魅力的で厄介な女性たちに育てられた「20世紀少年」の物語

思春期の少年には、子どもから大人へと成長する過程で、避けては通れない“通過儀礼”がある。母親との衝突だ。母からの無条件な愛は感じるのだけれど、一方、母という「巣」から抜け出して、新しい世界に足を踏み入れたいとも想う。

映画『20センチュリー・ウーマン』を観て、久々にそんな感情を思い出した。

マイク・ミルズ監督の最新作は
自身の母親がモデル

前作『人生はビギナーズ』で、75歳でゲイだとカミングアウトした自らの父親と自分自身の関係を描いたマイク・ミルズ監督。じつに6年ぶりとなる本作では、自身が生まれ育ったサンタバーバラを舞台に、今度は、自らの母親をモデルに母と息子の物語を描いた。

脚本は、前作同様、マイク自身による書き下ろし。長編映画3本目にして、アカデミー賞脚本賞にノミネート。母と息子、二人の繊細な心の動きを丁寧に描写した内容は、米国をはじめとして多くの賞賛をよんでいる。

女性たちから「男らしさ」を
学ぼうとする少年に共感

ストーリーは、1979年夏。

中心となる登場人物は、55歳のワーキングマザー兼シングルマザー、そして、15歳の一人息子。第二次大戦前の大恐慌時代に生まれた母と「新人類世代」の息子は、一向に噛み合わない。自立心旺盛で自分を曲げない母親の性格か、思春期特有の息子の反抗心からか、お互いを慈しんでいるのだけど、思いはなかなか交わらない。

そこで、母親は2人の女性に応援を頼むことになる。1人は自由奔放な写真家。もう1人は挑発的な幼なじみ。3人の厄介で魅力的な女性たちから、果たして少年はどんな体験を得て、どのように成長するのか。可愛い弟を見守るつもりでスクリーンに向かって欲しい。

母親から巣立って、本当の意味での男になろうと奮闘するなかで、男らしさとは何かを3人の女性たちから見出そうとする少年の姿に、僕は思わず「ガンバレ」と心の中でエールを贈っていた。エンドロールが流れたときの爽やかな気持ちは、この映画を観た者だけが味わえる格別なものだ。

『20センチュリー・ウーマン』
2017年6月3日(土)より、丸の内ピカデリー/新宿ピカデリーほか全国公開。公式サイトは、コチラ

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Licensed material used with permission by 「20センチュリー・ウーマン」
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