「イギリス英語」に興味がある人だけに読んでほしい、少しマニアックなコラム

突然ですが、「イギリス英語」と聞いて、どんなことが頭に浮かびますか?

ハリー・ポッター?
ベネディクト・カンバーバッチ?
それとも、何となく「紳士・淑女」っぽい感じ?

これがイギリス英語だ!というハッキリとした知識がある人、あるいはイメージが描ける人って、あまりいないんじゃないかと思います。 

 

ここでは「FLUENT IN 3 MONTHS」の記事の中から、イギリス英語に関して投稿されたものをご紹介することにしました。 

筆者はイングランド出身のGeorge Milloさん。

ネイティブならではの視点で

・イギリス英語の迷信
・UKとイングランドの違い
・アメリカ英語との比較

まで詳しく解説してくれています。

 

ハッキリ言って、けっこう長い上にマニアックな内容です!
イギリスの英語や文化に興味の無い人には苦痛かも知れません...(笑)

イギリス英語にまつわる
3つの「迷信」とは?

ロンドンの景色

「イギリス人っぽい英語」の極意を説明する前に、まずはイギリス英語にまつわる3つの「迷信」を取り払いたい、と語るGeorgeさん。

1. そもそも「ブリティッシュアクセント」って?
2. 「United Kingdom」と「England」って違うの?
3. イギリス人が話すのが「正真正銘の英語」なの?

ひとつずつ見ていきましょう。

01.
「ブリティッシュアクセント」
って、そもそも何?

まず言っておきたいのが、そもそもブリティッシュアクセントなんてものは無いんだということ。

僕たち英国人は、自分たちの話す英語を「ブリティッシュアクセントだ」なんて言わないし、そんな風にも思っていないよ。

アメリカのテレビ番組なんかではイジられたりするけどね(笑)。

「ブリティッシュアクセント」という呼び方じたい、他所の人が使うものなんだとGeorgeさん。さらにこう続けます。

むしろ、UKでは次の「4つの英語」をざっくりと区別するんだ。

(1)英語
(2)ウェールズ・アクセント
(3)スコットランド・アクセント
(4)北アイルランド・アクセント

これらのアクセントはひとつに括れるようなものじゃなくて、どれも随分違っているんだよ。

考えてみれば、日本語だって地域によってアクセントが違いますもんね。ひと口に「ブリティッシュアクセント」とまとめてしまうのは無理がありそうです。

02.
「United Kingdom」
と「England」って違うの?

ところで、次の3つの呼び方を正しく区別できているだろうか?

・United Kingdom(ユナイテッド・キングダム)
・Great Britain(グレートブリテン)
・England(イングランド)

あるいは、スコットランドの「立ち位置」とか。

実際、そんなに難しくないから調べてみてほしい!このYouTube動画を見ればだいたい分かるはず。

……恥ずかしながら、この記事を執筆するまで、ぼくも正確には理解できていませんでした。

5分程度の動画なので、気になる方はチラッと勉強してからまた戻ってきてください!

03.
イギリス人が話すのが
「正真正銘の英語」なの?

それが、実際のところ、かなり疑わしい問題なんだよ。

何となく、イギリス人の英語が「オリジナル(原型)」で、アメリカやカナダ、オーストラリアなどの国々で話されるのは方言みたいなイメージがあると思います。

しかし、言語学者が言うには、イギリス圏におけるアクセントはここ数百年間で劇的に変わったそう。それこそ、英語がアメリカに渡って「訛る」よりも、はるかに大きな変化が起こったと言われています。

むしろ、現代のアメリカ英語のほうが、1776年当時に話されていた「英語の原型」に近いというんだから驚きですよね!

イギリス英語
vs
アメリカ英語

フラッグ

よく比較されますが、そこにはどんな違いがあるのでしょう?

1. ロウティック・アクセント
2. 母音の発音
3. ボキャブラリー

この3つのテーマに沿って見ていきましょう。

01.
ロウティック・アクセントの違い

まずはじめに、「ロウティック・アクセント(rhotic accent)」というものについて説明したい。

カンタンに言うと、英単語の中に"r"の文字が入っていた場合に、舌を押し上げて"r"を「こもらせて」発音するのが「ロウティック・アクセント(rhotic accent)」。

アメリカ、アイルランド、スコットランドなどに見られる発音方法なんだ。 

「ロウティック・アクセント(rhotic accent)」という言葉は聞いたことがないとしても、みんな何となく感覚的にわかっているはず。

アメリカ英語では"r"で音がこもり、イギリス英語ではこもらない、みたいな。

一方で、イングランドでは多くの場合「ノン・ロウティック・アクセント(Non-rhotic accent)」が話されている。

つまり、

・子音の前に"r"が来るとき
・単語が"r"の音で終わるとき

"r"は基本的に発音しないんだ。

 

例えば、ぼくの名前は「George」なんだけど、発音は

jaw-j /dʒˈɔːdʒ/

という感じになる。

どこにも"r"の音は入ってこないでしょ?

