童貞は誇り。イケメンの「守り抜いた自慢」に耳を疑うドバイ生活

ドバイ在住のSeiwa Nishidaさんが教えてくれたのは、日本人からするとちょっと不思議な男友達のストーリー。

なんでも、イケメンが童貞自慢をしてくるのだとか(笑)!多くの女性と関係を持ったことがある、簡単に落とすことができる、という自信たっぷりの経験自慢はされることがあっても、その逆を堂々とする文化があったなんて……。


パレスチナ人である私の男友達、ヒシャームは童貞である。他人のプライバシーを公開していいものだろうか、とも思ったのだけれど、バッチリ本人の許可をいただいたので、公開することを決めた。

こちらが聞いたわけでもないのに、とにかく自ら「俺はまだ童貞だ」と公言する彼について。

童貞に誇りをもつアラブのイケメン

そこには何の恥じらいもなく、むしろ誇りを感じている。その証拠に、「俺はそれでも童貞を守った」というエピソードを、何度も聞かせられたことがあるのだ。

イラン美女に家に上がり込み、ベッドまで連れ込まれたものの、一線を超えなかったという話や、アゼルバイジャンのセクシー美女からお誘いがあっても、俺は断った、という話など。

俺はモテる自慢のように見えるが、本人の口調にはそうしたうぬぼれがない。実際ヒシャームはイケメンの部類に入るだろう。

アラブ人だけれど、見た目はヨーロピアンに近い。ヒゲは濃くない。本人は、ヒゲが生えてこなくて悩んでいるようだけれど……。

童貞ではあるが、それでも女子に鼻の下を伸ばしていることは確かだ。その気はないくせに、「セクシー美女から、また誘われちゃったよお」などと言ってるあたり、女に興味があることは間違いない。

童貞を捨てる時は、結婚するとき

それならいっそのこと、童貞を捨てたらどうだ?と私は聞いたことがある。

なにせ、ドバイだ。ヒシャームが以前住んでいたシリアの第4の都市、ラタキヤとはわけが違う。それにモテるのだから、なおさら。

以前は地元で婚前交渉禁止を貫き、お酒とは距離を置いていたムスリムでも、ドバイで都会デビューしてしまう若者もいるらしい。

わからなくはない。日本の東京に比べれば、ドバイは自制がきいた町のように見えるが、いまだに伝統的な価値観が残るアラブ諸国からやってきた人々からすれば、ドバイは渋谷のような場所なのだ。

クラブもある。酒も飲める。世界中の美女との出会いがある。イスラム教の国とは思えないほど、ドバイの夜は華やか。

「俺のムスリム友達でもさあ、酒を飲むやつはいるよ。婚前交渉とかしてるやつもいるし。でも、そいつらの話を聞くたびに、やっぱりろくなことがないんじゃないかって思うんだ」。

な、なるほど……。

私が4半世紀を経てようやくたどり着いた境地に、この男はすでにいたのだ。この瞬間、彼の背後に後光を見た気がした。経験を経ずして、経験した者と同様の境地にいる。

「だからさあ、やっぱり早く結婚したいよ。結婚すれば、子どももつくれるし☆」

そう言って、ヒシャームは積極的に花嫁候補を探すのであった。

日本でも婚前交渉がNGな時代があった?

原則イスラム教では、婚姻関係にない男女の性的関係は認められていない。

セックスをしたければ、結婚をしろということなのだ。彼らにとっては、結婚が童貞、処女を捨てることと同義である。

現代の日本の価値観からすると、保守的に見えるかもしれない。けれども、実は日本でもそうした価値観がメジャーな時期があった。

NHKが公表した世論調査の結果によると、1973年には58%の日本人が婚前交渉はすべきではないと考えていたのに対し、2013年にはその数は21%。逆に愛情があればOKと答えた46%が多数となっている。さらに明治時代まで遡ると、婚前交渉はNGだと考える日本人がさらに多かったことが分かる。

ムスリムの人々の貞操観念は、まるで明治時代の日本人のようではないか?

さらに初婚平均年齢にしても、現在では男女ともに30歳前後と言われているが、明治時代には女性23歳、男性26歳というのが日本における初婚平均年齢だった。一方で国連が2015年に発表した中東諸国における、平均初婚年齢はこの通り。日本の明治時代ほどではないものの、年齢が近いのがわかる。

こうした事実を鑑みると、現代の我々から見たアラブ人ムスリムの“保守的な価値観”というのは、必ずしも遠いものではない。むしろ、我々の過去を振り返るようでもある。


もちろん、アラブ人のイケメンすべてが童貞を守っているわけではない。アラブ人といっても、クリスチャンやドゥルーズなど、イスラム教以外の信仰を持つ人々もいる。

同じイスラム教徒とはいえ、どこまでイスラームの教えに従うかという信仰レベルは、人によって様々なのだ。

Licensed material used with permission by Seiwa Nishida, (Instagram)
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