「ズルい!」と蜷川実花に言わせた、六本木アートナイト

高級感ただよう大人の街のイメージが六本木にはある。

この街のシンボルのミッドタウンやヒルズが、煌びやかな“アート一色”に染まってしまう。『六本木アートナイト』と呼ばれる一夜限りの饗宴。一度、足を踏み入れてしまったものなら誰しも、次の宴が待ち遠しくなってしまうんだ。

今年は、蜷川実花さんの作品が登場する。果たして、「都会の夜」はどんな色に染められるのか…。

蜷川実花の「未来ノマツリ」

六本木アートナイトの一番の見どころと言ったら、毎年豪華なメインアーティストが出展するところ。2017年は、アーティストや写真家、映画監督など幅広く活躍する蜷川実花さんの大規模なインスタレーション作品が目玉となる。

今年のアートナイトのテーマは「未来ノマツリ」。響きからして、賑やかで鮮やかな色のイメージがある蜷川さんにぴったりな気がした。

実行委員長であり、森美術館館長である南條史生さんと、蜷川さんに今回のイベントをより楽しめるようにじっくり話を聞かせてもらうことに。

左:六本木アートナイト実行委員長 南條史生 右:写真家 蜷川実花

欲望渦巻く、六本木とはどんな街?

蜷川:六本木は小さい時に父によく連れてきてもらった街。小学校くらいの時に、ディスコだとか、六本木の見学をしていたんですよ。子どもの頃に思ったことがいまだに頭から離れなくて。「大人が遊ぶ場所」のイメージがすごく強かった。

 

でも、六本木ヒルズができてアートの概念が加わったことで、すごくオモシロイ街になったかなって。安定しているんですけど、進化もしてる。それから、訪れる回数が圧倒的に増えました。

 

そうは言っても、ディスコがあった背景が私は好き。欲望が渦巻く街に、六本木ヒルズが建っているっていう感じが大好きなんです。

アートナイトが「ズルイ」って?

蜷川:今回のお話をいただいた時、すごく嬉しかったんです。と言うのも、今までアートナイトに呼んでもらったことがなくて。「えー、私やりたいのに」って、ずっと思っていたんですよ。それが、メインアーティストとして参加できるんですから。

 

それに、今回のテーマに我ながらあってるんじゃないかと思ってます。今、一生懸命考えていて、みんなで着地点を考えているところ。私が一番、わくわくドキドキしながら、準備をしている状態なんですよ。

 

南條:アートナイトに呼ばれないって、どんなふうに見えてたんですか?

 

蜷川:ワイワイと楽しく、しかも六本木でなんてズルイっ!そう思ってたんですよ。土地柄もあると思うんですけど、単純な言葉で表すとオシャレな感じがすると言うか。アートに興味がない人たちも巻き込んでしまう。ユニークなイベントだなと思っていて。でも、子どもを産んだばかりなので、夜はあまり出れなかったんですよね。だから、「イイなー、ズルイなー」って羨ましく見えてました。 

 

南條:「現代美術」とは言っているんですけど、アートナイトって誰でも楽しめるように、敷居は低くしているんです。それについて、どう思います?

 

蜷川:私がアート活動をする時に一番大切にしているのは、入り口は広く、どんな人でも来れるような楽しそうなパッケージにすること。特に、アジア圏で展覧会をする時は、「なんか、おもしろそう」って、思いながら来てもらうことが重要だと思ってます。

 

そのあとで、「ずいぶん、深いところまで連れて行かれた」とか、「思ってないような出口にでた」なんて仕掛けが作れたらなって。スタートはとにかく、大事にしてますね。

 

アートナイトは、やっぱり会場が良いじゃないですか。興味がない人たちも、ふと立ち寄れるような恵まれたところ。そこを、最大限に生かして、たくさんの人たちに来て欲しいですね。

アートはどんな「カタチ」?

南條:オリンピックも文化イベントで、こういう内容をやると思うんですよね。それを思うと、アートナイトでも重要なイベントが存在していると思うんですけど。オリンピックに向けて、東京はどう迎え入れていくのか。こうなったら良いのにってあります?

 

 蜷川:やっぱり、真面目に考えすぎちゃう感じがするんですよね。カッコイイ東京ってイメージがあるためか、海外から訪れた人たちも「本当にオモシロイね」って、よく言ってくれるんです。エッジがなくならないように、文化イベントができたらいいなって思いますね。

 

どうしても“丸い表現”で、きちんとやろうとするので。実際は、アートって丸くないじゃないですか?そういうところも、ちゃんと残したプログラムができるように、何か手伝えたら良いなって思ってるんです。

写真には「ナニ」がうつるの?

