し、し、し、知らなかった...!! ホステルとゲストハウスの違い

先日JAPAN LOCALで紹介した、お菓子だらけのホステル『TRIP POD FUKUOKA』。このホステルについてビー編集部と何気なく雑談していたときのこと。

事件は、唐突に幕を開けた。

ビー「ねえ、気になったんだけどさ」
林田「なんですか?」
ビー「ホステルって、ゲストハウスとどう違うの?」
林田「え……それは、なんか、こう(JAPAN LOCAL編集部を見渡し助けを求めるも、みんな無言)」
ビー「B&Bとは何が違うの?」
林田「え、だから、それは……」

答えられなかった。

私は、ホステルにも、ゲストハウスにも、B&Bにも泊まったことがある。普段は「このゲストハウスおもしろいですね」「ローカルフードを味わえるB&Bですよ」とかなんとか言いながら仕事をしている。

なのに、その違いについてまったく知らない。これは危機である。

宿の定義って、法律的に定められているものなの? それとも曖昧な境界線の上になんとなく成り立っているものなの? わかりかねたので、とりあえず【ホステル ゲストハウス 違い】で検索。でも、公式見解もなければ、公式見解なんてないという情報もない。

(……かくなる上は。)

私は覚悟を決めた。

他力本願だっ!!

Booking.comに訊くしかない!

Booking.comは、世界最大規模といわれる旅行ECサイトだ。229の国・地域にある、150万軒・2500万室以上の宿泊先を検索・予約できる。旅行や出張で、利用したことがある人も多いのではないだろうか。

Booking.comの絞り込み検索には「宿泊施設タイプ」という欄がある。そこでは、(今回私たちの事件の発端となった)ゲストハウス、ホステル、そしてB&Bはもちろん、ホテル、旅館、アパートメントなど、あらゆる宿のタイプが並んでいるのだ。

宿泊施設も、Booking.comの支社も、これだけの数があるのにここまできちんとカテゴライズされているということは、何か情報なり定義なり、持っているはず!

でも、ぶっちゃけ相手にされないと思っていた。だって相手は世界のBooking.com。

しかし、そのわずか2時間後。なんと、Booking.com広報担当部長の岩崎健さんから返事が返ってきたのだ! さらには、取材の時間までいただけることに。なんと親切なことか!

というわけで、宿泊施設の定義ってどうなってるの?という疑問をぶつけてきました!

根本的な話、訊いてみた!

——今日はお時間ありがとうございます! 宿泊施設の定義や、Booking.comではどうされているのかなど、いろいろ聞かせてください。

岩崎:よろしくお願いします。

——宿泊施設の定義について、私も自分なりにいろいろ調べてきたのですが、そこで旅館業法という法律があると知りました。

岩崎:旅館業法は、ライセンスというイメージですね。宿を営業するときにどのカテゴリのライセンスをもらうか、というためのものです。

——でもそのカテゴリって、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の4つしかないんですよね。そしてそれぞれに、設備や面積について規定があるという。

岩崎:そうです。なので、「民宿」「ペンション」というな名称はあくまで通称で、旅館業法で定められているものではないんです。また、「カプセルホテル」はホテルとついていますが、旅館業法上ではホテル営業ではなく、簡易宿所営業に分類されます。

簡易宿所営業は、「宿泊する場所を多数人で共用する構造および設備」での営業を指すので、ホステルやゲストハウスはこれに当たります。

——法律上で、「ゲストハウスはこれ」「ホステルはこれ」というような定義もないということですよね。

岩崎:その通りです。

——そのなかで、Booking.comの「宿泊施設タイプ」ももちろん4種類であるはずなく、ホームステイや別荘まで多種多様です。これはBooking.com独自の分類ということですか?

岩崎:はい。Booking.comは1996年にアムステルダムで創立した企業です。グローバルでの定義は、すべてアムステルダムの本社で決められています。したがって、Booking.comで定めている宿泊施設の定義は、必ずしも日本の旅館業法と一致しているわけではありません。

——宿泊施設の定義は、どのような基準で決めているのでしょうか。

岩崎:やはり、大事なのはお客様の目線だと思っています。仮にオーナーさまから「ホテルにカテゴライズしてほしい」とご要望があったとしても、自分がお客様目線に立ったときに「これは旅館だ」と感じる場合は、営業担当とコンテンツチームのメンバーで再度検証させていただき、一度お話させていただくことになるかと思います。

——基本的にはBooking.comの定義にそって振り分けていくけれど、イレギュラーな案件はそのプロセスを踏んで、フレキシブルに対応していくということですか?

