みんながなんとなく感じているライフスタイルの変化について、佐久間裕美子さんに聞いてみました

2014年に出版された書籍『ヒップな生活革命』は、リーマンショック以降のアメリカで芽生えた新しい価値観やライフスタイルについての本。とても話題になったし、読んだという人も多いでしょう。

本の中で取りあげられた価値観やライフスタイルを説明する際、著者である佐久間裕美子さん自身の言葉を借りるとわかりやすいかもしれません。

「ニューヨークの私の家の向かいに、あるカップルが住んでいます。旦那さんはビールが好きで、奥さんはチーズが好き。彼らは大企業に勤めていたけれど、リストラを機に、ビールとチーズの小さなお店を出したんですね。スーパーよりもちょっと高いけれど、とてもこだわりがあって美味しい。私はできるだけそこで買い物をするようにしていて…」

大量消費や高級志向とはまた違った消費のかたち。なんだかわかる気がします。

そして2016年現在。

日本でもアメリカと同様にサードウェーブコーヒーやDIY、小商いといったキーワードが浸透してきました。佐久間さん本人に、日本における『ヒップな生活革命』について話を聞いてみました。

佐久間 裕美子

1973年生まれ。ライター。1996年に慶應義塾大学を卒業、1998年イェール大学大学院修士課程。新聞社のニューヨーク支局、出版社、通信社勤務を経て、2003年に独立。2012年にはiPadメディア『PERISCOPE』立ち上げ。2014年に『ヒップな生活革命』を出版。これまでに、アル・ゴア元副大統領からウディ・アレンまで、数多くの著名人にインタビュー。
現在、ニューヨークのブルックリン在住。

Q:日本でもヒップな生活革命って起こっていると思いますか? まだまだ大量消費一辺倒な部分もあると思うんですけど…。

『ヒップな生活革命』を出版した直後に、同じようなことをたくさん言われました。

「日本は消費文化主義だから…」とか「この本に書かれている事象は美しいけれど、あくまでアメリカの一部の話ですよね」とか。

でも、結論から言えば、そんなこと全然ありません。2014年の時点でも、ヒップな生活革命は日本でも起きつつありました。出版を機にプロモーションなどで日本全国を回った時、それを直に感じることができたんです。

例えば、熊本市でトークショーに呼んで頂いたのですが、そこにはインディペンデントな本屋さん、個人経営で美味しいコーヒーショップ、アナログレコードの専門店など、まさにこの本に登場するような人たちがたくさんいました。新潟や鳥取、長野にもIターンやUターンをして、いろんな試みをやっている友達がいます。

そして、出版から約2年が経った現在。自分の手で何かを作ったり、生み出したりする動き、コミュニティを盛り上げて、自分たちのカルチャーを作ろうという動きは、どんどん加速していると思います。

それは多くの人が生活の中で感じているんじゃないでしょうか? 

そもそも、アメリカと日本には社会的背景が似ている部分があると思っています。

私がヒップな生活革命と呼んだ、さまざまな動きの背景には、リーマンショックによる空前の不景気があります。そして、日本では東日本大震災がありました。金融危機と自然災害はまったく別の事象ですが、どちらも多くの人の考え方を変えてしまうほど大きい出来事だったという意味では似ています。

それぞれの要因から、必然的に自分たちの生活を見返す人が増えたんだと私は思っています。

Q:個人の価値観が変化していく中で、企業はどうしていくべきだと思いますか?

時々言われるんですよ「郊外の大型ショッピングモールとか嫌いでしょう?」とか(笑)。

でも、まったくそんなことはなくって、存在意義が違うということ。例えば個人経営のお店にこだわりはあっても、商品のラインナップには限界があるし、お店を開けておける時間も限られています。利便性っていう意味で、とても大事な存在ですよね。安定してモノや味を届けられるって素晴らしいことだと思います。

こんなこともありました。出版後、某大企業の代表の方が私に会いにきてくれたんです。「ものすごく消費者の価値観が変化しているなかで、我々はなにをすべきか、ヒントが欲しい」って。ニューヨークまで、わざわざですよ! これってすごいことだと思うんです。

私は、むしろ大きな企業が消費者の声に耳を傾けることで変わってくれたら、社会や環境に与えるインパクトが大きいとポジティブに考えています。

例えば、私は個人的に過剰包装に問題を感じていて、スーパーなんかでも「包装は要りません」と言うようにしています。それを見た友人が真似するようになって、それはいいことだけど、それで軽減できる環境への負荷って実際には知れたものです。でも、大企業がそういうニーズを汲み取って「包装をちょっと減らそう」と思ってくれたら、無駄なプラスティックの消費量が一気に減りますよね? 

企業は基本的に消費者のニーズに応えるかたちになるので、むしろ私たち消費者がそういったことを求めていくことが大事だと思いますね。

Q:最近、日本では「モノ消費よりコト消費」なんて言われていますが、これもひとつの変化の表れなんでしょうか?

そうだと思います。私も東京で生まれて育った人間です。若い頃は、同世代と同じように、ブランド品にお金を使うようなこともやってきたし、物欲だってないわけじゃありません。

でも最近は、時間を費やすことが最大の贅沢だと感じています。

例えば2年前にした鹿児島への旅行。目的は観光や宿じゃなくて、知的障がい者施設『しょうぶ学園』のバンド“Otto & Orabu”のライブ演奏を見ることでした。私はニューヨークに住んでいるので、鹿児島は結構遠い(笑)。それでも、ひとつのバンドの演奏を聞くためだけに鹿児島へ行くーーその体験に情熱とか気持ちを使ったと思っているんです。だからこそ私は、あの旅がめちゃくちゃ贅沢だと思っているし、決して忘れません。

個人的な体験以外にも“コト消費”を感じる部分はあります。

少し前なら、どこどこのレストランで食事するっていうのが体験だったと思うんですが、生産者の人の話を聞いて、その友人がワインをセレクトして…といった食のイベントも増えてますよね? これもコト消費だと思います。

Q:消費に対する新しい価値観は、これからも広がっていくと思いますか? 

モノでも、コトでも、ちゃんと誰がどういう思いで作っていて…みたいな背景をちゃんと知った上で、使うことで物質的な部分だけでなく、豊かになれると思うんです。食がわかりやすい例です。自分の口に入れるものが、どこからきて、どんなふうに作られたものなのかを知りたい人は増えています。

お金やカード使うことは、なにもモノを消費するツールとしてだけでなく、それを考えるきっかけと考えたい。そういう価値観は、これからも確実に広がっていくと期待しています。

 

アメリカン・エキスプレスは充実した毎日を心から楽しむ人をサポート。

佐久間さんは『ヒップな生活革命』のなかで、2010年にアメリカン・エキスプレスが始めた「スモール・ビジネス・サタデー」を取り上げています。大企業ではなく、プロジェクトに参加している中小企業で買い物をすると、ユーザーはキャッシュバックがうけられるという企画は、当時とても話題となりました。

現在、アメリカン・エキスプレスは、お買い物やお食事などの日常から、旅などの非日常まで、生活のいろいろなシーンをサポートしています。

例えば、それはコンビニやカフェでの買い物といった日常でためたポイントをマイルやイベントに換えることだったり、人気のコンサートやイベントなどのチケットを先行販売で買えたり。なによりも、安心して楽しむことができるように、セキュリティ面でもしっかりサポート。

ポイントをためるーーそんな小さなことから、素敵な体験がはじまります。