アナタに必要なのは「ToDoリスト」じゃない

「ToDoリストなんて、ロボットのためのシステムに等しい」、こう断言するのは、脱サラしてミレニアル世代に向けたコンサル会社を立ち上げた、起業家Daniel Dowling。

「するべきこと」を洗い出したところで、それをこなすことはタスクに過ぎない。取り入れるべきは「好きなこと」、つまりはLoveToDoだというのが彼の主張。でも、その長〜い考察は、洋の東西も触手もを問わず、シゴトとの向き合いかたを改めて考える、いいキッカケをくれるものでした。

ToDoは「タスク」でしかない

人間は自立するにつれて、お金を稼ぐためだけに機械的に働くようになる。これは経験から言えること。それこそがオトナの人生?単にタスクをこなすだけが本当に人生なのでしょうか。私は機械的に“こなしていく”だけの日々にほどほどウンザリしていたのです。

もっと「人間的」な仕事がしたい、それが辞職の理由。それまでのToDoリストに別れを告げ、新たにはじめたもの、それが「LoveToDoリスト」でした。

有史以来、人類はポジティブな感情に従うことで繁栄をつづけてきたはず、つまり、同じように私だって自分が好きなことに熱中できれば、今よりもずっとキャリアアップできるのではないか、こう考えた訳です。では、その仮説がどのように実証されていったのか、まずはそこからお話ししていきましょう。

タスクをこなすだけならば
機械と同じ

仕事でいくら業績を伸ばしても、本当の意味でのシアワセは手に入らない。それに気づいた私は、生き方を大きく変えることにしました。それまでの私は身を粉にして会社に貢献する、“できた従業員”といったところ。

けれどToDoをこなすだけでは、そこそこのアイデアしか生まれてはきません。私のクリエイティビティはまったく発揮されず、そんな毎日に充実感を覚えることもなかったわけです。自分はまるでロボットのようだ、といつも悶々とした想いを抱いていました。

窓からPCを投げ捨ててこのままどこかに逃げ出してしまいたい…そんな衝動もたびたび。結局、心にフタをすることができず、こうして仕事を辞めることに。

「自分のために働くこと」
の意味

さて、仕事から解放され「ひとり」となって、すぐにはじめたのがLoveToDoリストです。これが私に「自分のために働く」ことの本当の意味を教えてくれたのです。

自分がやりたいと思うことをどこまでも追求する。例えば本当にいい記事を丸1日、あるいは1週間かけて書く自由さえも手に入る。つまり、タスクだけの仕事から解放されたことで、私は自分の好きなものに多くの時間を割けるようになったのです。

しかし、そこには重大な落とし穴が。

自由を知ってからというもの、私の生活は「ある恐怖」に脅かされることになりました。私たちは自分で何かを生み出さない限り、生きていくのはほとんど不可能。これは、フリーランスになりたての人がよく直面する問題です。「なんとか食べてはいける。だけど常に不安」、みたいな。

けれど、自分の人生を生き、そして自分が好きなことができればスキルも高まる。それに気づいたおかげで、私はその恐怖を乗り越えることができました。生活費を稼ぐために試行錯誤する過程で、結果的に「生産性」とか「想像力」も身につきましたから。

モチベーションを高めるには
好きなことに時間をとる

例えばハイキングに山へと出かけたとき、斬新で突拍子もないアイデアがふと湧いてくることがあります。デスクに向かってカンヅメになる代わりに、ビーチバレーするときにも。競争心が芽生え「もっと良くしよう」なんて気になるんでしょうね。

常にこういう感覚があるときは、大きな商談でも上手くいったり、執筆活動がはかどったり。自分にとってプラスに働きます。また、ランチを食べた後で横になり、ぼ〜っとただ雲を眺めてみるのもいいでしょう。沈黙がひらめきを与えてくれることも多いものです。

つまり、好きなことで満たされたLoveToDoリストに従って生きることは、自分の生活や仕事の充実感を何倍にも膨らませてくれるのです。

自分と向き合うことで
リラックスして仕事にも望める

とはいえ「ただ好き勝手に生きればいい」というものじゃない。

私はこれまで以上に規則正しく過ごしているし、今までにないくらい生産的になります。取材と同じくらい情熱的にギターの練習をする。そういう意味では、いわゆる普通のToDoリストもこなさなければいけません。たとえば「〇〇さんと会う」とか、「××の件で電話する」といったような。

