沖縄で衝撃の民謡ライブ。「まさかやぁ〜」のケン坊さんの三線はパンクだった

沖縄取材、3日目の夜。コンビニでお金をおろしてから向かったので、他の撮影クルーより遅れて店内へ。

階段をのぼって店内を見渡すと、そこには男性器をモチーフにした50cmくらいのオモチャを触りながら、明らかに異様なオーラを放っている男性の姿。目の前には、先に到着していたスタッフが正座をしていました。

「おい、足くずせよ」

おもむろにそう語りかける男性。優しさが逆に怖い。もしかしたら“やばいところ”に来てしまったのかもしれない。

—— その男性こそ、この記事の主役「ケン坊さん」でした。

ケン坊さんが教えてくれた
男女のこと、人生のこと
沖縄のこと

地方出身の僕には、ひとつ「あるある」がある。かわいいあだ名+さん付けの人はだいたい怖い、というもの。

もちろんケン坊さんもすぐさまそこにカテゴライズされたんですが、名刺を渡した瞬間

「なんだ、お前もケンジか! 一緒だな」

と、顔をクシャっとして笑ってくれました。

本名は、安里賢次(あさと・けんじ)さん。沖縄・那覇市の平和通りにある民謡ライブの店「まさかやぁ〜」のマスターです。波乱万丈な人生経験から語られる説法と、家族3人で演奏されるライブを聞こうと、足しげく通うファン多数。

そんなケン坊さんには、小指がありません。かつてアウトローな道を歩んだ時期もあった。だからこそ、語れることがある。パワフルな三線さばきは、音楽にうとい僕でも十分に圧倒されるものでした。

 

席についたら、淡々と語りかけるように始まったケン坊さんの説法。うねりを見せながら、ときに笑いと下ネタを交えながら、グイグイ僕を引き込んでいきました。 

浮気について。
いい女について。
家族について。
喧嘩について。
お酒について。
歴史について。
政治について。
プライドについて。
優しさについて。
親子について。

—— そして、沖縄について。

ケン坊さんの話には、ウソや飾りがない。それはきっと、イヤというほど人間の生々しさを目の当たりにして、自分自身の強さも弱さも、すべてさらけ出してきたから。

「そんな、聖人君子みたいなやつはどこにもいないよ。娘が連れてきた男がダメなやつだったら…? 金持ちだろうが金がないやつだろうが、それが本気になった相手だったらどんなやつでもいい。応援するよ。でも、手をあげるようなやつだけは絶対に許さん。俺が×××しにいくよ」

 (↑注:聞き取れないレベルの方言が発動)

「喧嘩もするだろうし、浮気もするだろうし、不良にもなるだろうし、酒にも溺れるだろうし、人間なんてそんなもんだ」

「本当に苦しいときは逃げればいい。なんのために生まれたんだ?」

「めんそーれの本当の意味を知ってるか?」

「他人の目なんか気にするな。服なんて自分の好きなものを着ればいい。家族は2〜3歩うしろで他人のフリしてるけどな(笑)」

 

言葉は、いろんな角度で飛んでくるけど、いちいち力強い。

最後は、踊る踊る!

民謡ライブは、もっと軽やかなものを想像していました。でも僕が「まさかやぁ〜」で体験したのは、激しい太鼓に合わせた、パワフルでエネルギッシュで、腹の底からズンズンくるような興奮。

 

冒頭の、ビクビクしていた僕はなんだったのだろう。ケン坊さんはただただ熱くて、優しかった。つまり「パンク」だったんです。

「今度は取材じゃなくて、プライベートで遊びにこいよ、ケンジ」

そんな何気ないひとことにも、グッときてしまいました。

本気で人生に悩んだときや、ちょっと疲れたときには、飛行機に乗ってでも「まさかやぁ〜」に飲みにいこう。

「まさかやぁ〜」

住所:沖縄県那覇市牧志3-1-22 呉屋ビル3F
電話:098-863-9298
定休日:日曜日

Photo by JAPAN LOCAL
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。