高齢者は、往年のスターだ。「寝たきり銀幕デビュー」にグッとくる

「寝たきり」という言葉は、日本の高齢化が進むにつれて、どこかタブーのような扱いになってきました。たとえば「大変そう」「介護がきつそう」といったネガティブなイメージ。

そんなイメージを少しでも変えるべく、介護職のポジティブな現実を知って欲しいという思いから、岡山県の社会福祉法人みずき会がスタートしたのが「寝たきり銀幕デビュープロジェクト」

長く生きるということは、素晴らしいことです。事実は小説より奇なりと言いますが、長い人生経験には、1本の大スペクタクル映画にも匹敵するほどのロマンとドラマが詰まっています。

その主人公となったおじいさんやおばあさんに、寝たきりのまま「銀幕デビュー」を飾ってもらおう、というプロジェクトなんです。

介護職のイメージを
ポジティブに

このプロジェクトでは、入居者の忘れられないエピソードを元にオリジナル映画のストーリーを構成。さらに、ポスターやパネルも製作。

入居者と職員が一丸となって作品を作り上げる様子は、今までの介護職にはないくらいの活気と新鮮味に溢れていて、介護職をポジティブに盛り上げていこうという熱意が伝わってきますね。

『ミサヲの恋は時間差』
主演:粟津ミサヲ

真っ赤に燃える恋の太陽が微笑むのは
ミサヲかヒバリか、果たしていかに!?

青春時代はバレーボールに明け暮れていた、という栗津ミサヲさん(1936年生まれ・81歳)。現在の趣味は編み物。

美空ひばりの大ファンで、彼女の出演した映画は何でも大好き。美空ひばりを彷彿とさせる設定を織り込んだ本作に出演した栗津さんは、

「よく撮れてる、素晴らしい! サイコーの思い出やな!」

と大喜びだったとか。

『無刀の泰平』
主演:中尾泰平

昼は病を治し、夜は世を直す!
伝説の丸腰侍、ここに見参!

医者になるのが夢だったという中尾泰三さん(1932年生まれ・85歳)。若い頃には空手にも打ち込み「水戸黄門」や「大岡越前」のような勧善懲悪時代劇を好んで見ていたことから、この作品が誕生しました。

ストーリーを作るに当たってヒアリングを受けたご家族の道子さんも、

「撮影前のアンケートで『父との人生の思い出』をヒアリングされた際、いつのまにか忘れてしまっていたエピソードが次から次へとあふれ出てきて、書ききれなくなってしまいました。とても懐かしく、和やかな気持ちになったのを覚えています。

車椅子での生活を余儀なくされている父に刺激があって楽しめるようなプロジェクトに参加できて、私たちにとってとても素敵な機会になりました」

と、前向きなコメント。

「長生きは素晴らしい」と
思える社会にしたい

製作したオリジナル映画のポスターは求人用ポスターとして実際に使用し、共に介護への新しいイメージを作っていく人材を募集しているそう。つまり、主役の人生を輝かせる名脇役を求む、というわけ。

みずき会理事長の阿部泰士さんは、プロジェクトの立ち上げ当初、そのセンセーショナルなタイトルとアイデアに驚いたと言います。

「しかし『高齢者は、往年のスターだ』というコンセプトを読み、今の社会における介護問題のイメージを根本的に変えられるかもしれないと考え、プロジェクトの実施を決断しました」

長く生きることを誰もが素晴らしいと思える社会が、日本の未来をもっと明るくしていくのかもしれません。

Licensed material used with permission by 寝たきり銀幕デビュープロジェクト
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。