蜷川:写真っていうのは一言も喋らずに、自分がいいと思ったらシャッターを押すだけで成立しちゃう。そこに言語はないんですね。バカっぽく聞こえますけど「カッコイイ」や「かわいい」だけで、シャッターを押していて。そこに自分の感情が、ピタッとフィックスされるメディアですかね。ダイレクトに自分の思いが詰まっちゃうんです。

 

南條:初期の作品って、独特の色がでていたと思うんですけど。今は、フィルムじゃないんです?

 

蜷川:最後の最後までフィルムにこだわっていたんです。周りが一気にデジタルに変えても、私はなかなか変えられなくて。でも、好きなフィルムがどんどんなくなってしまって、それだったらデジタルでも…。そんなとこまで追い詰められてから、デジタルにしたんです。

 

南條:デジタルで撮影して、ああいう色ってスパッとでないでしょう?

 

蜷川:やっぱりフィルムの時みたいな色ってね。撮った後に、加工すればフィルムの時のような色が出なくはないんだけど、それもなんだか気持ち悪い。濃度は変えていても、ほとんど色はいじってないですよ。

 

南條:フィルム作ってる会社は、まだあるんですか?

 

蜷川:ほとんどないです。だから、いっぱい買って冷蔵庫に入れてたけど、それもさすがに色がでなくなっちゃったんで、ほとんどデジタルですね。こんな大きく変わらなきゃいけない時が、くるなんて思わなかった。

蜷川さんにとって
「未来ノマツリ」ってどんなもの?

メインプログラム・アーティスト 蜷川実花

「煌びやかなこと、わいざつなこと。いろんなものが全部ごっちゃに入ってるという、洗練されたものだけじゃないのがイイところ」

「境界線」のない作品って?

蜷川実花《Tokyo Followers 1》六本木ヒルズ アリーナイメージ

蜷川:まず思ったのが、みんなが参加できる作品にしたいなって。ステージが中央にあるんですけど、その両端にある小屋はフォトスペースにしようと。訪れた人が、小屋の中で写真を撮れるようにしたいんですよね。全てできるかは、まだわからないんですけど。そうしたいと思ってます。

 

私の写真の世界に、誰でも入ることできるんです。参加した人たちが、SNSとかで拡散してくれたらオモシロイ。ステージに出る側とステージを見る側の境がなくなるような作品になれば良いなって思っています。

 

南條:みなさん、SNSをやってるんですけど、今まで踏み込んでは来なかった。Instagramで、見栄えするものが世の中にどんどん出てくる気がしますね。

 

 蜷川:それは確かにあって、ファッションでもインスタ映えするもの。もっというと、アイテムに止まらず、整形技術もそうなっていくと思ってて。なんとなくですけど、“インスタ用の顔”ってやっぱりあるんですよ。

 

若いモデルの子たちでも、直接会うとギョッとするようなメイクに見えるんだけど、Instagramで加工して上がったものは、いい仕上がりなんですよね。なんだか、その中の世界に生きている人たちって増えてきている気がして。それは、無視できないというか、オモシロイ。今を象徴する出来事なんですよね。

 

南條:作品の写真を見てると、全体がステージみたいな感じですよね。あの中で、蜷川さん自身もパフォーマンス的なものをやってみようと思ってるんですか?

 

蜷川:はい。まだ調整中なんですが、あそこで道中のようなもの。チーム編成を作るつもりで、ダンサーや女の子を中心にして、ちょっと練り歩きみたいなパフォーマンスをしようと思ってますよ。

 

たぶん、できると思うんですよ。というか、もうやるかな!ここで言っちゃったしね(笑)。そこのステージで、パフォーマンスも発表するし、ステージ自体も作品だし、そこでいろんなものを撮って私自身も発信していくと思います。

 

南條:観客もそこに入っていくんですね。

 

蜷川:そうですね。出る側と見る側の境界線がないのって、本当に今の時代だからだと思うんですよね。特に日本は、すごくその傾向が強いと思います。そういう、コンセプトを持った大きなインスタレーションに仕上がると思いますよ。 

 

南條:シェイクスピアが世界は劇場であるっていってたけど、まさにそういう感じ。アメリカの政治のパフォーマンスみたいですよね。

 

蜷川:SNSがもつ意味がものすごく重要になってきていますもんね。

アートで日本をどうしたい?

