史上最年少で最優秀女優賞を受賞!チベットの天才少女が出演する『草原の河』

チベットと聞いて思い出すのは、頭痛だ。

僕が滞在したのは一週間。映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット』にかけて“セブン・デイズ”の滞在だったのだが、毎朝ひどい頭痛に悩まされた。いわゆる高山病。何しろ、首都であるラサの標高は3,358m、飛行機のタラップを降りて歩きはじめたとたん、息苦しくなったのを昨日のことのように覚えている。

でも、それは序の口だった。

平均標高が4,000mともいわれるチベット。標高4,500mのヤムドゥク湖を目指した僕は、一晩中、頭が割れるような痛みに耐えなければならなかった。しかも、滞在した年の瀬は、チベットで一番寒い時期にあたる。なのに、ラサ以外のホテルでは暖房は一切なく、バスタブにお湯をためても5分もしないうちに冷水になってしまうほど。

頭痛に加えて、凍てつく寒さ。重ね着をして持参した寝袋にくるまりながら、修行僧の気持ちを味わっていた。

しかしながら、考えてみればチベットを唯一無二にしているのは、この大気中の酸素量が平地の半分以下、冬は気温が−20℃以下といった厳しい自然環境といえる。それによって、チベット族は外界から隔てられて、独特の文化も育くまれてきたのだ。

©GARUDA FILM

©GARUDA FILM

©GARUDA FILM

©GARUDA FILM

©GARUDA FILM

©GARUDA FILM

これまでにも、チベットを舞台にした映画は日本で数多く公開されてきたが、チベット人の監督作は皆無。日本初の劇場公開となるのが本作『草原の河』だ。

物語の舞台になったチベット・アムド地区の牧草地帯は、本作でメガホンをとったソンタルジャ監督の故郷。乾いた大地、世界のどこよりも蒼い空、そして、ストーリーの軸となる名もなき河。どの景色も圧倒的な映像美へと昇華しているのは、チベット人であり牧畜民の中で育ったというアイデンティティにほかならない。

物語は、過酷な自然環境と向き合いながら、力強く生きる家族が描かれている。なかでもひときわ目を引くのが、一人娘役を演じたヤンチェン・ラモだ。これまで演技経験がなかった彼女だが、撮影はほぼ1テイクOKだったとか。監督にも「天賦の才能を持っている」と言わしめたほど。その無垢な演技は、上海国際映画祭でアジア新人賞と最優秀女優賞を最年少で射止めたことでも、大きな話題となっている。

また、およそ1年の撮影期間を通じて、チベットの四季折々のリアルな表情を垣間見ることができるのも、この映画の大きな魅力。劇場のスクリーンから、チベットへとトリップできることは間違いない。

『草原の河』
2017年4月29日(土・祝)より、岩波ホールにてロードショーほか全国順次公開。公式サイトは、コチラ
配給:ムヴィオラ 監督・脚本:ソンタルジャ 撮影:王 猛 出演:ヤンチェン・ラモ、ルンゼン・ドルマ、グル・ツェテンほか

Licensed material used with permission by ©GARUDA FILM
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。