「パン屋だから」撮ることができる写真がある。

「パン屋なのに、パンの写真が少なくってごめんなさい」

埼玉にある自家製酵母のベーカリー「タロー屋」のInstagramには、こう書かれている。

バラの花、ラベンダー、金木犀、ゆず、りんご...。タロー屋では、季節折々の自家菜園の素材で酵母を起こし、その酵母でパンを焼いている。だが、ここで注目したいのはパンではない。

明け方の写真が多い理由。

18:00に厨房に入り、翌朝の6:00までパンを焼くという昼夜逆転の生活を送る店主の星野太郎さん。酵母が活発になるベストのタイミングに合わせるため、約半日がかかりで焼き上げるパンもある。

やりがいはあるのですが、根つめて厨房にこもっていると、広いところで息を吸いたくなってしまって。

パンを焼き上げたあと、星野さんはカメラを抱えて厨房を出る。まだ日が昇りきらず、夜とも朝とも言えない時間。家の周りの畑や、景色を見渡せる広い丘で、その風景を写真に収める。そこに写っているのは、普段あまり目にすることのない「まだ夜の顔が残る景色」。

「写真は、自分にとって精神的な安定剤みたいなもの」と星野さんは話す。タロー屋のパンは、そんな写真があるからこそ生み出すことができる味なのだろう。

Licensed material used with permission by タロー屋(HP), (Instagram)
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。