だけど、以前ほどひっ迫したり、嫌な気持ちになることはありません。退屈なタスクの中にさえ楽しさを見出してしまうほどに。このモチベーションの向上は、まさしく青天井。どんなことだって、ポジティブに捉えることができているからです。

週末が来れば、あらゆることから解放されます。仕事のことを考えて忙しくしないで済む、だからめいっぱいリラックスして「充電」に充てられる。そうして好きなことだけを好きなだけできるのです。リラックスして仕事に臨むこと、それが最高のパフォーマンスを発揮するためのただひとつの条件なのですから。

「好き」を組み込むには、
しっかりした自制心が必要

実際、好きなことに充てられる時間を増やすだけなら、仕事を辞める必要までありません。もちろん、毎週水曜日の午後にこっそり職場を抜け出してバイクツーリングに出かけるならば、話は別。上司がいい顔をする訳がありませんよね。

忘れていけないのは、「仕事はあくまでも仕事」だということ。すべてが楽しくうまくいくなんてあり得ないし、大変なこともあるから給料が発生する訳で。

つまり、ただのToDoリストに「Love」を付け加えるのは、楽しくするための万能な方法にはなり得ないのです。それまで何となくデタラメにやっていた「楽しいこと」を、意識的に、そして規則的に行うための戦略。そして、より活力的に「ひらめき」を得るための手段。もちろん、そこには自制心が求められることを忘れないで。

自分の「好き」を集める
LoveToDoリストのつくりかた

では、ここから具体的な手順について紹介していきます。

リストをはじめるにあたって、今日一日の仕事の後にでも、1時間くらいかけて「自分を元気付けてくれるものが何なのか?」を考えて書き出してみましょう。毎日続けられるものの中から最も好きなこと、そこからスタートしていきます(一度もやったことがないものはまだ加えません)。

すぐにアイデアが尽きてしまったら、昔やっていたことを思い浮かべるのもOK。子どものころの体験でも、楽しかったことであれば何でも書き出していきます。

これができるようになったところで、今度はもう少しだけ広げていきましょう。トライしたことがなくても、心惹かれるものがあれば書き入れて。

さあ、次はいよいよ実行に移すとき。

来週のうちに 現実的に達成できそうなものをリストから2つ3つ選んでみます。そして、自分の予定の中にLoveToDoを組み込んでみましょう。カレンダーに書き込んだ瞬間から、あなたの「願望」や「好きなこと」はれっきとした「予定」になりました。電話でのカンファレンスやプロジェクトの締め切りと同じように、「守る」必要が生まれてくるのです。

ちなみに私のLoveToDoリストはこんな感じ。

・瞑想をする
・書きものをする
・全力で走る
・30分ごとにパソコンから離れ、腕立て伏せ
・小説を読む
・ギターを弾く
・歌を歌う
・犬と遊ぶ
・感謝を示す
・雲を見上げる

必ずしも一日のうちにすべてをやり遂げる必要はありませんが、たいていの場合、ほとんど消化できるはず。リストに組み込まれることで、それが「定期的なアクティビィティ」になっているので。

次は一週間単位で見ていきます。

毎日はできないような大きなこと」を設定するのはこっち。

アロヨモノーリス(スペイン)でハイキング
・週2日はバレーボールの練習に参加
・週2回はロッククライミングに行く
・土曜日はダブルスの試合に出る
・合唱の練習に行く
・甥っ子、姪っ子と過ごす
・河辺にある一番高い木に登る

プロの歌手でもない限り、ToDoリストに「歌う」なんて項目は、まず入らないはず。仮にそれが「本当にやりたいこと」だったとしても、実際にスケジューリングして「行動」まで落とし込んでいる人は、きわめて少ないのです。

といった具合に、ToDoリストに「好き」を加えることで、仕事にも身が入るようになり、かつて煩わしく感じていた「雑務」でさえ楽しめるようになる。これがLoveToDoリストの効果なのです。

Licensed material used with permission by Daniel Dowling
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。