人生のすべてをかけて、アメリカ中を走る男の野望。

Bill Sycalikさんは、健康に気を配ろうとランニングを始めた人のひとり。マラソンに出場しようとトレーニングを重ねていたら、彼はいつしかランニングの虜になってしまったのだそう。

ランニングを始めてから12年が経ち、彼はニューヨークシティでの仕事を辞め、アメリカにある全ての国立公園をマラソンする「Running the Parks」という独自のミッションに挑戦。「Gear Patrol」は、なぜ彼はこのようなことを試みたのか、そしてやりたいことを実現するためにはどうしたらいいのか、などの質問を彼に尋ねてみました。

Q1.
"Running the Parks (国立公園を走ろう)"のアイディアはどこから生まれたんですか?

ニューヨークシティに住んで5年ほど経つんですが、あんまり刺激を感じなくなってしまって。大好きな自然からかけ離れてしまったし、とくに理想とする人たちにも囲まれていませんでした。だからアパートの契約が切れた2016年5月に、コロラド州デンヴァーに引っ越そうと決めたんです。国立公園の100周年であることも聞きつけ、コロラドに向かっている間にいくつか国立公園も見れるかも、なんてぼんやりと考えていました。

そうしたら公園を走るのも楽しいかも…と思い始め、自分も周りも挑戦できることをしてみたいと思ったんです。言葉にしにくいのですが、要は「国立公園を走る」というアイディアに惹かれたんです。タフになるだろうとは思っていましたが、できるかどうかわからないからこそやりたいと思ったのかもしれません。

Q2.
1日のおおまかなスケジュールを教えてください。

週に3〜7日ほどは国立公園を散策しています。ほぼやっていることは、観光客と一緒ですね。なので走っていないときは、ハイキングをしたり、写真を撮ったり、PRセンターを訪れたり。あとはとにかく国立公園を吟味します。

事前にトポマップを見ながら良さそうなルートを探し出し、PRセンターの森林警備隊員と自分のプロジェクトについて話す機会を設けて、ルートの相談をさせてもらっています。

Q3.
今まで訪れた中で最も心惹かれた国立公園は?

今のところは、カリフォルニアのキングスキャニオン国立公園ですね。素晴らしい景観です。セコイアもあり、グラナイトがかった側面も持ち合わせているんです。例えるのならヨセミテに似ていますが、それよりも親近感が湧くような絶景。

真ん中を流れるキングス川は現在雪解けの状態です。走っていたときは、クマにも遭遇しました。グレーシャーやイエローストーン、ヨセミテを含む46の国立公園を訪れましたが、キングスキャニオンが今はダントツ1位です。

Q4.
最も大変だった出来事は?

孤独と戦ったところでしょうか。国立公園とは辺鄙なところにあるので、往々にして人気が少ないんです。大きな国立公園であれば多くの場合ホステルがあるので、人と交流できるホステルを愛用してました。

そうでなければ、私のプロジェクトを知る人の家にタダで泊めてもらったり(30%の確率で泊めてもらえました)してましたね。

でもほとんどは車やキャンプ場、あとは安いAirbnbに泊まったりしていました。このプロジェクトは僕ひとりのものであると気づく瞬間、少し人恋しく感じていました。

Q5.
次に訪れたいと思っている国立公園は?

50州中48州の国立公園は、ほぼすべて周りました。残るはハワイにふたつ、サモアにひとつ、そしてアラスカに8つです。

今後のプランとしては、9月にハワイとサモアを制覇し、2018年夏にアラスカを走ろうかと。アラスカ単体で8つも国立公園があり、そのうちの4つはブッシュプレーンという飛行機でしか行けないみたいです。とくに決まったトレイルもなく、道も補正されていないため、ベストなルートを探すのが困難かもしれません。

Q6.
国立公園巡りをしたい人に何かひとつアドバイスをするなら?

見晴らしのいい高台に行ったり、PRセンターに行くだけでおしまいにしないこと。足跡の起点やキャンプ場を離れてようやく、なぜ後世の人々に引き継いでいかないといけないのか、自然とはどう人間に回復力を与えてくれるものか…など、その公園の価値が見えてくるものです。

ほっと一息つける時間を与えてくれると同時に、エネルギーを与えてくれるのが、自然というもの。国立公園の野生的な部分がそのまま保全されていることに気づけると、きっとその分素敵な体験になるはずです。

Q7.
仕事を辞めてでも、夢を追いかけることをお薦めしますか?

お薦めはしますが、計画性を持つことが肝です。周りにもよく聞かれますが、私は毎回「仕事を辞めたら収入がなくなることを一度考えるといい」とアドバイスします。事前に計画をしておかないと、ひとつのフラストレーションをまた別のフラストレーションと書き換える始末になります。「冒険になんて出ているほど余裕がない」ってね。

インスピレーションも大事ですが、その夢を叶えるためにはやはり「準備」が必須です。経済面を考えたとき、今すぐに仕事を辞められないと思うのなら、何をすれば日々の満足度が上がるかに目を向けるといいでしょう。もしかしたら前々からギターやピアノ、または演技を習いたいと思っていたのかもしれません。

心の奥底で「やりたい」と思っていたことを実現してしまえばいいのです。それは誰にだってできることだから。

私の年齢で会社勤めの人は、生活がマンネリ化し、自分自身で「状況を変えていける」と思えなくなっている人が非常に多いです。私がしていることを「できない」の範囲に入れてしまっているのなら、それは「本当にやりたいこと」が出来ていない一つの証拠かもしれませんよ。

Licensed material used with permission by Gear Patrol
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。