これぞ、パーティー・シティ。ベルリンがメーデーで見せる「らしさ」

ここで紹介したいのは、メーデー(May Day/5月1日)という祝日について。

国や地域によって様々な意味合いを持つが、ヨーロッパにおいては夏の訪れを祝うために盛大な祭典が催される日。別名、レイバー・デー(Labour Day)とも呼ばれ、労働者が権利を要求するためにデモ行進や集会を行う「労働者の日」でもある。

労働者の日としての起源はアメリカにあるが、ベルリンでは左翼、極右といった対立団体による政治的、人権的な訴えを主としたデモや集会が行われ、お決まりのように警察との激しい衝突や暴動が起きるため名物にまでなっている。

デモも本気なら、もちろんパーティーも本気。音楽の街であるベルリンのメーデーが地味なはずがない。

90年代よりマリアンネン広場を中心に開催されてきた伝統的なフェスティバルは、2003年より「Myfest」と称したストリート・フェスティバルとして開催されるようになり、クロイツベルク地区全体がフェス会場と化すようになった。

公園や広場には本格的なステージが、歩行者天国となった道路にはDJブースが設置され、爆音で流れる音楽とともに踊り狂う群衆で埋め尽くされる。

その光景はまるで未だ語り継がれる伝説のレイヴ・パーティー「ラブ・パレード(LOVE PARADE)」を彷彿させる。音が鳴っていれば、それが道路だろうが駅だろうが、たとえ電車の中だろうがどこでも踊りだすのがベルリナーであり、その一体感とクレイジーな盛り上がりこそがベルリンを象徴しているのである。

Club der Visionaere(通称ヴィジョネア、またはcdv)やHoppetosse、Arena Clubをはじめとするベルリン有数のローカルクラブが立ち並ぶエリアのすぐそばの公園Schlesischer busch(シュレージィッシャー ・ブッシュ)内で開催されていたパーティーの数と集客は尋常でなかった。

普段は豊かな森林の中でBBQやピクニックを楽しむ場所であるが、この日はハードテクノやミニマル、オールドスクール・ディスコ、トランスなど小規模ながらも多くのDJブースが登場し、中には人が集まりすぎてDJの頭さえ見えないパーティーもあった。

普段はライブイベントも行なわれているIt’s BARというシックなバーでは、日本人女性DJ、AnriをはじめとしたベルリンのローカルDJたちによるパーティーが開催されていた。

店内の窓際にブースを設置し、外にいるオーディエンスに向けてプレイするというユニークなスタイル。店先には何と3,000人以上もの人集りができるほどの盛況っぷりで夜になっても全く人の減る気配がなかった。

並びのホステルでさえ、全開にした窓にスピーカーをいくつも設置。日本では絶対にあり得ない光景が見れるのもベルリンのメーデーならではだ。

しかし、今年はメイン会場の一つであるGörlitzer Park(ゲルリッツァー・パーク)で入場が規制されるという前代未聞の事態に。クレイジーの一途を辿るかのように思えたベルリンのメーデーだが、逆に商業化されてきているという事実も伝えておきたい。

観光客も多く、子どもも楽しめるストリート・フェスティバルであることは非常に良いことだが、未知の可能性を感じさせてくれるどこまでもディープなパーティーはやはり週末の一部の場所でしか味わえない特別なものなのかもしれない。

Photo by Kana Miyazawa
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。