岩崎:その通りです。Booking.comは外資系企業なので、その時点でディスアドバンテージがあると感じていますし、日本国内での認知度はまだまだ低いと思っています。そのため、今国内には120名ほどの営業担当がいますが、彼らはできるだけ宿泊施設のオーナーさまと対面でお話させていただき、密なコミュニケーションをとれるよう努めています。

例の件、訊いてみた!

——では、具体的に宿泊施設ごとの定義をうかがっていこうと思います。まずは私が一番気になっている、ゲストハウスとホステルの違いについてお願いします。

岩崎:ホステルは、宿泊客同士の交流の場がある低予算型の宿泊施設です。また、ドミトリールームがある場合が多い、としています。

——低予算というのは予想していましたが、宿泊客同士の交流の場というところも定義に入っているんですね。

岩崎:最近は、空きビルをリノベーションしたおしゃれなホステルも増えてきましたよね。そういうところは、1階がカフェやバーになっていることも多く、宿泊客同士でコミュニケーションをとる場が設けられています。イメージ的にはこんな感じでしょうか。

——まさしくホステルのイメージです。

岩崎:また、ホステルはちゃんとフロントがあるのもひとつの特徴としています。ゲストハウスは、ホテルのような、24時間対応のフロントサービスは提供されていない場合も多いですから。

一方で、部屋自体はとてもシンプルだというのも、ホステルのイメージかと思います。

——なるほど。確かに、ホステルのドミトリーは、2段ベッドがずらりと並んでいるイメージです。

——さきほど少し話に出てきましたが、ゲストハウスはどうでしょう。

岩崎:ゲストハウスは、小規模の宿泊施設で、家族経営の場合が多いと考えています。さきほど話に上がった、ホテルのようなフロント機能は提供されない場合が多いというのはそのためかと思います。

——家族経営という定義は少し意外でした。ホステル寄りのゲストハウスも多いように思います。

岩崎:これらの定義は日本というより、アメリカなど海外のゲストハウスのイメージに近いのです。2〜3階建てくらいの家のなかに、さまざまなタイプの部屋がある感じでしょうか。 

——おお、なるほど! ちなみに、B&Bにも似たようなイメージでしょうか?

岩崎:B&B小規模の宿泊施設という定義は同じです。ただ、B&Bではオーナーがゲストと同じ建物に居住している場合が多いのですが、ゲストハウスはそうではありません。

——一緒に居住していない場合が多いと。

岩崎:そうです。そのほか、B&Bでは朝食が提供される場合が多いことも特徴ですね。何せ、Bed and Breakfastの略ですから。

◆まとめ◆

ホステルは...

・低予算型の宿泊施設

・ドミトリールームの場合が多い

・宿泊客同士の交流の場がある場合が多い

ゲストハウスは...

・小規模の宿泊施設

・オーナーはゲストと同居しない場合が多い

・オーナーはゲストと設備を共有しない場合が多い

・ホテルのようなサービス(24時間対応のフロントなど)がない場合が多い

B&Bは...

・小規模の宿泊施設

・オーナーはゲストと同居する場合が多い

・オーナーはゲストと設備を共有する場合が多い
・朝食が提供される場合が多い

ついでに訊いてみた!

——ホテル、旅館などの、いわゆる「簡易宿所」ではない宿泊施設はどうなっていますか?

岩崎:ホテルは、人が泊まるためのさまざまな設備が備わる商業施設としています。ゲストに快適に過ごしていただくためのサービスやアクティビティ、また、施設の機能性自体にも言及しています。

——なるほど。館内のレストランやバー、ルームサービスもこれですよね。旅館はどうですか?

岩崎:旅館に関しては、布団での宿泊を提供するというところがひとつの定義になっています。旅館業法での区別はホテル=洋式、旅館=和式ですが、これはBooking.comとしての定義なので、必ずしも日本の旅館業法と一致しているわけではありません。

——そもそも旅館が日本独自の文化ですからね。ビジネスホテルはどうですか?

岩崎:実は、ビジネスホテルも日本独自のものなのです。

——そうなんですか?

