観光客のためだけじゃない。町のための「宿」を作る理由

宿泊施設でも観光施設でも、そういったものはたいていの場合、町の「外」に向けて作られる。だけど、今年の冬に函館にオープンする予定の「SMALL TOWN HOSTEL」は、ここを訪れる観光客のためだけではなく、この場所で暮らす人のための宿でもある。その真意とは一体?

地元の町が寂れるって、
寂しいよね

「SMALL TOWN HOSTEL」のプロジェクトをリードしているのは、「箱バル不動産」の代表、蒲生寛之さんだ。

蒲生さんは4年前、故郷・函館にUターンした。蒲生さんの地元である西部地区は、市内でも特に過疎が進んでいる地区。寂れていく町並みを眺めながら「これではいけない」と危機感を覚えた。そして、仲間と「箱バル不動産」を結成。イベントやプロジェクトを通して函館の暮らしを見つめ、住民同士のつながりを作り、函館ならではの風土を育もうと活動をしてきた。

そんなある日。函館に関する、ある調査結果を目にする。それは…。

魅力的な都市ナンバーワン
住民の幸福度ワーストワン

ブランド総合研究所が行なった地域に関するアンケート調査で、函館は見事、魅力度ナンバーワンの都市に輝いた。函館山からの夜景に、おいしい海鮮。魅力度が高いのも納得だ。しかしその一方で、日本総合研究所が発表した「幸福度」に関する調査(人口20万人以上の中核市のうち一部を除く42市が対象)では、最下位をマークしたのだ。

蒲生さんは違和感を覚えた。外からの視点と中の視点、そこに大きなズレがあることに。同時に、「外から来た旅人と、そこに暮らす地域住民が交わることで、街の魅力を再発見できないか」と考えるようになった。そして…。

「そうだ、宿を作ろう」

観光客と住民がつながる場所。そして、それぞれが函館の暮らしを見つけることができる場所。その形を模索していた蒲生さんは、ゲストハウスを作ることを決意した。

舞台となるのは、築約100年の歴史がある「旧仁寿生命ビル」とその周辺。

この建物は、2015年秋、箱バル不動産のメンバーが中心となり保存に向けて動いていた建物だ。その努力が実り、2016年夏には函館市で63軒めの伝統的建造物の指定を受けた。そして、この建物をどう利活用していくべきかを考えながら、「旧仁寿生命ビル再生プロジェクト」を進めてきた。

まず、「旧仁寿生命ビル」は、日本の道100選にも選ばれた地元の坂「大三坂」から、「大三坂ビルヂング」に改名された。そして、2017年12月にはここで複合商業施設を、そしてその後方にある古民家では、函館の暮らしを見つける宿「SMALL TOWN HOSTEL」をオープンする予定だ。

「SMALL TOWN HOSTEL」では、函館が日本のストーブ発祥の地ということもあり、蓄熱式薪ストーブを取り付けるとのこと。他にも、地域の学生が北海道産ホタテ貝入りの漆喰塗りを手伝ったり、地域住民が一緒になって西部地区のマップを作ったりしながら、着々と準備が進められている。

結局、一番大切なことって?

私も地方出身なので、町おこしの問題は人ごとではない。町が寂れ始めた時私たちは何をすべきなのか、何度も考えたことがある。

外に向かって情報を発信するのはもちろん大事だ。けれど本当に重要なことは、そこに住む人たちの町への愛着だと思う。自分たちが町を大切に思えること、そして愛していけること。

だから、「SMALL TOWN HOSTEL」の内側から溢れ出るポジティブなエネルギーは、同じような問題を抱える町にとって、ひとつの希望になるんじゃないか、と感じている。

現在、クラウドファンディングサイト「Readyfor」にてこのプロジェクトのサポーターを募集している。締切は8月31日(木)23:00。

Licensed material used with permission by Readyfor
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。