「ノン・ロウティック・アクセント(Non-rhotic accent)」は、イギリスの影響下にあったオーストラリアやニュージーランドなどでも見られるようです。

"r"で舌を持ち上げて音をこもらせるかどうかは、さまざまな種類の英語の「線引き」の一つとして結構わかりやすいんですね。

02.
母音の発音の違い

英語の「母音」の発音の仕方は、ここ数年でけっこう変わってきているんだ。以前は異なる発音だった音が一緒になったり、反対に、同じように発音されていたものが変わってしまったり。

例えば、英国では

・merry(楽しい)
・marry(結婚する)
・Mary(人名)

という3つの単語の「母音」は、それぞれ別の発音の仕方をする。でも、ほとんどのアメリカンアクセントではこれらの発音を区別しないんだ。

この他にも、例えばぼくは

・flaw(欠点)
・floor(床)

は同じように発音するけど、アメリカ英語では別の発音になる。"r"の有無だけじゃなくて、flawとfloorでは「母音」も変わってくるんだよ。

「言葉は生きものである」とは言いますが、たった数年単位でも音に変化が起きたりするんですね。

03.
ボキャブラリーの違い

ここでいう「ボキャブラリー」とはスラングのことではなく、どちらかというと言葉の「使い方」の話。

アメリカ英語と比べて、とくに違うところでいうと

・「週末に」と言いたいとき...

イギリス英語では at the weekend
アメリカ英語では on the weekend

前置詞の使い方が違うんです。

・郵便に関しては

イギリスでは「Royal Mail」が郵便物(post)を配達し、
アメリカでは「Postal Service」が手紙(mail)を配達する

ややこしい…。

・病院でも

イギリスでは、「病院」という建物の中にいることをあらわすときは「in the/a hospital」。患者として入院していることをほのめかすなら「in hospital」、という風に区別する

ちなみにアメリカ英語ではどちらも「in the/a hospital」だ、とGeorgeさん。  

・対比をあらわす接続詞「while」...

イギリスでは「whilst /wὰɪlst/」も普通に使われる

確かに、ぼくの友人のイギリス人もよく使っていた気がします。

・一触即発...?

アメリカ英語では、怒っている状態を示すのに「mad」という単語が使われる。しかし、イギリスで「mad」といえば、文字通り「クレイジーな」とか「狂っている」という意味合い。

この「違い」のせいで一大事になったことがある。

アメリカのビル・クリントン元大統領が、会談のあと、英国の議員のことを「the maddest person in the room」と表現して大騒ぎになったんだよ。ビル・クリントンとしては「会議室の中で一番怒ってた人物」ぐらいのことが言いたかったんだろうけど。

英国のコメンテーターたちも、自国の議員が「頭のおかしなヤツだ」と侮辱されたと勘違いしたんだ。

冗談みたいな話ですよね(笑)

同じ言語でもこのような齟齬が生じるのだから、異文化コミュニケーションが難しいのは当たり前なのかも知れません。

イギリス国内の
「イギリス英語」

ここまでは、主に「イギリス英語とアメリカ英語の違い」について見てきました。しかし、イングランドの中だけでも、言語の「地域差」は数え切れないほどあるんです。

中心街から車で2時間、どの方角でもいいからテキトーに進んでみると、人々が喋っている言葉が完全に変わってしまうんだ。

「イギリス英語」と聞いておそらくみんながパッと思い浮かぶのは「RP(Received Pronunciation)」と呼ばれている、いわゆる「posh(お上品)」なアクセントだろう。

でも、実際「RP」はスタンダードというわけじゃなくて、主にイングランド南部でしか話されてないんだ。北部は北部で、まったく違うアクセントを持っているからね。

日本でも、訛りのキツイ方言だと全然理解できない場合があると思います。きっと、ああいう感覚でしょうね。

さいごに

かなりボリュームのある内容でしたが、Georgeさんに言わせれば、まだ「氷山の一角」に過ぎないとか。英語は奥が深いですね...。

さらに深い内容まで知りたいという方は、英語の勉強も兼ねて、こちらから原文に飛んでみてください。きっと新しい発見があるはずです。

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