ジッちゃん。孫の作るどら焼きは、小山で一番攻めてっぞ

たぶん72パーセントくらいの確率で、女子のバッグには「おやつ」が入っています。ちなみに先日私がバッグに忍ばせていたおやつは、コチラ。

全然意識してませんから。
レーズンバターサンド“ラ”

©2018 Etsu Moriyama

素敵でしょ、このギリギリな感じ。

北海道じゃなくて、栃木県小山市にある「ドラヤキワダヤ」さんというお店で見つけました。まるであの銘菓! な、どら焼きです。

北海道土産の定番は、レーズンバターサンド。

ドラヤキワダヤさんにあるのは、レーズンバターサンドラ。

この独特かつナイスセンスな商品を手がける四代目店長・染谷 典(ツカサ)さんに、いろいろと切り込んでいきたいと思います。まずはこちらをご覧ください。

©2018 Etsu Moriyama

「耳元で囁かれたい言葉NO.1  おさつまバター」

 

どゆこと?

©2018 Etsu Moriyama

「そんなお前の為に、三日三晩こすことしか考えてないんだぜ。 こし餡どら焼き」

 

それはやばい。

©2018 Etsu Moriyama

「立てるのは茶だけにしな。 オトナの抹茶どら」

 

こらこら。

©2018 Etsu Moriyama

「味わうんじゃない、感じるんだ。 VRいちご大福」

 

だからどゆこと!?

メニューの参考にしているのは
ずばり、「コンビニ」です

©2018 Etsu Moriyama

 

どら焼きの可能性を、かつてこんなにも強く感じたことがあったでしょうか。いやなかったよね。

 

「商品開発のヒントは、ちょっと怒られちゃうかもしれないかもしれないけど……基本、コンビニです」

 

こ、コンビニ???

 

「はい。コンビニが、僕は発想の集大成なんじゃないかって思ってます。コンビニで扱っているお菓子って、叡智の結晶かなって。おさつまバターも、VRいちご大福ってのも、ヒントになる商品があったんでそういうのを参考にしつつ、うちの従業員さんにも相談して、女子の意見も取り入れながら作りました」

 

いろんなところで材料を見つけてきて、それをどう“どら焼き”で表現するかを考えるのが、染谷さんのお仕事。

 

「ちょっと前は“キットカッドラ”ってのも出してて、あれは怒られ待ちなんすけど、怒られないんですよね」

 

Have a break, Have a KitKaddora.

 

「“ままどおら”って商品も毎年母の日に出してるんですけど、全然怒られないんです」

 

福島県郡山市が誇るアノ銘菓、風! 味は、本家のものが忠実に再現された、福島愛、郡山愛、ままどおる愛溢れる商品だとのことで、毎年母の日の近辺に限定で販売されます。

ちなみに、商品ポップはドラヤキワダヤのスタッフさん作。味わい深いイラスト部分は、染谷さんの知人のイラストレーター・宇都木チエミさんに書いてもらっているそうな。

これは専用ケースです
(どら焼きの)

©2018 Etsu Moriyama
バケッタレザー どら焼きケース(8000円+税/アトリエ正樹)

そして、あまりにもトキメいてしまったこちらもご覧ください。

 

「これ、どら焼きケースなんですけど、レザー職人の友達が作ったんです。彼はもともと自衛隊なんで、ふところに入れとけば防弾にもなる、なんつってね。でも良質なレザー使いすぎて、値段が張っちゃって……」

 

全然売れないんだそうです。

 

「まあでも、作った本人がそれでもいいって言ってるんで」

 

もちろん他のものを入れてもOKなんですが、チャック開けて内側見ると“DORAYAKI”って焼印が入ってたりして、かなりどら焼き向けな気もします。

 

「あ、でも中に入れるのはあんまり分厚くないどら焼きの方がいいですよ」

 

そして基本一個です。

なんでだろう。バナナケースを思い出しました。

©2018 Etsu Moriyama
オリジナルバッグ(税込 1200円/岩田屋)

ちなみにお店の中は、他にも和菓子屋さんとは思えないものがいっぱい。いきなり壁に鹿の頭のオブジェが飾られていたり、オリジナルのイラストが入ったバッグが売られていたり。USEDのレコードをリメイクして切り絵のようにするアーティストさんの作品まで飾ってあったりして、ふと「アレ、ここ何屋さんだっけ?」なんて感覚になるかもしれません。

©2018 Etsu Moriyama

「楽しんでやってるのが
いいかなと思って。by 母」

©2018 Etsu Moriyama

実は老舗和菓子屋さんの四代目でありながら、染谷さんの前職は東京のアパレル企業。

 

「四代目と言っても僕はインチキなんです。かーちゃんの実家が老舗の和菓子屋で、後継さんが亡くなって辞めちゃうっていうんで、どうせ潰れるなら僕も独立して商売やりたいと思ってたし、ラッキーパンチ的にやろうかなと思って

 

そしてもっと和菓子を気軽に食べて欲しくて、食べやすいどら焼きならばどうかと、染谷さんの代からどら焼き専門店にしたんだそうです。

 

「どら焼きだけにする前からバタどらは名物だったんですよ。新しいメニューは、息子が考えていて、私たちも味見はしています」

 

と教えてくれたのは、母・聿(いつ)さん。聞けば、お母さんも昔東京で服飾デザイナーをしていたとかで。初めてお店に来た時から、商品自体の発想はもちろんですが、店内で流れる音楽も、インテリアも、いわゆる和菓子屋さんっぽくないな〜と思っていたけれど、染谷さんのそのセンスの良さは、「かーちゃん」譲りなのかも。

 

「今は息子たちが中心にやってますけど、とにかく楽しんでやってるのがいいかなと思ってね」

©2018 Etsu Moriyama
名物バタどら(180円+税)

でも、こだわるところはこだわりますよ。

製菓用の小麦粉ではなくて、もっちり感、歯ごたえを出したいからあえてのうどん粉、それも、イワイノダイチという栃木県産のものを100パーセント使用したり、卵は佐野の美栄卵という県内産の卵を100パーセント、はちみつも県内産だったり。

 

「一応栃木県産を使いたいなって思ってるんです。あとは、“銅板一文字”っていって、平板の銅板で、全部手焼きで焼いています」

 

上と下から熱を当てて焼くとケーキみたいにフワフワの生地になるけれど、一面からしか熱を与えないで焼くので膨らみも少なく、そのぶん歯ごたえがある昔ながらの感じになるんですって。新しいように見えて、芯の部分は昔堅気。

 

そういえば、いろいろ話を聞きながら店内を見回している時、額に飾られた古い肖像写真を見つけたんですよね。この方、染谷さんのおじいちゃんだそうです。なんとなくだけど、おじいちゃんもすんごいどら焼き焼いてくれそうな面持ち。

あ、せっかくだからワダヤのご先祖様、私からここにご報告申し上げようと思います。孫の作るどら焼きは、確かな味と技法を受け継ぎつつ、今、小山一、いやもしかしたら日本一、攻めていますよ。

ジッちゃんの名にかけて!?

©2018 Etsu Moriyama
©2018 Etsu Moriyama

「ドラヤキワダヤ(間々田店)※今回取材店」

 住所:栃木県小山市乙女3-30-27
営業時間:9:00〜19:00
定休日:水曜日

 

「ドラヤキワダヤ(東城南店)」

栃木県小山市東城南2-36-15
営業時間:10:30〜19:00
定休日:水曜日 

 

TEL:0285-45-6780(*本店直通)
公式HP:http://dorawada.com/
公式SNS:FacebookInstagram

Top image: © 2018 Etsu Moriyama
取材協力:小山市
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。