新しい映像表現「オンナノコズ」撮影の視点

モデル事務所、セントラルジャパンに所属する10代の女の子たちによるプロジェクト「オンナノコズ」のプロモーションを兼ねて行われたのは、マイクロドローンのHD撮影テストだった。

制作をした株式会社シネマレイの代表取締役である増田 勝彦さんが、個人のSNSに映像を投稿すると、瞬く間に拡散されコメントが殺到した。

広々とした屋外で空撮されたものとは、対極的なアプローチをしている。

使用された機体は、プロペラガードを備えた縦横110mm程度の小さなFPV(First Person View)ドローン。

機体を目視するのではなく、ヘッドマウントディスプレイをつけて、カメラを通した一人称視点の映像を見ながら操縦する。

視聴者は、ワンカットで撮影されたとは思えないスムーズさや、目の前を飛ぶドローンをものともしない凛とした女の子たちの表情に驚いた。

撮影した増田さんは、「難しいという感覚はなかった」と話していた。

※別の教室からドローンを操縦する増田さん。

 

──現場の雰囲気はどうでしたか?

 

増田:撮影はすんなりいきました。

使った機体は重さ70グラムほど。香港やベトナムの海外製フレーム、いろいろなパーツを組み合わせてカスタムしました。

2016年からFPVのドローンを操縦し始め、レースやイベントでも使い慣れていました。すき間を縫うようにして撮ることに関しては、難しいとは感じませんでした。

あえて言うなら、難しかったのは桜が見える屋外のシーン。機体が軽いため、風があるとどうしても揺れてしまいます。教室のなかに入ったあとに、窓際にいる女の子に窓を閉めてもらったりと、工夫した部分はあります。

女優さんには、昆虫や蝶々、そよ風が流れていくようなイメージで、マイクロドローンと接してもらいました。

 

──視聴者の反応は予想していたのでしょうか。

 

増田:いいえ、まったく。機材自体も新しくないんです。FPVやマイクロドローン自体はいろいろな場所で使われています。

ただ、被写体が魅力的だったということと、撮り方が新しかったかなと。ドローンは室内で飛ばすためのものではありませんから、狭い場所で撮影するなら、ふつうは手持ちカメラで済むという話になります。そこで、新しい表現を試したかった。

ありがたいことに、国内外からショートフィルムやミュージックビデオの撮影で使いたいという問い合わせを多くいただいています。

 

──FPVマイクロドローンの魅力について教えてください。

 

増田:小さな隙間でも自由自在に飛び回れるところでしょうか。大きいドローンは鳥になったような感覚を、マイクロドローンは昆虫になったような気分を味わえるんですよね。

一人称視点になると操縦しやすさも格段に良くなります。今回のような撮影は、目視ではできません。ドローンのコミュニティでは、いずれFPVと完全自律飛行の二極化が進むだろうという意見もあります。

Tiny Whoopなど、20グラムほどのマイクロドローンなら家のなかでも飛ばせます。練習になりますから、よく家族のまわりをグルグル飛ばしたり、椅子の下をくぐったりしています。

集中して訓練すれば、2~3ヶ月で誰でも飛ばせるようになると思います。

 

──今後はどんな活動を?

 

増田:今回の映像は、売り出し中だったオンナノコズと、テスト撮影をしたいという我々のニーズが合致して成立しました。そのため、産業用の許可ではなく、アマチュア無線4級でドローンを使っています。

5月には産業用の申請をした上で新たに撮影をする予定があります。今後は、映像表現をするツールのひとつとして、マイクロドローンを活かせるあらゆる領域で、挑戦をしてみたいと思っています。

これまではクレーンを使う必要があったシーンも、低予算で撮影できるようになっていますが、あくまでこれは良いものをつくるための手段でしかありません。

アイデアやディレクション経験が豊富な監督さんたちと協力しながら、どんな挑戦をしていけるのかを楽しみにしています。その場の状況や法律など、制限があるときに、じゃあどうすれば良いものがつくれるのかを、一緒に頭を捻りながら考えていきたいですね。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。