。見えなかった世界を視覚に頼らずにみんなで見ることができたというか。それが今の世の中に大きく欠如していると思う。

僕としてはTABI LABOでコンテンツを提供しているのは、結構ヒッピーにおけるドラッグに近くて……このニュアンス、誤解されなきゃいいけど(笑)。


伊勢谷
 概念みたいなものの共有がしたいってこと?


久志
 そうそう、上手く言葉にしてもらってありがとうございます(笑)。で、勝さんの音による空間作りって、ノンバーバルで、五感だけでなく第六感も含めて人の体感値を上げていくものだと思っていて。それが今回集まってもらったテーマにも繋がっている。


瀬戸
 うまくまとめてきたね(笑)。


久志
 この鼎談では、とにかく今と未来の話をおふたりとしたいなって。


伊勢谷
 もう語っちゃってるじゃない?


久志
 いきなり話をはじめちゃいました(笑)。失礼しました。

「今、世の中に必要なのは、新しい認知革命」(伊勢谷)

 

伊勢谷 勝くんは、その体感値の共有とか自分の仕事とかってどう捉えているの?


瀬戸
 今のびんちゃん(久志)の話に違和感はなくて、共通感覚を言葉にするとそういうことだよねって感じかな。

僕は24歳のときからクラブ(club JUNC)を経営していたんですけど、26歳のときに「音そのものをより深く研究したいな」という気持ちを持つようになったんですね。その時期ってちょうど音楽がレコード、CD、MP3とデータ化されていった時だったんですけど、そのなかで「実はレコードのほうが音がいい」「生のオーケストラのほうが音がいい」というふうに言われたわけです。じゃあそれは何なのかというと、結局のところ振動なんですよね。音そのものが空気のバイブレーションなんで。


伊勢谷
 つまり、技術的な話だよね、勝くんのは。びんちゃんは概念的な観点で話してくれたけど。


瀬戸
 そうだね。僕は超音波に対しては、概念から入っているわけじゃないんです。

じつは僕も、友介と一緒で懐疑的なタイプなんですよ。パワースポットとかイルカの超音波がいいとされていることに対しても、疑いながら入っていったんです。でも、エビデンスをとるたびに、ある周波数(の音)が重なって出ていることがわかって、それを調べているうちに心理学や人間に対する作用にぶつかっていって——そう、だから超音波の研究って、わりとエビデンスからスタートしたんです。

例えるなら、サイエンスとフィジカル。この2つって結構似てくるじゃないですか。カラダの調子をよくすることで頭は明快になるし、逆に頭だけだとカラダはダルくなるし。音だって、カラダがいい状態のほうが届くよねっていうのが超音波の研究の基本路線。それが音楽と混ざった時にどんな反応が起こるのか?それをどう人工的に作るかというのが今のミッションですね。


久志
 勝さんは、音楽という軸でテクノロジーを使って、世界に新しいビジョンを見せようとしてますよね。

一方、伊勢谷さんは活動や言葉で世界に新しいビジョンを見せてきた人かなと僕は思っています。リバースプロジェクトは、人類がどうやって自然の中でサバイブして共存していくのかがひとつの大きいテーマだと思うんですけど、伊勢谷さんは僕たち人類がそういうものに気づくために、今何が一番欠けてるように見えます?


伊勢谷
 論理的にわかっていることをきちんと理解すること。それを成長の過程に加えていないと思ってます。僕は新しい認知革命が必要だと思っている。


久志
 認知革命、なるほど。


伊勢谷
 認知の目的はある行動を促すため。その行動は、人類存続を第一目標とした、その人の人生の動かし方やアクションのとり方。なぜ今、現代の人間がここに立ってるのかという本質をちゃんと見る必要があると思ってるんだよね。我々は時々、「私たちがいなくなったら地球が喜ぶんじゃないか」みたいなおかしな結論に結びつけたりするけど、私たちが夢見ている地球=私たちにとって都合のいい地球なわけで。実際にはそうじゃない時間も地球上にはたくさんあったんだし。

