「料理」という言葉の意味。書籍『「食」から考える発想のヒント』より

外国人シェフ最年少でミシュランガイドの星を獲得した松嶋啓介の近著がおもしろい。食を通した「発想のヒント」が散りばめられているのですが、普段包丁を握らない人にこそ読んでもらいたい一冊です。

以下、『「食」から考える発想のヒント』(実業之日本社)より、抜粋して紹介。立ち読み感覚でドーゾ!

西洋医学と東洋医学のような
アプローチの違い

そもそも、食卓に並ぶ「料理」という単語は、意味を持っていると思いますか?

たとえば野球で、ピッチャーがバッターを立て続けに難なく打ち取る。そのとき、ピッチャーはバッターを簡単に「料理した」と言いますよね。フランスでは「食」に関してもこれと同じで、「料理」は、“物事を適切に処理する”。という意味になります。

一方、日本では「料理」という漢字が表すように、物事の「理(ことわり)」を「料(はか)る」という意味を持っています。これは、土地や気候風土といった、人間にはどうすることもできない「理」を「料り」ながら、自然の恵みをいただいているということを表現しています。

では、料理をつくる「料理人」は、どういう意味になるのか?

フランス料理は「キュイジニエ」=「火を調理できる人」という意味。キュイジニエは、食材をフライパンで炒める、鍋で茹でる、グリルやオーブンで焼くなど、調理の方法を横軸として、弱火にしたり強火にしたり、火の入れ方を縦軸として、その両軸のコンビネーションにより「物事を適切に処理」しています。

対する日本料理では、火入れよりも食材を切るところに重点が置かれています。まず食材をどのように切るかで、その食材がよりふさわしくなるように「物事の理を料って」いるんですね。だから、日本料理の料理人とは「物事の理を料る」人という意味になるのです。

同じ「料理」や「料理人」という言葉も、国を越えると意味も変わってきます。日本人の持つ精神は、すべてにおいて自然に寄り添い培われてきたものなのではないでしょうか。

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