この映画を観たら、あなたもきっとパリで迷子になりたくなるはず

主演と監督のクレジットには、アベル&ゴードン。何を隠そう2人は夫婦なのだ。夫は、ドミニク・アベル。妻は、フィオナ・ゴードン。また、2人のバックグラウンドがじつにユニークだ。映画を観る前に知っておくとより作品を楽しめると思うので、周知の人もいるかもしれないが、念のために紹介しておく。

じつは、この夫婦、正真正銘の現役道化師。出会いは、パリにある「ジャック・ルコック国際演劇学校」。そこで、演劇について学んだ後、ベルギーやフランスを拠点に道化師としてのキャリアをスタートした。やがて、創作演技で世界各地を巡業して、その後、映画の世界へ足を踏み入れたという変わったキャリアを持つ。

2人の真骨頂は、道化師ならではの身体表現で魅せる作風にあり、ジャック・タチやバスター・キートンを思い起こさせる。劇中での不思議な動きやダンスシーンは、独創的なスタイルを生んでいる。 今回、長編4作目となる『ロスト・イン・パリ』は、世界の映画シーンで注目を集めている。

人生の本質に迫る
コメディ

この作品全体を包むエッセンスは、コメディである。しかし、登場人物は決してハッピーではない。人生経験に乏しい女、ホームレスの男、そして、認知症を発症させた老婆。この3人が人生に迷いながら現実に立ち向かうというストーリー設定だ。

それにもかかわらず、スクリーンから悲壮感が微塵も伝わってこないのは、絶妙に仕掛けられた笑いのおかげ。

アベル&ゴードン曰く「この映画では、死、選択の自由、孤独や団結をテーマにして、本質的な物事を描くためにユーモアを利用した」とのこと。その結果、暗さや惨めさのない現代的なストーリー展開となっているのだ。

思わず夏のパリを
訪れた気分に

本作品を明るくしているもう1つの要素は、夏の光が溢れるパリにある気がする。

実際にパリの街中で撮影された映像には、エッフェル塔、セーヌ川、パリの自由の女神といった名所だけではなく、古いアパルトマンや街角のカフェ、さらには、コインランドリーまでのリアルなパリの姿を確認することができる。それも、大きな見どころの1つ。

ときおり、強い日差しに照らされた街並、もしくは、どこまでも美しく輝くセーヌ川沿いの夜景、さらには、エッフェル塔から街全体を眺める朝焼けのシーンなどがスクリーンに登場すると、まるでパリに訪れた気分に浸れるだろう。

種明かしをすると野暮になるからやめておくが、ラストシーンでは思わずホロリとなってしまった。観終わった後は、きっとパリで迷子になりたくなるはず。

フィルムの細部にまで凝ったカラーリングは、まるで「飛び出す絵本」を思わせる。アベル&ゴードンのコミカルな動きはクセになること間違いなしだ。気になる人は、以下のトレーラーをチェックしてみよう。

『ロスト・イン・パリ』
2017年8月より渋谷ユ−ロスペースほか全国順次公開!公式サイトは、コチラ

©Courage mon amour-Moteur s'il vous plaît-CG Cinéma

Licensed material used with permission by ロスト・イン・パリ
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。