あえて「危険ドラッグの使用」を見逃す施設が、サンフランシスコにできるらしい。

2018年7月までにサンフランシスコが、ドラッグ中毒者のための“ある薬物注射施設”をオープンすると、「San Francisco Chronicle」が報道しました。そこでは、一時的にドラッグを使用しても見逃されるそうです。そして、HIV感染予防のための無菌注射器が置かれ、過剰摂取をした場合に救命措置のできるナースが常駐する予定なんだとか。

しかも、使われる想定のドラッグは、ヘロインやコカイン、メタンフェタミンなど、依存性の高いものばかり。だけど、その使用を勧めているわけではありません。

「だったら、なんでそんなことをするの?」と疑問を抱く人も多いでしょう。

どうやら、薬物中毒を厚生するための【ハーム・リダクション】という対策を踏まえての開設のようです。

死亡者が35%減少?

そもそも欧米に比べて、日本では薬物中毒者の数が少ないので、ハーム・リダクションの知名度は高くありません。だけど、アルコール依存症やニコチン依存症の治療のために、この対策がとられることも。

それを恋愛にざっくりと置き換えれば、「浮気は見逃す、でもお願いだから別れないで」なイメージ。すぐに止めるのは無理があるから少しずつ直してもらおう、という譲歩ともいえます。

国際ハームリダクション協会」は、ドラッグ使用にともなう危険性を最小限化する対策と説明しています。つまり、強制的に薬物をとりあげても禁断症状や再犯の恐れがあるから、ある程度の行為をとりあえず見逃して、HIV感染や心肺停止などの防げるものは防いでおこうということ。

だから、サンフランシスコをはじめとした、ニューヨークやシアトルが、このハーム・リダクションを踏まえて、薬物注射施設をオープンする計画を立てているようです。

話を恋愛に戻しましょう。

パートナーと別れたくないから浮気をさせようと思ってる、と友だちから相談を受けたら、反対する人もたくさんいるでしょう。「浮気を一度認めたら、何回も繰り返すよ」や「なんで付き合っているの?」といった具合に。

ハーム・リダクションについても、「ドラッグの使用を助長するだけだ」や「犯罪者をなんで助けるの?」などと、同じような意見が寄せられています。さらに、開設にともなって、ドラッグ中毒者が集まり、治安が悪くなってしまうと、懸念する近隣住民もたくさんいるそうです。

なかなか多くの人の理解を得られないハーム・リダクション。だけど、2003年にカナダでオープンした薬物注射施設「Insite」によれば、ドラッグの過剰摂取による死亡者の数は35%減少したとのこと。その効果は、徐々に証明されつつあるようです。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。