この世を去るときも優しくありたい。「オーガニック葬」という概念

ひとが亡くなると、一般的にはお葬式が行われる。

その後は棺が火葬され、親族は食事を共にしながら故人を偲ぶというのが多いだろう。一方で近年、故人の思いやこだわりを大切にした、個性のあるお葬式が増えていたり、自分のお葬式はこうしてほしい、という願いを生前に書き残す人もいる。

そのような点からお葬式を、”故人の最後のメッセージ”と価値づけた新しい概念が「ナチュラル×フューネラル」だ。

死んだ後も
エコでオーガニックで
ありたい人へ

もしもあなたが日頃からエコな人ならば、亡くなった後に、違法伐採された木材で作られた棺に入りたいと思うだろうか?

もしくは、普段から食べ物に配慮してきた人ならば、自分のお葬式に来てくれた人に食品添加物がたくさん使われたギフトを渡したいだろうか?

また、親族に自分を偲んでもらう時の食事が、工場で作られた野菜や料理であることをどう思うだろうか?

「ナチュラル×フューネラル」は、そんな故人の価値観に応えるお葬式を提供している。例えば、自然に優しい間伐材を使用した棺、または、強化段ボール製の棺は燃焼時間を短縮するため二酸化炭素をおさえるという、いわばエコ棺。返礼品にはオーガニックの食品やタオルが選べる他、用意する食事にも有機野菜や無添加食材で調理された料理を提供している。ナチュラル×フューネラルはいわば「オーガニック葬」と言えそうだ。

オーガニックで
「ソーシャル」でもある

このサービスを提供する「株式会社ひかりの和」代表取締役の坂本健さんは、こう話す。

「ナチュラル×フューネラルは、ソーシャルビジネスでもある」

と。

葬儀に必要なプロダクトを、エコでオーガニックなものにするだけでなく、収益の一部を森里海の環境基金に寄付することで、子ども達の食育を支援。また、オーガニックのギフトや有機農畜産品を使うことで生産者を支援し、ひいては地球環境の保護につながる、と熱く話してくれた。

それらはすべて、次世代につなぐこの地球環境を守ることが目的だという。

長年セレモニー業界での実績が豊富な同社の活動は、ナチュラル×フューネラルだけに限らない。たくさん余らせたまま1度しか使用されないキャンドルを近くの障がい者施設と協働して再利用したり、障がい者が養蜂活動を通して採取した蜂蜜を返礼品として採用するなど、同社が目指す社会と企業価値をバランスよく追求している。

選択肢のダイバーシティこそ
課題解決のカギ

近年ではこうした葬儀内容のほか、参列や散骨にも選択肢が増えた。

遠方在住者や何らかの理由で訪問できない人のためにインターネットで参列したことになるという「ネット葬」や、体が不自由な人や高齢者も参列できる「ドライブスルー葬」、海に散骨する「海洋葬」や、お骨をロケットでオゾン層に打ち上げる「宇宙葬」など。

社会の多様性は、故人の冥福を祈るときにも実現し始めたようだ。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。