楽園の料理人が作る「サメのココナッツスープ」

いつだってあったかくて、やさしい、おばあちゃんの手料理。家族をひとつにするその味わい、世界の国々にはどんな“忘れ時の味”があるのでしょう。

50カ国の台所から、おばあちゃんの料理を伝えるガブリエーレ・ガリンベルディ(フォトグラファー)によるプロジェクト「In Her Kitchen」。4回目は、“楽園”の海に生息するサメを使ったスープのご紹介。

【フィリピン】
カルメン・アローラ(70歳)

カルメンおばあちゃんは生まれてこのかた、パラワン島の北部にあるエル・ニドでずーっと暮らしてきました。心の奥まで透き通って見えるくらい美しいビーチと、燃えるような濃緑の山々。この島が“楽園”に喩えられる理由です。

息をのむほど美しい海のめぐみは、色とりどりの魚たち。エル・ニドは小さな漁師町で、バリアリーフとジャングルの合間にあります。40年ほど前、そこで初めてレストランを開いたのがカルメンおばあちゃん。今その数は12店舗にも増え、日々訪れるわずかな観光客をもてなしています。

レストランの厨房はアローラ家のキッチンとしても兼務。今もこの町に暮らす3兄弟のうちの息子1人と2人の孫のために、おいしい料理を振舞っているようです。

サメのココナッツスープ「キヌノット」

カルメンおばあさんに出会ったのは、泊めてもらったカウチサーファーのおかげ。その人がこう自慢げに言ったのです。

「カルメンは町一番のコックで、彼女の作るキヌノットはキミのつくる本に載せなきゃだめだよ。間違いなくこの地域を代表する料理だから」

島を取り囲む海には、この料理に欠かせないトンガリサカタザメが多く生息するエリア。地元の漁師たちが言うには、すばらしくおいしいらしいけど絶滅危惧種とされていて、その漁が禁止されている場所も世界にはあるそうですよ。

Licensed material used with permission by Gabriele Galimberti
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。