「ワインの染み」がつかない白シャツなんてあるのか!?

まだライターとして駆け出しのころ、毎日決まって白シャツを着る編集者に鍛えられた。怒鳴られるたびに視線が下へ下へと降りていくぼくは、いつからかその編集者の日々のシャツが微妙に違っていることに気づくようになっていた。

同じ白に思えるけど、よく見れば一枚ごとにテキスタイルも、パターンも、カラー(ここでは襟のほう)も、ひとつとして同じものがなくて、それは当然ながら本人は意識的に揃えている訳で。「あれ、また今日も白シャツだ」とは決して他人に言わせない強い個性を感じ、ファッションアイコンとしてのあこがれも抱いたっけ。

それでその編集者にならって、今でも白シャツを選ぶときだけは、カブりを避けるようにしている。そもそも、まったく同じタイプを複数枚抑えておくっていうのもナシだ。

さて、厄介なことに世の中には白シャツの“天敵”がごまんとある。赤ワイン、コーヒー、カレー、トマトソース…と挙げればキリがないほど、シミや汚れとはつねに戦っていかなければいけないんだけれど、うまくその天敵たちとつき合っていけそうな白シャツがあった。

それが、ニュージェネレーションシャツ「LABFRESH」だ。

形状記憶も抗菌消臭もOK
さらに、ワイン染みが付かない!

アムステルダムのスタートアップ企業がつくるこのシャツは、一枚119ユーロ(約1万4,500円)と手ごろな価格。仕立てがとくだん良質な訳じゃないが、世に言うところの形状記憶シャツであり、抗菌消臭シャツでもある(こう考えれば高くない)。洗濯機でジャブジャブ洗えもするらしく、マルチなニーズを叶えてくれるようだが、そこは上の説明書きを見てもらえればじゅうぶん。

ここで特筆したいのは1点のみ。このLABFRESHこそが、例の天敵に打ち勝つ唯一の白シャツだっていうこと。

こぼした赤ワインが
胸元にポタリ。

水枯れの大地に雨水が浸透していくように、えんじ色のシミがシャツの繊維の奥へと走る。あの刹那、机の角に足の指をぶつけたときのような、誰にも当たれないいらだちを覚えるのは、ぼくだけではないはずだ。で、こうなるともう事はスピード勝負で、濡らしたタオルでひたすらトントンしたり、付け焼き刃の応急処置でどうにかする他ないわけで(ちなみに、その編集者はこういうところにも細かい)。

ところが、LABFRESHは違う。

まあ、こんなシチュエーションはそうそうありえないけれど、大げさにいえば、つまりはこういうこと。こぼしたはずのワインが、するするとシャツの上を滑り落ちていく。にわかに信じがたい?でも、これが真実。疑う人は動画で実際にチェックしてみてほしい。

水も油も滑り落ちる
「新世代」の生地

何をもって、彼らが“ニュージェネレーション”を公言しているかの答えがこれだ。LABFRESHは、コットンに2%のエラスタン(ポリウレタン系の化学繊維)を含んだ繊維でできている。この独自技術が、水や油、細菌すらもはじいてしまう生地の秘密だった。さらに言うと通気性の良さもウリらしく、汗ジミなんかも気にならないという。ここまでくると、さすがにスゴい!と認めるしかない。

当然ながら新世代シャツの注目度は激高で、クラウドファウンディングでも潤沢な出資金をゲット。今後、カラーやカフスのバリエーションもどんどん増やす予定だという。もうあと数日ではあるが、Kickstarter経由だと2,000円ほど安く予約購入も可能。

ところで、ぼくに“白シャツ道”を教えてくれたあの編集者とは、もうほとんど顔を合わせることはない。このシャツを紹介したところで「そういうことじゃないんだよなぁ」、なんて原稿を突っ返すときの口癖で言うに違いない。でも、なんだか久々にそういうのも悪くないかも。ワードローブに白シャツは何枚あってもいい、とようやくぼくも思えるようになったし。

Licensed material used with permission by Lotte Vink & Kasper Brandi Petersen
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。