音楽の正しい買い方は、直感!?(ほぼ外すけど当たるとテンションMAX)

水曜日のカンパネラ、銀杏BOYZ、浅野忠信など、様々なアーティストが新しい音源の発表媒体としてチョイスするなど、一過性のブームを超えて、ますます存在感を増している“なんかカワイイやつ”=カセットテープ。

「意外に音がいい!」と力説いただいた前回につづいて、さらに舌鋒鋭く、そして暑苦しく(失礼!笑)、『toosmell records』の赤石さんが語ってくれました。

なんかカワイイ、そして
やっぱり音がいい!

 ――赤石さん個人的として、カセットのどこが魅力ですか?

赤石:単純ですけど、まずはカセットテープっていうフォーマットそのものです。もう見た目ですね、ジャケットの形からサイズ感、そんでケースを開けてテープ本体を手に取った時の質感とか重さとか、視覚的にも触覚的にも楽しいですよね。ジャケットが横に並んだ時の感じもすごくいいですし。並びの部分ではCDにも良さありますけど、テープのほうが“モノ感”が強いじゃないですか?太いし、けど短いし。なんかカワイイんですよね。

でも、消えたと思われてた間もずっとテープは作られていたみたいなんで。メジャーからも。あれは昔から今でもカセットが主流なアジア諸国への流通用らしいです。あとはヨーロッパ。ヨーロッパはカセットテープ、ずっと強いらしいですよ。ポーランドとか特に。聞いた話なんですけど、ドイツではカセットテープそのものが“アート”っていう認識が強いらしいんですよね。

詳しくはわからないですけど、カセットテープというフォーマットに自分の魂のこもった音楽=芸術を詰め込むっていう行為が美学、みたいな。パッケージとかジャケットも普通じゃないものも多いみたいです。自主制作モノとか。

 ――たしかに、手に持ってみるといいですよね、カセット。理屈じゃなく。

赤石:なんかいいですよね、実際に手に取ってみてより感じられるっていうか。例えば、手書きで描かれた絵とパソコン上でデザインされた絵の違い、みたいな。そこに優劣があるって訳ではなく。それこそ、テープに関しては好きな人は色々と思っていることあると思うんですけど、僕はやっぱり一番の魅力は“音”だと思ってます。ほんとに、音がいいんですよね。聴きながら持ち運べる唯一のアナログ媒体だと思うし。でもレコードとも違ったアナログの温かみがあって、っていう。デジタル音源と比べて聴き疲れもしないですし。

あと、勝手に個人的にまたCDも来る気がしてますけどね。自分の場合はカセットが好きになった事で改めてレコードがまた好きになって、そしたらCDの魅力もまた再発見してっていう流れがありましたね。なので結局「ショックウェーブ」のCDウォークマンも買って…どの媒体にもそれぞれの魅力があるので、そうやってグルグル回るもんなんじゃないかな、とも思います。

主流への“カウンター”として

――音楽にかぎらず、トレンドが巻き戻っている感じはありますよね。

赤石:そうですね。音楽に限らず、ファッションとかも巻き戻っているというか、もう一度巡ってきているというか…。中1の時にファッション雑誌で見てたようなブランドとかスタイルが今また流行ってたり、「ソニスポ」や「ショックウェーブ」もモロそうですけど、それを今またかっこいいものとして紹介できるってなんかいいな〜と思います。

例えば洋服とかは、ファストファッションが好きなひとはほとんどそこで済ませるっていう人も多いでしょうけど、逆に古着とかビンテージ、デッドストック、最新の輸入アイテムを海外と同時進行で取り扱ってるお店とか、吉祥寺にも色々なお店があるんですけど、どこもめちゃめちゃ賑わってますね。

そういう流れって、やっぱりどこかにある種の“カウンター”的な部分があると思います。単純に言ってしまえば「与えられた流れに流されたくない」というか。

 ――今の主流は、完全にネットでの視聴ですから。

赤石:そうですね。映像のライブ配信とかフリーのデジタル音源とかも。アメリカのクラブシーンとかでは、そういうトレンドにアンチテーゼを唱えるひとが増えているらしいくて。

で、そういうひとたちは“真逆”に行こうとしているみたいです。「デジタル一切なし、レコードとテープしかリリースしない」みたいな、どんどんアナログな方向に。地域によっては完全二分化が始まっているみたいで、日本でもそういう潮流はある気がします。

でも、単純な反発心だけじゃ流れとかムーブメントにはならないと思うので、そこにしっかり「自分はこれが好きなんだ」っていう確かな愛情あるんだと思います。そういう人たちが「自分の流れ」を自分で作って、それが響くひとに響いていってるんだろうな、と。すごく自然な流れだと思いますね。

話を聞かせていただいた赤石さん。ハードコアバンド・PASTAFASTA、VVORLDに在籍、Endzweck、ELMOのサポートメンバーでもあります。

パッと見て、
ピンッときたら買う!

