いつまでたっても男性上司が、女性社員を理解できない理由。

「何が不満なのか分からない」、「どこまで指導していいのか迷ってしまう」……。企業における女性社員の現場で、女性部下の「取り扱い」について頭を抱えている男性管理職がいます。

リーダーシップ研修の講師実績を持つ西村直哉さんと、人材育成コンサルタントの清家三佳子さんの共著『一瞬で心をつかむ女性部下マネジメント』(幻冬舎)では、女性部下に対してどう接するべきかのアドバイスを送っています。

ステレオタイプなジェンダー観が実際にあることも認めたうえで、女性部下とのコミュニケーションに悩む男性に向けて。

女性は男性よりも
感情をオープンにできる

男性管理職にとって、女性部下というのは扱いが難しい存在です。例えば、女性の部下を持った男性管理職が最初に戸惑うのは、いったいどこまで厳しく指導して良いものか……ということです。

相手が男性部下であれば、遠慮なく厳しく鍛えることができますが、女性に対して「同じことはできない」という方が多いでしょう。

女性はか弱い存在であり、守るべきものであると男性は教えられてきましたから、たとえ部下とはいえ、厳しく指導しづらいのです。男性としてたくましく、優しければ優しい管理職ほど、この傾向が強くなります。

実際に私たち(著者)は研修を通して、さまざまな男性管理職から女性部下に関する悩みを聞いてきましたが、その一つに「女性はすぐ感情的になる」というものがありました。

これを読んでいる女性の方は、ムッとして反論したくなるかもしれません。もちろんすべての女性がこのような行動を取るわけではありませんが、少なくともこのように受け止める男性管理職が一定数存在していることは確かです。

もちろん、「女性は感情的」というのは偏見にまみれたステレオタイプな見方です。男性にだって当然、喜怒哀楽はありますが、仕事の現場や日常生活において、感情的になったとしても、男性にはそれをあらわにすることを避ける傾向があります。

対して、女性は(少なくとも日常生活においては)、男性よりも感情をオープンにする傾向があります。そのため、仕事においても、強く怒られると思わず涙が溢れてしまったり、嫌悪を感じると身体に拒否反応が出る場合があります。

男性にだって感情はありますが、幼い頃から「男は泣くな」と育てられており、社会人になる頃には感情を抑える術をすっかり身につけています。一方、幼い頃から泣くと誰かがかばってくれたり、慰めてくれたりすることを経験してきた女性は、男性と比較すると感情の抑え方が未熟だと考えられます。

くどいようですが、個人差はあります。
また、このような男女の違いが生まれつきのものか、それとも育てられ方によるものかは、ここでは問題にしません。あくまでも、そのような悩みを感じている男性管理職がいるという前提でお読みください。

他にも、働く上で「男女の違いを感じるもの」はたくさんあります。下で紹介しましょう。

男性と女性の最も大きな違いが
どれだけ仕事に影響を与えるか?

男性と女性の最も大きな違いは、子どもを産めるか産めないかでしょう。この違いは仕事にも影響していきます。

このように断定すると、トランスジェンダーの方などに怒られるかもしれませんが、あくまで一般論としてお話しさせていただきます。

出産機能の有無が、なぜ仕事に関係してくるのかというと、少なくとも出産の期間は仕事を休まざるを得なくなるからです。なかには産後すぐに復帰する方もいますが、出産後は育児に専念したいと考える人も多く、産前休暇と合わせて1年間近く休む人も少なくありません。

女性が子どもを産むたびに1人1年間の休暇を取るとしたら、2人産めば2年間、3人産めば3年間……とかなりのブランクが生じます。また、仕事に復帰しても、多くの女性は産まれた子どもの世話があるため、毎日定時退社をしたり、残業を大幅カットしたりと時間短縮勤務を余儀なくされます。

この事実は、女性部下を持つ上司にとっても、女性を雇う会社にとっても、決して無視できるものではありません。人手不足の状況ではなおさら、女性社員はリスキーだと捉えられても仕方ないでしょう。厚生労働省の発表によれば、女性の離職率は一貫して男性を上回っており、女性は男性に比べて、さまざまな理由で仕事を辞めやすいことがはっきりしています。

……とはいえ、男性も転職などで仕事を辞めることが多く、その差は一般に考えられているほど大きいものではありません。2015年の離職率は女性が19%、男性が13%であり、その差はわずか6パーセントしかないのです。男性は主に、社風や仕事が合わないという理由で、毎年8人に1人の割合で仕事を辞めており、女性は、ただ仕事が合わないという理由だけでなく、結婚、出産、育児という理由で会社を辞めています。単純に考えれば出産しない女性もいるわけで、その人たちの離職リスクは、男性とほとんど変わりのないものではないでしょうか?

出産をしても仕事を辞めずに続ける女性も多くなっています。その人たちをも、「女性はいつか専業主婦になるだろう」という偏見で、一律に排除することはやはり不公平なのです。今一度、人事やチーム編成について考え直してみましょう。

女でも男でもない、
「女性部下」という存在

「女性部下が苦手だ」という男性管理職の気持ちはよくわかります。

私が新入社員の頃には、上司から何か仕事を頼まれたときには「はい!」と即答して引き受けてから、「どうしようか」と考えたものです。

自分(著者)が上司になってからも、そのつもりで部下に仕事を任せてきました。ですから、女性部下から「やったことがありません。どうすれば良いですか?」と問われると、内心で「それを考えるのがお前の仕事だろう」と思いながらも、親切に対応してきたものです。

しかし、実際に上司としてかわいがったのは、昔の私のように何を言われてもすぐに「はい!」と元気良く返事して、分からないながらも自分で試行錯誤して仕事に取り組む男性部下の方でした。

しかし、時代は変わりました。人手不足の現在、より高い質を追求して人材を集めていこうと思うのならば、女性の力が不可欠です。実際、大手企業の新卒採用担当者や学生を送り出す大学教授は、平均すると女性の方が成績優秀であると語っています。ですから、女性部下を敬遠するのは、もうやめましょう。

まずは自分の頭の中に「男性部下」とまったく対等な存在として「女性部下」という枠組みをつくってください。彼女たちは女性ではありますが、いわゆる「女」ではありません。かといって「男」でもありません。そのような、従来の枠組みの性別で考えられないものが「女性部下」です。

私が男性管理職から聞く声のなかには「自分の妻や娘にはこんな厳しい仕事はさせられない」というものがあります。彼にとっては、奥さんとか娘さんというのは「守ってやらないといけない女」でかわいがる存在だということが分かります。

しかし「女性部下」は「女」ではないし、奥さんでも娘さんでもないので「男性部下」と同じようにタフな仕事を与えていてもかまいません。まずは「女性部下」を、あなたにとっての「娘のような存在」から切り離すことが必要なのです。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。