金属加工の匠がつくる「15分以上回るコマ」の秘密

随分きれいだなー、と見とれてしまった金属製のコマがある。手に取ろうとしたら、バチっ!と指が弾かれて驚いてしまった。

回転してることに気づけないほど静かに、じっとまわっていたのだ。

とくにこの『still-gray』に注目。YouTubeには、15分以上回り続ける様子が投稿されている。ちなみに、このコマの見どころは、長時間回るところだけではない。見ているだけで心地良い。

調べると、2013年に開催された、第2回全日本製造業コマ大戦(大人がプロの技術を使って戦う喧嘩コマの大会)の優勝作『ZION』のDNAを受け継いでいるものだとわかった。

そんな百戦錬磨をイメージするような屈強さは感じず、むしろ洗練されているのだが。

つくり手は、航空機部品の金属加工などを40年以上行ってきた町工場。有限会社シオンが新しく立ち上げたブランドだ。

同ブランドにはコマ以外にも様々な製品がある。

どれも見ていて感じる気持ちよさや、触れたくなる感情を考えてつくられている。質感に見とれたり、使っているときの状態に快感を覚える。

NEIGHBORは隣人という意味だ。隣の人にあげたときに喜んでもらえるもの、という気持ちが背景にある。

野花や実の付いた小枝を飾れる

一見何かわからないステンレス削り出しの製品
蓋をかぶせていると灰皿に見えない

ケースだけで特別感が出る

カバーを閉めるときにスーッと空圧を感じる
その密閉感が気持ち良い

マグネット付きの画鋲
写真、ポストカード、名刺などに穴を開けずに飾れる

『ZION』や『still-gray』の開発者であり、有限会社シオン代表の山田 健(やまだ たけし)さんにお話を聞いた。

 

山田「ぼくらのような業界は受託仕事が基本です。例えば、図面が来たら、その通りつくるだけ。設計しているわけではなく、その通り削る技術があるだけ。だから、大手の下請けである中小企業が自社製品をつくるケースは少ない。でも、職人が持つものづくりへの欲求はとても強い」

 

有限会社シオンは、全社員デザイナー化を目指しているという。デザイナーを呼んで定期的に講習会を開いているそうだ。

デザイン、設計、試作、量産までを社内で完結させてものづくりをしている企業はなかなかない、と山田さん。

 

山田「つくりたいという気持ちや、加工技術は持っていても、デザインの技術はなかったんです。パッケージやシールはどうすればいいのか?どんなお店に置けばいいのか?値段設定は?そういったハードルも多く、なかなかできなかった。やりたいと思っている職人がほとんどだと思いますが、デザインセンスがないといけません。世の中に必要なものは、もうすでに溢れているわけですから」

 

始めたばかりの頃は、社員が良いと思ったものや機能優先のもの、こんなものがあったらすごいだろう、という意識でつくられるものも多かったという。

それが、徐々に使い手の感性に届くようになってきた。

0.01ミリを追いかける世界の技術者が、心地良いものづくりとはなんだろう?と真剣に考えぬいた末にたどり着いた結果のひとつが、NEIGHBOR & CRAFTSMANの15分以上回り続けるコマだった。

ついうっとりと見とれてしまうあの心地良さは、時間が経ってもなかなか頭から離れない。

Licensed material used with permission by NEIGHBOR & CRAFTSMAN
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。