 ――カセットを買うときは、やっぱりジャケットで判断されたり?

赤石:最近は、“ジャケ買い”ってそんなにしないんですよ。今はまた曲名で買ってますね。

 ――“曲名買い”、ですか!?

赤石:はい(笑)。中学生の頃とかよくやっていて。中学・高校の時って、僕、ほんとにデスメタルとかグラインドコアとか、とてつもなくエクストリームなものが好きだったので、とにかく速くて凶暴な曲ばっか聴いてて。だいたい「KILL」とか「DEATH」とか、そういう言葉が入っていれば速いだろっていう感じで(笑)。

最近、勝手に自分ではじめたのが“インスピレーション買い”っていうやつ。もう、ピンッときたら買う!っていう。そのレコードやカセットから出てるオーラで買うっていうか(笑)。なんかパッと見て、アーティスト名とか、タイトルを見て、これだ!って思ったらとりあえず買ってみる。まぁ、ほぼ外すんですけど(笑)。

でも、たまに当たるんですよ!その時はもう、めっちゃテンション上がります。結構若者には推奨しているんですけど。単純に楽しいので。

なんか、試聴して好みのものを買うって、「そりゃそうだろう」っていう感じなんですよね。試食して、「美味い!買う!」って、全然悪いことだとは思わないんですけど、こと音源を買うっていうことに関しては、訳のわからないものを買って当たったときの感動って、最高なんですよね。買い物としてはそっちのほうが絶対たのしいだろうなって。まあ極端な方法だとは思うんですが(笑)、たのしいです。

 ーー聴いてみるまでは得体が知れないわけですもんね。

赤石:そうですね。まぁ、「ジャケ買い」と似たようなものですけど。それでしか味わえない楽しさは間違いなくありますね。その音源に対する愛情や思い入れもひと味違ってくると思います。

あと、同じ買い方ばっかりしてても、絶対飽きると思うんですよ。特に今はインターネットが発達したおかげで音源の試聴なんてスマホですぐできるし、ごはん屋さんの情報もググっちゃえば口コミや数字での評価まで見れちゃいますけど、そうやって先に得た情報だけで善し悪しを判断しているひとが増えているのを感じることがあるので…。情報を聴いて、情報を食べて、情報を着る、みたいな。そういう部分には完全に反発していきたいですね。

ショップ、レーベルとしての
大いなる野望

 ――お店でも、レーベルとしてカセットのリリースもされていて。

赤石:そうですね。例えばこのfallsっていうのは一緒にPASTAFASTAってバンドでベースやってるスパイダー山本という男が2年くらい前から新たに活動し始めたバンドで。彼がベース&ボーカル、ギターも昔から知ってる愚藻男っていう友達で、ドラムは昔からPASTAFASTAのライブとかtoosmell recordsにもよく遊びに来ていて、今では店番もたまにやってもらっている前くんっていう、みんなもう10年近く前から知ってる友達が集まって始まったバンドなんです。でも、そういう身内目線ナシで最高のバンドですね。「なんちゃらロック」とか言っちゃうとつまんないので彼らの音楽のことは詳しく言いませんが、とにかく最高って言葉が超似合うバンドです。

ネット上で試聴したりYouTubeで映像見てるだけじゃ絶対にわからない彼らの最大の魅力がライブにあるので、絶対ライブ見てほしいです。今時の若いバンドたちは全員fallsを見習った方が良いと思いますね。楽曲が素晴らしいことはもちろんなんですけど、あれだけ気持ちの乗った最高の演奏を見せてくれるバンドって、そういないと思います。だからみんな「falls最高!」って言うんだと思いますね。

 ――これからお店としてやりたいこと・野望はありますか?

赤石:カセット機器のことで言えば、これまで「ソニースポーツ」と「ショックウェーブ」、あと「マイ・ファースト・ソニー」っていう3つの機種にフォーカスしてやってきたんですけど、ソニーやパナソニックの違うタイプのウォークマンや他のメーカーのウォークマンも入荷していく予定です。9月末から入荷してく予定なのでぜひチェックしてもらえたらうれしいです。まだまだ素晴らしいカセット機器がたくさんあるので。

レーベルとしてはカセットのリリースも年内だけで5〜6作品予定してます。カセットだけじゃなくCD・レコードのリリース予定もあって、それぞれジャンル/スタイルも全く違います。とにかく自分が最高だと思うアーティストや作品を様々な形でリリースしていこうと思ってます。 野望というほどのことは特に思い浮かばないんですが…、真剣に遊びながらやっていけたら最高だと思ってます。遊びだからこそ、一番真剣にやらないといけないな〜と思います。

(前編はこちら

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。