南條:アートナイトをもっと国際化したいと思っていて、いろいろな国の人が出てくるようなイベントにしたい。今年はアジアのアーティストにお願いしたんですけど、蜷川さんはずいぶん、海外でやってますよね。日本と海外での発表の違いとか、日本ではもっとこうした方が良いてっ話はありますか?

 

蜷川:最近はアジアが多くて、とにかくエネルギッシュですよね。去年、台湾でかなり大きい展覧会をやったら、13万人も入ったんですよ。

 

台北市の大きさから考えるとものすごい数で、平日でも3時間待ちがあったっていうくらい。アートに対する興味がすごくあるのかなあ。熱狂的なんですよね。やっぱり体感するもの、アクティブなものが好きなイメージ。

 

例えば、自撮りスペースを作ると永遠にそこで撮っててくれたりとか。「いい観客」なんですよ。日本だと、斜に構える人たちが多い気がするんですよね。

 

南條:好奇心が旺盛ですよね。彼らは未来を見てるんですよね。

 

蜷川:また全然違うけど、上海に行った時にほとんど電子マネーだったんです。本当に未来化しているというか。

 

南條:僕もこの前上海いったんだけど、貸し自転車がすごい発達してるじゃないですか。自転車にあるQRコードをスキャンすれば、ステーションとかなくても、どこにでも置き去りにしていいんですよね。ものすごい勢いで爆発的に伸びてて。

 

蜷川:急にですよね。半年前にはなかった気がします。あと、決定権を持っている人たちが若いんですよね。今度、上海で展覧会をやるかもしれなくて、その関係者のギャルっぽい女の子に「実花を中国で有名にするわ!」って言われたんです。

 

彼女は、本当に決定権を持ってるからちょっとね。日本では、少し違う戦いになると思うけど、気合を入れて行きたいなと思う。

 

南條:恐れてないですよね。

 

蜷川:恐れてないし、本当に決められるから。テーブルで話したことが実現していく。オモシロさと、スピードを体感しましたね。

 

南條:日本の中にもね。もっと若々しく未来に向かっていく感覚とか、決めていく力とか。そういうの欲しいよね。アートナイトの1日で、それをやるのは難しいけど。

 

蜷川:でも、重要ですよ。一夜限りのお祭りなんですから。すごく贅沢でワクワクしますよ。

アジアに「風穴」を開けるイベントとは?

南條:ヨーロッパのアート展覧会って、だいたい美術史を参照してて、過去のいわゆる歴史なんですよ。でも、中国人は「未来」っていうわけ。そういうのは、日本も少し必要だと思う。

 

蜷川:必要だと思いますね。なかなか一気には変わらないんですけどアートナイトみたいに、みんなを巻き込んで。そこで、パワーがあるよっていうのを、可視化できるじゃないですか。

 

街も活性化されるし、「オモシロイじゃん!アートってカッコイイじゃん!」って、シンプルな事なんですけど、意外に伝わってないんですよね。

 

そこの風穴を開けられる一手になれればなって。

 

南條:アートナイトの最初の頃、震災の年なんですけど、台湾やシンガポールでプロモーション活動をしたんですよ。今後、そういう国際的イベントに育てたいんですよね。

 

蜷川:アジアの中で、日本がアートの中心になりたいですよね!

東南アジア・プロジェクト

「東南アジア・プロジェクト」は、東南アジアのアーティストを中心に、人々と協働しながら作品を発表するプロジェクト。六本木アートナイトのもう一つの見所です。

ナウィン・ラワンチャイクン(Navin Rawanchaikul)
OK Tower, 2016 Installation view at Nishiura village, Megijima,Japan Photo by Navin Production
ネオ・アンゴノ・アーティスト・コレクティブ(Neo Angono Artistsʼ Collective)
Angono Higantes,Big and Small photo credit:photo walk Philippines/whatsnewph.com

国立奥多摩美術館(Kokuritsu Okutama Museum) 24時間人間時計のためのドローイング

六本木アートナイト2017メインビジュアル Photo by Mika Ninagawa

・日 時:9/30(土)10:00〜10/1(日)18:00( ※会場によって異なります)

〈コアタイム〉[日没]17:27〜[日の出]5:36

※コアタイムはメインとなるインスタレーションやイベントが集積する時間帯です。

・場 所:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他 六本木地区の協力施設や公共スペース

・参加料:無料 

Licensed material used with permission by 六本木アートナイト実行委員会
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