野生の馬を見つめる。写真家・シャルロット・デュマ展。

動物と人との関わり合いをテーマに、長く写真を撮りつづけてきたシャルロット・デュマ。彼女の写真と向き合うとき、そこには、ただ「言葉なく見つめる」時間だけが流れる。優しい風を受けて、揺れるたてがみ。遠く、波の動きを見つめる瞳。私たちも、まるでその場所にいるかのように、思わず息をひそめてしまう。そして、作為のないものの美しさには敵わないものだと、ため息をついてしまう。

野生の馬に近づくには
どうすれば良いのだろう?

Imabari, Stay 2016©Charlotte Dumas

オランダ人の写真家、シャルロット・デュマ。これまで、救助犬や、動物園で飼育されている動物など、さまざまなシチュエーションで動物を被写体としてきた。彼女の方法論は、集中すること、好奇心を持つこと、そして、心を開くこと。被写体が、いつも通りの自然な状態でいられるように、自ら寄り添っていくやり方だ。

Yonaguni, Near the coastline 2015©Charlotte Dumas

怖がらせることなく、野生の馬に近づくには、一体どんなふうな手段をとれば良いのだろう。そこでは「さあ、撮るぞ」と構える必要はなく、こちらも馬と同じように、自然な状態になることが必要なのではないか。一歩ひいた客観的な視点というか。互いに恐れる必要はないのだと、両手を広げている感じ。そうして、ようやっと同じ目線で語らえるようになる。

Nagano, Sora 2015©Charlotte Dumas

その国、固有の馬である在来馬(ざいらいば)が、社会のなかでどのような役割を担っているのか。そして、私たちは、馬にどのような価値を見いだしているのか。『Stay』は、2012年にスタートした、日本全国に8品種現存する在来馬を撮影するプロジェクトの集大成である。北海道・長野・宮崎・与那国島など、8カ所を巡って撮られた40点余りの大判プリントとポラロイドたち。現在、写真家の上田義彦がキュレーターを務めるギャラリー916で展示中である。

Onuma, Marshmellow 2015©Charlotte Dumas

あっという間に流れる時間のなかに身を置いていると、目の前に横たわる出来事ばかりに意識が向いてしまい、自分のことがおろそかになりがちである。そのやさしい眼差しに触れると、いまの自分と向き合うことの大切さを思い出させてくれる。そして、日常のなかに埋もれてしまいがちな大切なことを思い出し、うっかり涙がでてきそうになる。お休みの日に、おひとりで、もしくは、大切な人と一緒に、ゆたかな時間を過ごしてみてはいかがだろうか。

Top Photo by Yonaguni, Head shot 2015© Charlotte Dumas
Licensed material used with permission by gallery916
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。