お国変われば、タマゴサンドもまたそれぞれ

アメリカ人Max Falkowitzが紹介するこの記事がオモシロイのは、それぞれの国ごとに個性あるサンドイッチが登場する点。本来はバラエティ豊富なサンドイッチも、こと“朝食”と名打つと、どこも卵料理が外せないというのは新たな発見でした。

ごく一部、「卵ないじゃん!」なものも登場しますが、まあそこはご愛嬌。リアルな写真でなく、イラストっていうのも想像を巡らせるのにいいなと思いました。

パンとタマゴ、
一日の始まりはこの組み合わせから

おいしいパンがあれば、みんなこぞってサンドイッチをつくる。大げさだけど、世界中の人は誰だって一度はサンドイッチを自分でつくったことがあるはずです。さらに言えば、どこを旅してもその国独自の「朝食サンド」があります。

だって、考えるまでもなくサンドイッチは朝食に最適。特に急いでいるときなんかは、片手でサクッと食べられるのも嬉しいポイント。

さて、国によって違いのある朝食サンド(ちなみにFood52で紹介したサンドイッチも、その数実に4000以上!)ですが、基本的な考え方は一緒。残りものを工夫してサンドできたり、一日の始まりに喝を入れてくれる炭水化物とたんぱく質がたっぷり詰まっています。

ということで、世界10の国々の朝食サンドを紹介したいと思います。

クロックマダム
(フランス)

©Laura Sant

トーストした食パン、モルネーソース、ハム、目玉焼き

単なるハムチーズサンドだって、フランス人の手に掛かれば、フォークとナイフでいただくゴージャスな仕上がりに。王道のクロックマダムをつくるには、トーストしたパンにモルネーソース(ベシャメルにとろけるチーズをかけて)を。その上にハムを乗せ、パンをもう1枚重ねる。もう一手間かけたければ、バター、チーズを足しましょう。

サンドが完成したら、グリルで茶色の焦げ目をつけていきます。ソースがぶくぶくし始めたらできあがり。きちんとしたレシピはこちらから。半熟の卵焼きも乗せないとね。

煎餅
(中国)

©Laura Sant

たたんだクレープ、スクランブルエッグ、揚げたワンタンの皮、海鮮醬、ラー油

中国で「餅」といえば「パンケーキ」のこと。そして、驚くことに何百通りもつくりかたがあるんだそう。パサパサしていてコーティングされた餅もあれば、イーストを使ってふわふわに仕上げたものも。

でも、ここで紹介するのはクレープ状の“煎餅”。北京の朝、屋台に向かえば必ず見かける定番のストリートフードです。

まず、小麦粉でつくられた煎餅を鉄板に流し込み、クレープのように円を描きます。そのうえに卵を割り入れ、広げていきます。通常ここにいろんなトッピングをしたりソースを添えたりして味付けていきますが、主にそれは海鮮醬とラー油。

それから、パリパリ感を持たせるため、揚げたワンタンの皮を使います。これらでクレープを包み、半分に切れば、あらゆる食感と味が楽しめる絶品煎餅のできあがり。

ワンタンの皮が見つからなければ、Mandy Leeの北京食ブログ「Lady & Pups」に倣って、ポテトチップを代用してもいいかも。

ターメイヤ
(エジプト)

©Laura Sant

ピタ、そら豆のファラフェル、きゅうりのサラダ、タヒニ、シャッタ

中東の食卓を語るうえで欠かせないのがファラフェルです。つくりかたは家庭ごとにそれぞれ。エジプトが解釈するファラフェルは、「ターメイヤ」と呼ばれ、通常の丸いボール型にはせず、レンズ豆を潰したような平らな形状。でも、それよりも大きな違いは、中に詰める具材にあります。

ファラフェルといえばひよこ豆ですが、ターメイヤは乾燥し殻を取り除いたそら豆を使います。他のマメ科植物では得られない、独特の香りと味の深みを秘めているんですよね。

エジプトの家庭にお邪魔すると、このターメイヤはもちろんのこと、固い(もしくは柔らかい)チーズとトマトときゅうりのサラダ、それにフラットブレッド、そしてピクルス、オリーブが並べられているはずです。

これを全部ターメイヤに詰めていただくのです。ソースは練りゴマの「タヒニ」。味をマイルドに仕上げるならば、レモン果汁とオリーブオイルを追加。あとは、辛味ソースの「シャッタ」でひとひねり。

ベーコンエッグ・ホットサンド
(アメリカ)

©Laura Sant

サンド用パン、スクランブルエッグ、チーズ、ベーコン

ハムやチーズを挟んだサンドイッチは、北ヨーロッパで長いこと定番としてされてきましたが、卵、チーズ、ベーコンという組み合わせが誕生したのはアメリカ。

イングリッシュマフィンや、カイザーロール、あるいはベーグルなどの朝食用パンにとろけるチーズ、ベーコン、スクランブルエッグ(もしくは両面焼きの卵焼き)。19世紀以降のアメリカで、これが労働階級者たちの定番朝食メニューになりましたが、いわゆる“アメリカンスタイル・ブレックファスト・サンド”と称されるようになったのは、1970年代から80年代初期にかけて。ファストフード店で朝食をこのサンドイッチでまかなう人たちが増えたことから、ちょうどこの頃“定番”として認知されていったようです。

地元でもあるため、ある種のバイアスがかかっているかもしれませんが、この朝食サンドが定着しているのは、間違いなくニューヨークシティだと私は確信しています。なんたって、ニューヨークならどのブロックやスタンドでも簡単に見つけられますからね。

アンダブルジ
(インド)

©Laura Sant

トーストした食パン、スクランブルエッグ(スパイシー)、玉ねぎ、パプリカ

玉ねぎ、パプリカ、それからターメリックなどスパイス数種を入れるスクランブルエッグ「アンダブルジ」は、インド北部、南部、さらにパキスタンを含めポピュラーな料理。そのままでもおかずになるし、ナン、ピタ、その他フラットブレッドに挟んで巻いて食されています。

特にムンバイの屋台でよく見かけるスタイルは、食パンの間にアンダブルジを挟むスタイル。パクチーやミントの葉を一緒に入れて、ホットサンドにしていただきます。こういう朝の始まりもいいでしょ?

