二人と一緒に愉快な旅に出よう。映画『僕とカミンスキーの旅』

60年代、NYのポップアート界で盲目の画家として注目されたマヌエル・カミンスキーって知ってるよね?

アンリ・マティスに師事し、パブロフ・ピカソに嫉妬された画家。交友関係は、アンディ・ウォーホルから、モハメッド・アリ、アルフレッド・ヒッチコック、ザ・ビートルズ、ウッディ・アレンまで、幅広い。

カミンスキーは、最初の師であるマティスのフォーヴィズム(大胆な色彩と荒々しい筆づかいが特徴)からスタートして、シュルレアリスムにも惹かれていく。また、若者らしいディレッタンティズム(学問や芸術を趣味として愛好すること)に傾倒した時代を経て、自分固有の表現を見つけるのはかなり晩年だったようだ。

カミンスキーを開花させたのは、ポップアート。しかし、それはまったくの偶然で、大きな誤解によるものだったという。ポップアートのつもりではなかった大きな絵が、ある点で“そうも見える”というのが理由だった。カミンスキーの名を一夜にして広めたのは、絵のタイトルのせいもあった。

…というのは、すべて作り話。

そう、カミンスキーなんて画家はどこにもいないのだ。でも、美大生に聞けば十人中何人かは「聞いたことがある」なんて答えが返ってきそう。案外、あなたもそうだったりして。実は、僕も半信半疑だったんだ。だって、実際にいそうだもんね。

それくらいカミンスキーの人物像が、巧みに虚実となってミックスされている。劇中に登場する美しい絵画も、わざわざこの映画のためにアーティストによって描かれ、海外では実際に「カミンスキー展」も開催されたのだとか。冗談をやるなら、とことんやりきるセンスには脱帽。

この映画を観るなら、大人のためのおとぎ話やホラ話という前提で、気持ちよく騙されたい。よく練り込まれた「フェイク感」を味わいながら、罠にハマっちゃうのが、正しいスタンスだといえるだろう。

原作は、ドイツ生まれの小説家ダニエル・ケールマンによる『僕とカミンスキー』。18万部のベストセラーとなり、26ヶ国語に翻訳されている。

85歳のカミンスキーと31歳の青年といった50歳以上も年齢が離れた二人が繰り広げる珍道中。旅の途中ではの数々のトラブル。果たして、どんな結末が待っているのだろうか…。

二人が旅をするのは、スイス、フランス、ドイツ、ベルギーといった西ヨーロッパ。美しくて、雄大な景色が拡がる映像美にも注目してもらいたい。

ゴールデンウィークにでも、二人と一緒に愉快な旅に出かけてみては?

『僕とカミンスキーの旅』
2017年4月29日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー。公式サイトは、コチラ

Licensed material used with permission by 『僕とカミンスキーの旅』
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。