記憶力・集中力がアップする「賢いランニング」

理学療法士・重森健太さんの著書『走れば脳は強くなる』では、走ることで脳機能のパフォーマンスがアップし、たくさんのメリットが生まれると紹介されています。

でも「ただ走ればいい」というわけではありません。記憶力や集中力など、向上させたい内容によってもトレーニング方法が異なります。自分はどの部分を集中的にアップさせたいのか? 注目しながら読んでみてください。

ランニングで「記憶力」を
高める方法

ロンドンに住む一般市民とタクシー運転手の海馬を比べてみると、タクシー運転手のほうが脳の神経細胞の数が多かった、という報告があります。というのも、ロンドンの街は24,000以上の道路が網の目のように張り巡らされており、全部覚えるのは非常に困難。その複雑な街を走りながら新たなルートを開拓していくという行為が、彼らの海馬を強化しているようです。

毎日新しいことに挑戦する環境は記憶や見当識のトレーニングになり、海馬を鍛えてくれます。いつも走るランニングコースを思い返してみると、毎日同じ道順を走っていませんか?そんなアナタには、次のような手順でルートマップの作成をオススメします。

1.目的地だけを決めて走る
2.走ったコースを思い出してノートに記録する
3.ビルやお店の情報など細部まで思い出して書けるように、何度か繰り返す
4.同じ要領で別ルートも開拓する

走って、思い出して、記録する。この繰り返しが、「記憶力」を高めるトレーニングになります。ぜひ挑戦してみてくださいね。

ながら動作で
「集中力」が鍛えられる

集中力は、主に前頭葉を鍛えることで高められます。前頭葉を鍛えるためには、継続してランニングをするのも有効ですが、より効果的なものとして「デュアルタスク・トレーニング」という方法があります。

「デュアルタスク・トレーニング」とは、2つのことを同時に行うトレーニングのことで、外を歩きながら会話をすることもその1つです。こうした〝ながら動作〟を行うことで、前頭葉のワーキングメモリが活性化されると言われています。

走りながら前頭葉を鍛えるなら「ひとりじゃんけんラン」がオススメです。毎回必ず勝負がつくようにグー・チョキ・パーを出すので、高い集中力が必要となります。前頭葉を鍛えるためには、この〝複雑化〟が重要なのです。

クールダウンで
「クリアな思考」を呼び覚ます

ランニング後、とくに速いペースで走ったときは、クールダウンを欠かしてはいけません。激しい運動の直後に動きを止めると、筋肉に留まる大量の血液が心臓に戻らず、脳が一時的に貧血状態になり、めまいや吐き気などを招くからです。

また、激しい運動後は思考がクリアになるというメリットもあるので、良いアイデアを生みだすためにも、クールダウンが重要なのです。

クールダウンは整理運動とも呼ばれ、筋肉内に留まったままの血液を循環させ、脳などに必要な血液を送りこんでくれる働きが。走った直後はゆっくりとペースダウンさせていき、最後に軽いストレッチを行って体を休めるのがベストな方法です。息を整えてストレッチを行うなど、しっかりとクールダウンをすると、運動を終えて間もなく脳に血が戻り、鋭い思考が生まれやすくなります。

3分のランニングで
「ひらめき」を生む

デスクに座ったまま唸っていても、いいアイデアは生まれません。そのまま煮詰まってしまうくらいなら、思い切って走ってみましょう。時間はたったの3~5分でOK。「その場駆け足」「階段ダッシュ」といった、ごく簡単なものでかまいません。

走る前と後では、後のほうが「注意・思考・意欲」などの能力が13%上昇すると報告されています。息が上がるくらいの走りを心がけ、走り終えたら歩いて呼吸を整え、椅子に座って軽く目を閉じましょう。それまで悩んでいたことが吹き飛び、素晴らしいアイデアが出てくるかもしれません。

時間があれば、外に出て軽く散歩をしてみるのもオススメ。スタンフォード大学の研究によれば、人は座っているときよりも動いているときのほうが、平均して約60%も独創力がアップすると言われています。

会社の会議や打ち合わせも、ときには軽く走ったり、散歩をしながら行うと良いかもしれません。発想力という面で「脳力」がアップしているので、新しいアイデアが期待できそうです。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。