だから僕らがリバースプロジェクトでやろうとしていることは、どんな悪い環境に陥ったとしても、その原因が私たち自身であるなら、一人ひとりがそれに気づいて改善していくということなんだよね。それによって行動がモラリスティックになっていく。

僕が考えてる認知は、そこの認知。生まれた時点で目的があるんだから、僕たちが命をかけてアクションをとることはすべてそこに帰結するんだ、そこを理解して行動している?未来のことを考えることができるのは人間だけなんだぜ?っていう。


瀬戸
 その認知って1つじゃない?


伊勢谷
 いろんな種類があるよ。でも、僕が言っているのは一番最初の気づき。だから認知革命なんだ。

インターネットや仮想通貨、ブロックチェーン技術を介することによる新たな世界の創出みたいなのは少し考えることもあるし、その片鱗はもう始まっているところがあるけど、ただ「わかんねえな!」と思いながらやってるところもあるよね(笑)。昨日言われたんだ、インターンの子に。「ビッグビジョンとそのプロセスの必要性を理解した上で、プロジェクトを構成している人間ってなかなかいないんじゃないか」と。「そのとおり!」って(笑)。


久志
 それめっちゃわかります。TABI LABOのミッションは「人々を覚醒させる」なんですけど、それってまさに新しい認知をどう作るかということで……。


伊勢谷
 いや、目的は大事なんだよ。目的がないまま覚醒するのは無理。つまりは人類が地球に生き残るためのことを考えたとき、プラネットBはないからさ。そうすると、プラネットAの中でどう生き残るかが現実に考えなければならないことになる。それが実は人間にとって一番プリミティブで、生まれたときから持っているものだと気づくべきなんだけど、その気づきがないんだよ、今の社会に。それが認知ということ。


久志
 その認知のやり方のひとつとして、体感をどう共有するのかということがあると思う。勝さんも伊勢谷さんも、それぞれ方法は違ってもすでに取り組み始めていると思ってて、そのアクションそのものがヤバい。


伊勢谷
 そうなんだ(笑)。


瀬戸
 だけど、別に僕らはヤバいなんて思ってないよね?


伊勢谷
 意外と普通。たまに会って近況報告したりっていう大人な関係だよ(笑)。

久志 伊勢谷さんから勝さんはどう見えてるんでしょう?伊勢谷さんは現実的な社会課題にフォーカスしてるイメージがあるけど、そういう伊勢谷さんから見たときに、もしかすると勝さんのやっていることはぶっ飛んでる感じするんじゃないかって。

 

伊勢谷 なんだろうね。超音波という僕の知らないゾーンから入ってきて、人間にとって何かもっと快適な世界を構築していこうとしてる人だから、そういう意味では久方ぶりに会ったクリエイターなのかなって。

僕はもともと芸大生だし、自分のアングルとして、先に見える世界をテクノロジーでどうこうしようということにモチベーションを見出すのとは違うから、ハッとさせられたところはある。しかも、今のみんなの現実に導入可能なことじゃないですか。ナレッジの共有だけで解決できることがあるという話だから。本当は大きい産業にできるはずなんだけど、そこらへんはやりたいことじゃないのかな。


瀬戸
 いや、ビジネスだとは思ってるよ(笑)。


伊勢谷
 だけど、個人でお話受けて提供するっていうのが多いじゃない?だからちょっとアーティスト的なイメージなんだよね。本来は量産化して、世の中の大企業とかがやるべきことじゃん。でも勝くんはそうしないから。ノリとしては、ヒッピーなんじゃん(笑)?

 

久志 勝さんもヒッピーだ!

 

瀬戸 えっ、僕がヒッピー?そうなのかな(笑)。

TOP PHOTO: ©︎2018 TABI LABO

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。