【私がみた中国】スマホ決済普及の裏にある「なにそれおれも主義」。

仕事で中国と日本を行き来するようになって約5年。今では1年の半分以上を北京で過ごしています。

そんな自分にとって中国の変化のスピードは、もはや当たり前。何を見てもいちいち驚かなくなりました。

「経済発展」や「デジタル化」、そして「急速な社会的成熟」。

日本国内でもよく耳にするであろうこれらのワードは間違いなく中国の真実です。だけど、私が一番面白いなあと感じているのは、社会全体の大きな変化じゃなくて、普通の人たちの変化への対応っぷりです。

今回は、そのなかでもスマホ決済の普及について書いてみたいと思います。 

個人商店でもスマホ決済が当たり前。

今や北京では、スーパーやショッピングモール、レストラン、カフェはもちろん、生花市場の中ですら、スマホ決済ができるようになっています。なかでも中華SNSアプリ『WeChat』は一般的。

それも「スマホ決済も可能です」なんてレベルじゃありません。

市場でもこちらが現金を使う時は、店頭の若者にちょっと面倒くさそうな表情をされる覚悟が必要。“現金を持っているオーナーを呼んでくるから”と待たされて、後ろに並んでいる人たちにどんどん先を越されてしまいます。えっ、私って遅れてる人?

市場の個人商店レベルでも!? と思うかもしれませんが、北京におけるスマホ決済はむしろ小規模な商取引や、個人的な取引でこそ威力を発揮しています。

もしもあなたが店主で、アルバイトにお店を任せるとしたら、売り上げの計算が心配になりますよね? スマホ決済なら、お釣りの間違いなんて起こらないし、泥棒の心配もありません。バイト君的にも、一日の終わりのレジ閉め作業も不要。まず店にレジが要りませんからね。なんて合理的!

キャッシュレス社会というと、これまではクレジットカードのイメージがありましたが、そもそも中国には、諸々の事情でクレジットカードの審査が通らない人もたくさんいます。その点、スマホ決済はスマホさえ持っていれば誰でもキャッシュレスになれる、というのも普及の一因のようです。

スマホ決済の是非はどうでもよくて……。

これだけ書いておいて何ですが、私がここで伝えたいのはスマホで決済することのメリットじゃありません。感心したのはシステムよりも、中国人の便利なものがあるならすぐに学んで試してみる、隣の人がやってたらとにかく自分もやってみる「なにそれおれも主義」。

例えば、日本ではスマホに苦手意識を持つ高齢者の方も多いと思います。

一方、中国では違います。

ランニングシャツに白髪ボーボーで三輪バイクに乗っている、かなりクラシックな雰囲気のおじいちゃんだって、スマホ片手に露天の串焼きを食べています。「網戸直します」と看板だけ掲げて、日がな路肩に座っているようなオジサンもスマホ決済(儲かってるのかな?)だし、私のオフィスのお掃除や料理などをしてくれるオバチャンの給料もスマホ決済。旧正月には孫のお年玉をスマホで送るスマートジジババだっているぐらい。

何なのよ、去年ぐらいまで、まだ誰も使ってなかったクセに! なんて、ツッコミのひとつも入れたくなるほどの順応性です。しかも老若男女ですからね。

もちろん、まったく現金が使えないわけじゃありませんよ。スマホ決済できない場所もたくさんあります。これはあくまで北京の中産階級や外国人が多いエリアに住んでいる、私の体験です。

でもね、みんなが見よう見まねで我も我もと新しいことに参加してくる、その中国人のパワーはあっぱれの一言です。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。