岩崎:はい。ビジネスマンが出張先の宿泊に利用するため、シティホテルのようなフルサービスというよりは、もう少し簡易的なサービスを提供しているイメージでしょうか。

——確かに。あと、都市部のビジネスホテルは、駅前に建っているイメージもありますね。

岩崎:そうですね。

——こう話していくと「そういうイメージだよね」「なんかわかる!」という気持ちになるのですが、その共通感覚をひとつひとつ言語化して定義づけするのってとても大変ですよね。

岩崎:おっしゃる通り、大変ですね。曖昧なものもありますから。

Booking.comでは、オーナーさまに「25枚くらいは写真を入れてください」とお願いしています。「思っていたのと違った」というような誤解を招かないためにも、特に写真での説明をとても大切にしています。

45枚以上の施設画像が掲載されているアートテル アムステルダム

——私も普段よくBooking.comを利用させていただいているんですが、写真が多いのですごく安心します。

岩崎:ありがとうございます。

もっと訊いてみた!

——旅館やビジネスホテルは、主に日本ならではの宿泊施設でしたが、逆に、日本人にあまり馴染みがないおもしろい宿泊施設はありますか?

岩崎:アムステルダムでは、船上ホテルが人気なんですよ。

——船の上のホテルですか?

岩崎:船を用いた宿泊施設で、小型船を1隻貸し切るようなかたちのものや、大型船の場合は、複数の船室をもっているものもあります。 

岩崎:オランダは、国土の26%が海面下で、ヨーロッパの主要河川であるライン河、マース川、スヘルデ川によって地形が形成されているので、船上ホテルのようなおもしろい宿泊施設があるのだと思います。

個人的におもしろいと思っているのは、ボーテルという船上ホテルです。

岩崎:スタンダードルームもあるのですが、船の上に付ついている「B」「O」「T」「E」「L」もそれぞれ客室になっていて、客室ごとにデザイナーも異なります。 ちなみに「L」の客室は、現地に住んでいる日本人デザイナーによるものなんですよ。日本人には少しラブホテルっぽく見られてしまうこともありますが(笑)。

——確かに(笑)。でも、運河の多いオランダならではの宿泊施設で、おもしろいですね。

岩崎:ほかに、日本ではなじみのない宿泊施設でいうと、シャレーなんかはおもしろいんじゃないでしょうか。

——シャレー?

岩崎:シャレーは、別荘の一種ですね。木造の独立型住居で、部屋単位ではなく、一軒まるごと貸し出されます

——このホリデーパークというのも気になります。

岩崎:これは、複数のユニット(客室のある建物)が共有の敷地内にある宿泊施設です。

岩崎:ホリデーパークは、プールやフロントなどの共用施設・設備がある場合が多いですね。この写真のケアンズのホリデーパークでは、バーベキュー施設を利用できるほか、ツアーデスク、ランドリー施設も備えています。

——本当にいろんな種類の宿泊施設があるんですね。今、いくつくらいのカテゴリーがあるんですか?

岩崎:世界では30、日本では20くらいかと思います。

——そんなにたくさんあるんですね。

岩崎:そうなんですよ。そのなかには、ホテルのように全世界である程度共通イメージがあるものもあれば、先ほどご紹介したもののような、その土地ならではのユニークなものもあります。ぜひ見てみてくださいね。

あのことも訊いてみた!

——民泊新法(※)が今年の6月に成立しました。

※民泊新法:正式名称は住宅宿泊事業法。旅館業法の4形態のどれにもあてはまらない民泊サービスについて、宿泊させる日数が年間180日を超えないように規定する法律。2018年6月15日より施行される。所持している物件を民泊として提供する場合は、住宅図面や誓約書などを事前に都道府県知事に届け出る必要がある。

——Booking.comの物件にも、いわゆる「民泊」と定義されうるものはありますか?