アレパ・デ・ウエボ
(コロンビア)

©Laura Sant

揚げたコーンブレッド、半熟卵

このアレパは、中南米版ファラフェルといったところ。どの家庭でもよくつくられる伝統食で、地域によっても違いが生まれます。コロンビアのアレパは、丸いコーンブレッドにチーズなどがトッピングされ、お好みのソースをかけていただくスタイル。

なかでも圧倒的においしいのが、半熟卵を挟んだアレパです。これはカルタヘナというエリアで大人気の朝食屋台フードの味。コツは、コーンブレッドを“二度揚げ”にする点。まずは8割がた火を通しておいて、仕上げにアレパを広げて揚げて、生卵を割り入れてから閉じて完成させます。

ソースはスパイシーなものを。カフェラテを合わせれば、これだけで最高においしい朝食になりますよ。

サビフ
(イスラエル)

©Laura Sant

ピタ、揚げナス、ゆで卵、きゅうりのサラダ、タヒーニ、アンバ

ファラフェルサンドからファラフェルを取り出して、厚みのあるジューシーな揚げナスとゆで卵を入れれば、「サビフ」のできあがり。これは、イスラエルに根を下ろしたイラクのユダヤ人たちが、安息日前に食べるものとして用意したフードなのだとか(中には、安息日の間は働くことを禁じる人も。コンロで何かを調理するのは"働く"のうちに入るので、禁止。ですが、すでにあるものをサンドイッチに挟むくらいならいいそう)。

主にイスラエルで見かけるサビフですが、面白いことにこちらは“誰のもの”ともされていない、中東のソウルフードだそうです。

半熟卵とナスは、この辺りに暮らすアラブ人やユダヤ人にはポピュラーのようで、サビフにパンチを効かせるアンバ(ピクルスにされたマンゴーにターメリックをプラスしたソース)は、南アジアが起源とされているそうです。

トーストゥ
(韓国)

©Laura Sant

バターを塗った食パン、野菜のオムレツ、ハム、チーズ、砂糖を少々

韓国で人気の朝食サンドは、フュージョンとも捉えられる「ストリートトーストゥ(トースト)」。食パンにバターを塗って、砂糖をふりかけ、野菜がたっぷり入ったオムレツを挟むというもの。

オムレツの上には、ハムやとろけるチーズを載せたり、ケチャップとマヨネーズで味付けしてあります。千切りキャベツ、玉ねぎ、にんじんを入れたオムレツはカスタマイズ可能で、数あるトッピングの中から好きなものを入れるのがスタイル。

それにしても、砂糖をふりかけるとはなんともフシギでしょ?でも、まずは黙って試すのみ。もともと韓国には、“甘さ”を大事にする料理文化があり、なんでも砂糖をプラスすることで卵の味が際立つんだそう。

名前は文字通り「ストリート」で食すことから。けれどホームメイドも大歓迎。冷蔵庫にちょっと余った野菜を使い切るにも、この野菜オムレツがもってこいなんでしょうね。

トルタ・デ・ウエボ・コン・チョリソ
(メキシコ)

©Laura Sant

トーストしたロールパン、チョリソー入りスクランブルエッグ、フライドビーンズ、アボカド、チーズ

アメリカンフットボールのような楕円形をしたロールパンでつくるサンドイッチを、スペイン語でトルタと言います(詳しいメニューが欲しい人はクリック)。本来これはメキシコのランチメニュー。ですが、これにもちゃんと朝食バージョンが。

朝食用のトルタには、スパイシーなチョリソが入ったスクランブルエッグに加え、リッチなトッピングが。切れ目を入れた側を下にしてトーストし、マヨネーズを塗ります。そこにフライドビーンズ、チョリソたっぷりの卵、あとはクラシックでもモンテレージャックでも、お好きなチーズを挟み、アボカド、ハラペーニョのピクルス、あとはトマトを入れたら完成!

どうです?このサンドイッチがアメリカに暮らすメキシコ人コミュニティにまで広まったのもわかりますよね。

ボカディージョ・ディ・トルティージャ
(スペイン)

©Laura Sant

ボリヨロールパン、スパニッシュトルティージャ

スペインのほぼどこでも味わえるトルティージャ(スペイン風オムレツ)。南セビリアから北バスクまで、いつ何時でも口にできる、まさに万能フード。ここで使うオムレツには、2.5〜5センチ程度の厚みをもたせたもの。通常、オリーブオイルでソテーしたポテトやパプリカ、玉ねぎ、あとは塩漬けのタラが入ります。

常温でおいしくいただけるトルティーヤ。冷蔵庫の余りものでできることもあり、スペインのバルではスタッフがあらゆるものをボリヨロールに詰めているのを見かけるはずです。

けれど、ボカディージョ・ディ・トルティージャは、厳密に言えばロールパンにトルティージャを載せたもの。ソースなし、トッピングなし。大したことなさそうなんて甘く見ていたら、かぶりついた瞬間ビックリするはずです。

Written byCory Baldwin
Top image: © Laura Sant
Licensed material used with permission by Food52
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。