「パンを編む」に込められた哲学

自分にとって、欠かせない存在とはなんだろう。気のおけない仲間と過ごす時間、お気に入りの詩集、大切な思い出の場所、忘れじの味……。挙げればキリがない。

彼女にとっては、たまたまそれがパンと刺繍だっただけ。

人生に「同じ日」など
ひとつもありはしない

© Terézia Krnáčová
© Terézia Krnáčová
© Terézia Krnáčová
© Terézia Krnáčová
© Terézia Krnáčová
© Terézia Krnáčová

人生は「食べること」と「芸術活動」である。

こう強調するのは、スロバキアのテキスタイルアーティストTeréziaKrnáčová。生きていくうえで彼女にとって欠かせないパーツを針と糸で編んでいくプロジェクト「Everyday Bread」は、その名の通りパンを編み込んだ作品だ。

クロスステッチにネッティング、刺繍はすべて異なる技法で施されている。カンパーニュかあるいはラントブロートか、どちらにしても崩れやすくもろいパンにひと針ひと針。繊細な作業に違いない。

でも、何のために?
なんて野暮な質問はしたくなかった。そこに意味なんて求めたくなかったから。

© Terézia Krnáčová

刺繍なしのスライスが
大切なことを教えてくれる

© Terézia Krnáčová

ところで、7枚のスライスは“一週間”を表しているそうだけど、そのなかに1枚だけ、まったく刺繍が施されていないパンがある。

「これは?」と、たずねてみた。

7枚目は“休日”を表現したという。

どんなに好きで没頭することであっても、週に一度くらいは手をとめ、ゆっくり俯瞰して自分を見るための日を設ける。なるほど、納得。好きなことをなが〜く続ける、その秘訣を聞いた気がした。

Top photo: © Terézia Krnáčová
Reference: Terézia Krnáčová
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。