「生きろ!生きろ!生きろ!」88歳の映画監督からの魂のメッセージ

アレハンドロ・ホドロフスキー。カルト映画の巨匠とされるチリ出身の監督は、今年、88歳を迎えた。とはいえ、この年齢になっても精力的に映画をつくり続ける姿は、世界中を熱狂させている。

本作品『エンドレス・ポエトリー』のベースとなっているのは、ホドロフスキー自身の自伝。前作『リアリティのダンス』の続編となる本作は、青年時代のストーリー。チリの首都サンティアゴへ舞台を移し、様々な芸術家たちとの刺激的な出会いの日々が描かれている。その手法は、虚実入り交じったマジックリアリズム。夢と現実が交錯したような独特の映像は、唯一無二の存在だ。

詩人からの素晴らしい言葉

「歳をとることは屈辱じゃない。たとえすべてを失っても、君は輝かしい人間になるのだから」

この言葉は、ホドロフスキーが影響を受けたといわれる偉大なるチリの詩人ニカノール・パラのもの。彼が存命中に、ホドロフスキーは出会いを果たすことになる。そして、当時、101歳のパラに対して「その歳で、素晴らしいことはなんですか?」という質問を投げかけると、このように答えてくれたという。

ホドロフスキーの人生にとても大きな意味を与えてくれたこの言葉は、実際、本作の中でも台詞として使われているほど。同時に、このポジティブなメッセージは、僕たちの心にもしっかりと届けられる。

順風満帆ではなくても
「生きる」ことを諦めない

もともと、ホドロフスキーの名前を世に知らしめたのは、『エル・トポ』という作品。映画を観たアンディ・ウォーホールやデニス・ホッパーたちは、大絶賛した。その世界観にすっかり虜になったジョン・レノンは『エル・トポ』と次作の『ホーリー・マウンテン』の配給権を45万ドル(約5,050万円)で買い取った。そんな逸話も残っている。

しかし、その後、ホドロフスキーは、大きな困難にぶつかることになる。1995年、息子のテオを交通事故で亡くしたのだ。その後、しばらくは、映画を製作する意味を見失っていた。ようやく前作『リアリティのダンス』の中で家族を再生して、再び、映画に向かい合うようになったとのこと。23年ぶりにカムバックした際には、世界中で大きな話題となった。

今、ホドロフスキーのファンは全世界にいる。それは、順風満帆ではない人生でも、決して「生きる」ことを諦めない哲学にあるように感じるのだ。

世界中のファンから
クラウドファンディング

ホドロフスキーのイマジネーションを実現させるために、プロデューサー陣はクラウドファンディングに目をつけた。それは、カルト界の巨匠として世界中に知られるホドロフスキーの新作なら、資金集めができるかもしれないという狙いからだった。しかし、ホドロフスキー自身、物乞いをするようなことはしたくないという。

そんな彼を説得したのが、出資者に見返りとしても物や経験を与えるのではなく、出資額と等価の新たな通貨と両替をするといったアイディアだった。その通貨は、映画のタイトルにちなんで、ポエティックマネー。つまり、100ドル資金提供すれば、100ポエティックマネーと両替される。金額が大きい場合は、本人のサイン入り小切手と両替されるのだ。

ピカソの小切手をもらった人は、そのサインの価値を重視して、銀行で換金しないまま持っているらしい。将来、ホドロフスキーのポエティックマネーや小切手の価値も上がるはずだという。

このアイディアによって、「Kickstarter」で合計442,313ドル(約4,964万円)、さらには、「INDIEGOGO」で336,514ドル(約3,776万円)もの製作資金が集まったとのことだ。この映画、フランス、チリ、日本の合作ではあるが、出資者レベルでは世界60ヶ国の共同製作だといえるらしい。ポエムとアートと歌舞伎が同居したような奇想天外なストーリー、ホドロフスキーワールドは、ぜひ、劇場で堪能して欲しい。

『エンドレス・ポエトリー』
2017年11月18日(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほかで絶賛上映中。公式サイトは、コチラ

(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE

Licensed material used with permission by エンドレス・ポエトリー
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