岩崎:Booking.comでは、世界中で約150万軒の宿泊施設が登録されていますが、その半数は「バケーション・レンタル」という呼び方をされています。日本語でなかなか的確な表現が思い浮かばないのですが、バケーションの間にステイする貸別荘というイメージでしょうか。例えば海外では、部屋ごとにオーナーが違うんだけれども、フロントは1ヶ所で、委託先が応対してくれるようなコンドミニアムがありますよね。そういったものがバケーション・レンタルの一部です。 

——この「バケーション・レンタル」のなかには実質、民泊サービスと同等のものがあるということですよね。民泊新法が施行されることで、これまでの登録施設に影響がある可能性はあるのでしょうか。

岩崎:可能性はあります。きちんと届け出ているか、そしてライセンスを所持しているかなどを確認し、その結果、登録を取り消す場合は出てくるかもしれません。

現時点では、Booking.comはオーナーさまにライセンスの提示を義務付けているわけではありません。「ライセンスを所持している」という誓約書にサインをしていただいた上で、登録に至る場合が多いです。しかし、民泊新法の施行に伴い、今後の登録プロセスについては要検討だと考えています。

最後に訊いてみた!

——民泊が世界的に広まったことに象徴されるように、旅のスタイルは年々多様化してきているように思います。そのなかで、Booking.comから見たユーザーの傾向はありますか?

岩崎:安く快適に、そして、おしゃれな場所に泊まりたいという人が多くなった印象を受けます。例えば京都だと、4〜5年前まではホテル、ビジネスホテル、旅館がメインでした。しかし最近はおしゃれなゲストハウスやホステルが増えてきています。

——それは何が理由なのでしょうか。

岩崎:東アジア(韓国、中国、台湾、香港)からの訪日外客数が増加したことが一因だと思います(※)。

※日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2006年に5,415,293人だった東アジアからの訪日外客数は、2016年には17,470,571人に。10年前と比べると323%、12,055,278人増加した。また、2017年10月のデータでは、訪日外客数(2,595,200人)における東アジアのシェアは72.3%を占める。

岩崎:そのなかでも、韓国の方々は割と安めの施設に泊まることが多いです。それは、ショートステイで来ること(※)、リピーターが多いことなどが理由に挙げられると考えています。 

※日本政府観光局(JNTO)の統計によると、「国別の訪日外国人観光客の特徴」(2016年)では、韓国人観光客の平均滞在日数は4.5日で、もっとも少なかった。

——今年話題となった書籍『世界一訪れたい日本のつくりかた』(デービッド・アトキンソン著)では、観光予算の最大25%は宿泊費だという事実などを理由として、「5つ星ホテルを増やそう」という意見も書かれていました。Booking.comとしては、その方向性についてはどのように考えていますか?

岩崎:もちろん、5つ星ホテルが増えるのは宿泊施設の多様性にも繋がりますし、とてもいいことだと思います。また、先日福岡でセミナーを開催したのですが、福岡に5つ星ホテルがないこともあり、その質問は多く寄せられました。

しかし、社内のデータからすると、福岡には東アジアからいらっしゃる方々が泊まりたいと思うようなホステル、ゲストハウスが足りておらず、そちらのほうが急務だと感じています。これは4〜5年前に京都で起きたことと同じです。今日本には、いろいろな方がいらっしゃるのに、その方々が求めるような宿泊施設が足りていない地方都市がある。まずはその事実に向き合いたいと思っています。

1泊3500円のホステルやカプセルホテルが売れたところで、経済インパクトとしては小さいでしょう。しかし、そこにニーズがあり、また、リピーターもいる。Booking.comはそもそもがヨーロッパ・オリジンで、バックパッカーの文化について理解があると思っています。なので、そこは大切にしていきたいところですね。

——なるほど。仮に5つ星ホテルが計画されても、それが建つまでに観光客はどんどん押し寄せるわけですから。特に急務という意味では、ホステル・ゲストハウスが必要とされていることは納得です。

岩崎:また、さきほど多様性という話がありましたが、例えば1泊目はカプセルホテル、2泊目以降は外資系のラグジュアリーなホテルに泊まるというユーザーもいらっしゃいます。

——カプセルホテルも日本独自の文化ですよね。体験してみたい、という方がいらっしゃるんですね。

岩崎:そうですね。Booking.comは、高級なホテルも、低予算型の宿泊施設も同じプラットフォームにあります。宿泊の予定を自在に組み、一括で管理できるので、自分のスタイルに合わせて自由に使っていただければうれしいです。

——ついテンションが上がって、宿泊施設以外の定義についてもたくさん訊いてしましました。本日はありがとうございました!

岩崎:こちらこそ、ありがとうございました。

Licensed material used with permission by Booking.com
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