心の回復力「レジリエンス」が大切なんです。

嫌なことがあってもすぐに立ち直ってしまう人のことを「あいつはポジティブな人間だ」なんて言いますよね。でもじつは人間は誰でもこの力を持っていて、うまく活かす法則を知らないだけだったとしたら?

この力のことを「レジリエンス」と呼びます。

金森秀晃氏の著書『凹んだ数だけ強くなれる29の法則』を参考に、レジリエンスとは何か、を見ていきましょう。

レジリエンスは
誰でも身につけられる「技術」

レジリエンスは一般に「復元力」「回復力」などと訳されます。

人の生態には環境変化に対する復元力が備わっていて、安定性や恒常性が備わっていると考えられています。アメリカ心理学会の定義によれば「逆境やトラブル、悲劇、脅威、強いストレスに直面したときに、適応する心理的なプロセス」とされています。

特に知ってもらいたいのは「レジリエンスは後天的なものであること」です。つまり、法則さえ知ってしまえば、誰でも身につけることができるのです。

社会的にうまくいっている人と
うつ病の人の違いって?

一部上場企業の役員の方々やプロのサッカー選手など、社会で「一流」の活躍をしている人たちと、うつ病に悩まされ、仕事を辞めたくなってしまった人、もしくは人生を辞めたくなってしまった人がいると思います。

じつはこの人たちを比較すると「家柄、能力、容姿に大きな差異は見られない」と、延べ15,000人以上のカウンセリングを経験してきた金森氏は言います。

異なっている点はたったひとつ。「困難や失敗の捉え方」とのこと。

一流の人々は「困難」や「失敗」を成長の糧として解釈し、能力として蓄積していきながら行動を起こし続け、さらなる失敗や逆境を求めて、その過程をどこかで楽しんでいるのです。

もちろん、彼らは最初からそんなことができたわけではありません。彼らは大きな失敗をしたとき、絶望している自分を俯瞰して、客観的に眺めることができるようにしたのです。

困難を掘り下げていけば
壁は「階段」だとわかる

絶望しているときに「自分を客観視しろ」と言われても、すぐには難しいと思います。

ですから、まずは自分が感じたマイナスな感情や違和感に対して、それを丁寧に掘り下げていくことが大切です。まるで好きなことや熱中していることを突き詰めていくように掘り下げていくと、その絶望感の背後関係が見えてくるのです。

たとえば、威圧的に声を荒げる人は苦手だとか、休みの日にも急遽仕事に呼び出されてプライベートな時間が取れなくなるのは困るとか、本当は教育者になりたいのに周りがみんな就職活動を始めてしまって焦る、とか。

そうやって背後関係を丁寧に掘り下げてみると、ぼんやりと黒く立ちふさがっていた壁のように感じていたものが、じつは一段一段上ることができる「階段」だということに気がつくのです。

つまり、立ち向かうのは不可能だと思い込んでいた事柄に対して、実行可能な小さいことを見出すことができるのです。そのわずかな一歩が新たな感情や思考をもたらし、以前は感じなかった希望を抱くようになります。これが、本来は誰もが持っているレジリエンスを強化させることにつながるのです。

重要なのは「階段の最初の一歩を見つけて、踏み出すこと」です。

他人と過去は変えられなくても
未来と自分は変えられる

うつ病になってしまう人々は、一流の人々と比べて「時間」と「空間」の概念をコントロールできない傾向があります。

たとえば「時間」のコントロールができないと、いま抱えている問題や悩みが永遠に終わらないじゃないか、という思い込みに陥ってしまいます。レジリエンスを発揮できる人は「他人と過去は変えられないが、自分と未来はいくらでも変えられる」と考えます。過去に対する捉え方を変え、他人に対しても自分のアプローチを変えれば未来を変えていく可能性が広がっていくのです。

また、「空間」をコントロールできない人というのは「自分の課題」と「他の課題」を分離できていない人のことを言います。たとえば道が渋滞していたり、大切な友人が病気で亡くなってしまったり。これらは、やみくもに焦ったり悲しんだりしてもどうにもなりません。

できること(自分の課題)と、できないこと(他の課題)を明確にして、自分にできることに力を注ぎ込んでみましょう。たとえば渋滞にハマっている時間をカフェ空間と想定し、友人との会話を楽しんでみたり、亡くなってしまった人を胸に抱き、自分を見守ってくれている存在として、心の糧にするのもいいでしょう。

「なぜ?」に
こだわってみる

金森氏が「江戸時代のミスターレジリエンス」と考えている人間が、吉田松陰なのだといいます。松陰は「日本を守りたい」「日本の役に立ちたい」という純粋な志のもとに行動しましたが、己の信念を信じすぎることからルールを逸脱し、無茶をすることが多く、友との約束のために掟を破って脱藩したり、黒船に密航しようとして失敗して投獄されたり、その中で友を病気で失ったりと、人生は逆境の連続でした。

しかし彼はその志を曲げず、つねに「自分の信念を試されているのだ」と自らを奮い立たせていたと言います。では、この松陰の強さの秘訣はどこにあるのでしょう? それはひとえに志のなせる業ですが、その源泉は「なぜ」にこだわる力なのではないでしょうか。

社会的な成功を収めている人は例外なく、「なぜ」にこだわっています。なぜ働くのか、なぜ勉強するのか、なぜこの仕事がやりたいのか。しかし、そう言われてもひとりで悩んでいるうちに人生が終わってしまう人も多いでしょう。

そこで「なぜ」に対する回答を無理やりにでも設定し行動してみることが大切です。行動すれば周りの人や環境から様々なリアクションが返ってきて、その一つひとつから本物の「なぜ」を徐々に掘り起こすことができるはずです。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。