スケートリンクを遮る「明らかにジャマな壁」の持つ深〜い意味

カナダ・マニトバ州南部の町ウィニペグを流れるアッシナボイン川。一面が厚い氷に覆われるこの時季は特設スケートリンクとして、人々のレクリエーションの場に変わるそうだ。ここに2月のある日、凍った川を横断するようにオレンジ色の「壁」が現れた。

いきなり分断
誰が見たってジャマでしょう!

じつはこれ、「Open Border」と題されたインスタレーション作品。、ウィニペグ市内で毎年開催される雪まつり「Winnipeg Warming Huts」で、今年のアウトドア・アーキテクチュア部門のウィナーに選出されたもの。

幅36メートル、高さ3メートルを超える支柱にビニールプラスチック製のストリップがだらんと垂れ下がった姿はカーテンのようでもあり、ビビッドなオレンジが雪景色にひときわ目を引く。

それにしても、なぜリンクのジャマになるこの場所にわざわざ設置したのか。そこにこそ、Open Borderの重要な意味が込められていた。

容易に通過できることが重要な
「物理的な壁」

画像からも分かるとおり、人々はこのBorderに差し掛かると、オレンジのカーテンを手でかき分けてくぐらなければいけない。これじゃジャマで仕方ない。けれど、子どもだって簡単に通ることができる。人々を遮断する境界ではなく、これは誰でも容易に通過することのできる“物理的な壁”だと、製作者のデザインラボ「Atelier ARI」は強調する。

物理的な壁…。

就任からわずか5日後、トランプ大統領は選挙戦から公約に掲げてきたメキシコとの国境を隔てる壁の建造、さらには不法移民の強制送還を急ぐ2つの大統領令に署名。「物理的な壁をただちに建設する」としたトランプの強硬姿勢に、いま世界がどう反応しているかを、誰もが渡れるこのオレンジ色の境界で示している、というわけだ。

カーテンの中では、
みな同じ人間

Open Borderには、もうひとつ心に響く仕掛けがあった。

前後のカーテンの隙間には、人ひとりがすっぽり隠れるほどの内部空間がある。ひとたび銀世界からこのカーテンの内側へと入ってしまえば、目も、髪の毛も、肌の色さえも見分けがつかないということ。つまりはどんな人だって、みんな同じに見える。

「国境のない国は国ではない」、国土安全保障省の式典でこう述べた米大統領。皮肉にもこの開かれた境界では、人と人とが自由に行き来できるのに、本物の壁はそれを分断しようとしているようにも思えてしまう。

Licensed material used with permission by Atelier ARI
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。